不動産投資家が不動産所得を申告する場合には確定申告を行うことが一般的ですが、青色申告に切り替えることで最高65万円までの控除を受けることができます。
これによって法人経営を行う不動産投資家はもちろんのこと、給与年収が少ない不動産投資家個人でも節税につなげることが可能です。
ここでは、青色申告の特徴やメリットなどに触れ、不動産投資家が考えるべき節税について解説してまいります。
青色申告とその特徴
青色申告とは、税務署に申告する所得の計算や申告様式の一つです。
青色申告を行う場合、売上収入や経費を計上し、1年間の収益を報告する書類を作成します。
この書類に基づき所得税や法人税の計算がなされます。
青色申告を選択することで、税務上の特典が受けられます。
青色申告制度を利用するには、毎日の経理帳簿への記帳が重要な要素となります。
この記帳内容をもとに、財務諸表を作成し税務報告書として提出します。
青色申告を行うことで、不動産事業(賃貸経営)の経営体質を知ることができます。
決算で浮かび上がった数字をもとに、更なる投資を検討することも可能となります。
家賃収入などを忘れずに計上することと領収書と支出を連動させることが求められるため、若干の煩雑さがありますが、不動産事業の損益を左右する大事な項目となるので、細やかに記帳していくことがポイントです。
青色申告書は簿記や経理の知識があれば投資家個人でも作成することが可能ですが、本業を持った方が経理処理まで行うことに、負担を感じることもあるでしょう。
その場合は、不動産業を行う方向けの会計ソフトを利用したり、税理士・会計士などの経理の専門家に会計処理を委託したりするなどさまざまな方法が選べます。
税理士や会計士を不動産投資のパートナーとすることで、兼業投資家のための節税方法などを学ぶことも可能です。
青色申告をすることでどう節税につながるのか
ここでは、青色申告によってどのような節税効果が生まれるかをまとめました。
では、一つずつみていきましょう。
①最大65万円の青色申告控除が受けられる
簿記の手法には単式簿記(現金収支ありきで記載される簿記手法)と複式簿記(現預金の他、経費や財産、借受金などのあらゆる費目を計上する簿記手法)の2つの方法があります。
その中で複式簿記を選択することで、損益計算書や貸借対照表といった決算に欠かせない財務諸表の作成が可能になります。
控除額は、単式簿記による青色申告控除は10万円、複式簿記による青色申告控除は65万円になります。
ただし、65万円の控除を受けるには財務諸表や内訳書などの提出が義務となりますので、どちらの形式を選ぶかは賃貸経営のスタイルや不動産投資家の意思にもよるでしょう。
②赤字繰越が可能
青色申告の場合、赤字を出した翌年から最高3年間の繰り越し(純損失の繰越控除)が可能です。
赤字を出した翌年に黒字が生まれた場合、昨年度の赤字決算分と相殺することで節税することができます。
相殺をしても赤字が残った分は同様に4事業年度後(3年後)まで繰り越すことができます。
③家族に対する給与が経費にできる
不動産投資によって賃貸経営を行う場合、家族に大家業務を任せることもあるでしょう。
6ヶ月以上の専業で従事していることの他、同一生計であること、その年の12月31日時点で年齢が15歳以上であることといった条件がありますが、家族を青色事業専従者として届け出ることで、家族へ渡す給与を経費として計上することができます。経費計上できる幅が広がるため、節税へつなげることが可能となります。
青色申告以外で、不動産投資による節税として有効な手段とは?
個人事業主として青色申告を行った場合、給与所得と合算された額が個人所得となり、給与所得の課税額に応じて不動産収入も課税されます。
そのため給与所得が大きい場合には、所得税が多く取られてしまいます。
こういったことを防ぐために、青色申告以外にも、節税対策を講じられたら実践したいと考える方もいらっしゃるでしょう。
どのような対策があるでしょうか。
その一つとして、相続・遺贈のトラブルを下げるために資産管理法人を立ち上げて土地や建物などの投資物件を会社名義に置き換えることが挙げられます。
法人税の課税率は個人所得者に対する課税率よりも小さいため、不動産収入を個人所得に組み入れるよりも大きな節税効果が生まれます。
法人立ち上げ費用や、個人名義から法人へ不動産登記の変更を行う場合には大きな費用が必要になりますが、これらも経費に組み入れることができるので、最終的に収益を抑えることができます。
青色申告を行い的確な経理処理ができるようになることで、資金の流れが明確になり、決算書類で得られた数字を踏まえてより健全な賃貸経営を行えるようになります。
確定申告時期の書類作成は煩雑なものですが、不動産会社の担当者など不動産の専門家に話を聞くことや、経理の専門家である税理士などに経理を任せながら進めていくと良いでしょう。