医師や士業、高所得者サラリーマンの人は、社会的信用力がある特性を活かして不動産投資を「自己資金0~300万円以下」で始めることも可能です。少ない自己資金で不動産投資をスタートするには、金融機関からなるべく多くの融資額を引き出す必要があります。本稿では、そのためのポイントとなる「3つの信用力」について解説します。
不動産投資は「自己資金0~300万円以下」でも始められる
不動産投資において「自己資金」といえば「ローンの頭金と初期費用をまかなう現金」を指すのが一般的です。不動産投資ビギナー向けの本やWeb記事には「自己資金の目安は物件価格の2~3割程度」と解説されているケースが目立ちます。仮に物件価格のおける2割の自己資金の場合は、以下の現金が必要です。
・ 1億円の新築アパートなら……自己資金2,000万円
・ 4,000万円の中古アパートなら……自己資金800万円
・ 3,000万円の区分マンションなら……自己資金600万円
物件価格の3割の自己資金であれば、以下の現金を用意するのが目安となります。
・ 1億円の新築アパートなら……自己資金3,000万円
・ 4,000万円の中古アパートなら……自己資金1,200万円
・ 3,000万円の区分マンションなら……自己資金900万円
このような負担は、高所得だからといっても軽いものではありません。なかには、必要な自己資金を計算してみたうえで「こんなにたくさんの自己資金がかかるのか」と不動産投資をあきらめてしまう人もいるかもしれません。たしかに「自己資本の目安は2~3割」は事実です。ただこれはあくまでも目安のため、実際には不動産投資を「自己資金0~300万円以下」で始めることもできます。
本稿では、具体的にどのようなポイントを押さえれば「自己資金0~300万円以下」で不動産投資ができるかについて解説します。
金融機関から融資額を引き出すための3つの信用力
不動産投資を「自己資金(頭金)0~300万円以下」で始めるには、金融機関のローン審査でなるべく多くの融資額を引き出す必要があります。これを実現するには以下の3つの信用力をそろえるのがポイントです。
1. 個人(ローン申込者)の信用力
2. 賃貸物件の信用力
3. 不動産会社の信用力
このうちどれか1つが欠けても融資額が少なくなったり(多くの自己資金が必要になる)、金利や返済期間などの条件が悪くなったりする可能性が出てきます。
ポイント1.個人(ローン申込者)の信用力
ローン申込者の信用力の審査では「継続的に安定収入があり貸し倒れリスクが少ないか」が注目されます。
金融機関の9割以上が給与収入を返済原資として考慮
サラリーマンや士業などで安定収入が見込める場合は、金融機関のローン審査で有利となり特に年収1,000万円以上などの高所得者になると圧倒的に有利です。金融機関が不動産投資ローンの審査で申込者の給与収入を重視していることを示す調査に金融庁の「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査」というものあります。
同調査によると金融機関が不動産投資ローンも審査をする際、銀行の95%、信用金庫・信用組合の91%が「申込者の給与収入などを返済原資として考慮している」と回答しました。つまり金融機関は不動産投資ローンの審査のときに当該不動産から得られる家賃収入だけでなく申込者の給与収入も返済の元手として捉えていることが分かります。
給与収入が多ければ返済の元手も増えるため、高所得者が有利になるのは当然といえるでしょう。
金融機関がローン審査で着目する年収以外の要素
不動産投資ローンでは、給与収入だけでなく以下のように属性の評価が高ければ返済の信用力が増すため、審査が有利になります。
* 社会的信用力のある職種(公務員または国家資格の有資格者)
* 大企業または中堅企業クラスの勤務先
* 雇用形態は正社員
* 持病がなく年齢が若い
* 勤続年数が長い
* 所有している金融資産が多い
* 他の借入金の残債が少ない(またはない)など
ポイント2.賃貸物件の信用力
個人信用力のある士業・高所得サラリーマンが不動産投資を自己資金0~300万円以下で始めるには、減価償却期間が十分に残っている一等地または都心のマンションが有利です。その理由を確認してみましょう。
資産価値(担保力)と収益力(稼ぐ力)は最重要
不動産投資ローンの審査では、購入しようとしている賃貸物件の資産価値(担保力)と収益力(稼ぐ力)を重視されます。金融機関からすると資産価値の高い賃貸物件は、担保として差し押さえたときに資金を回収しやすく処分がスムーズになる点がメリットです。また収益力の高い物件は、貸し倒れリスクが低いこともメリットとなります。
そのため資産価値と収益力の高い物件は、不動産投資ローンで有利になりやすいのです。なお以下のような収益物件の場合、資産価値と収益力が高いと判断されるケースが多くなります。
* 一等地や都心などの立地にある
* 家賃収入が多い(一定の利回りが確保できる)
* 物件の種類が減価償却期間の長いマンション
* 築年数が少なめで減価償却期間が残っている など
これらの条件を満たしているのは「一等地または都心のマンション」です。
購入価格の水準の妥当性もチェックされる
金融機関のローン審査では「賃貸物件の価格水準が妥当か」も注目される傾向です。前出の金融庁の調査によると「価格水準が立地条件・賃料相場から妥当かについて必ず検証を行っている」と回答したのは、銀行の86%、信金・信組の80%と大半を占めます。つまり購入価格が相場よりも明らかに高ければローン審査に不利になる可能性があるということです。
その意味では、賃貸物件を相場よりも割高な価格で売りつける悪徳業者よりも物件価格を適正に設定している不動産会社をパートナーに選んだほうが有利といえます。
ポイント3.不動産会社の信用力
不動産投資のローン審査を有利に運ぶ(=自己資金0~300万円以下で済む)という観点では「申込者の信用力」「賃貸物件の信用力」に着目されることが多い傾向です。しかし「不動産会社の信用力」もポイントとなるという見方もあります。具体的には、不動産会社の提携している金融機関や取引実績の多い金融機関に融資申し込みをすると不動産投資ローンの審査で有利になるという考え方です。
なぜこれらの金融機関に融資申し込みをすると審査で有利になるのでしょうか。その理由としては「不動産会社と金融機関の信頼関係ができているため」「不動産会社が審査で有利になるノウハウを持っているため」といったことが考えられます。
自己資金を抑えたいなら、不動産会社に意思を早めに伝えるのが得策
ここでは、高所得サラリーマンや士業の人が不動産投資を「自己資金0~300万円以下」で始めるポイントについて解説してきました。その内容を振り返ってみましょう。金融機関からなるべく多くの融資額を引き出して自己資金を抑えるには以下の3つの信用力がポイントです。
1. 個人(ローン申込者)の信用力
2. 賃貸物件の信用力
3. 不動産会社の信用力
1つ目のポイント「個人の信用力」で最も大切なのは給与収入です。給与収入が多いと審査が有利になる理由は、金融機関が給料収入も返済原資とみなしているためでした。また不動産投資ローンの審査では、以下のように属性の評価が高い人ほど有利になりやすい傾向です。
* 社会的信用力のある職種
* 大企業または中堅企業クラスの勤務先
* 雇用形態は正社員 など
2つ目のポイント「賃貸物件の信用力」では、資産価値と収益力が大切になり物件価格が妥当かをチェックする金融機関も多い傾向です。
3つ目のポイント「不動産会社の信用力」では、提携している金融機関や取引実績の多い金融機関のある不動産会社をパートナーに選ぶと有利と考えられます。不動産投資を「自己資金0~300万円以下」で始めたい場合は、不動産会社に早い段階で伝えたほうが賢明です。
しっかりとこちらの意思を伝えておくことで希望に沿った条件の立地の賃貸物件や金融機関を提案してくれる可能性が高まります。
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