株式投資には、値上がり益を狙うキャピタルゲイン投資と配当金や株式分割などで長期的に資産の増加を目指すインカムゲイン投資があります。安定的に資産の増加をもたらしてくれる資産株とは、どのような銘柄を指すのでしょうか。医師が資産株の長期投資で保有資産を増やす方法を考えます。
資産株とは何か
資産株とは、業績が安定して成長力があり長期で保有するのに適した株式のことです。業績の伸長とともに配当を増やす企業が多く投機的な株価の動きになりにくいメリットがあります。株価チャートも右肩上がりを形成する銘柄が多くリーマンショックのような暴落場面で一時的に値下がりすることはあっても長い目で見れば株価は回復する傾向のため安心して保有できる銘柄群といえるでしょう。
資産株と呼べる銘柄は「株主への利益還元に積極的」という特長があります。増配だけでなく株価が高くなり過ぎた場合は、株式分割を行って投資しやすい株価水準に修正する例などさまざまです。例えば1対2の株式分割を行うと保有株は一気に2倍に増えます。しかし、株数が増えることで1株あたりの価値が希薄化するマイナス面もあります。そのため権利落ち後に株価は半値近くになりますが企業に成長力があれば株価は回復し分割前の水準に戻っていく例もあります。
投資家が資産額を大きく増やす典型的なパターンといえるでしょう。
ウォーレン・バフェットは資産株の長期保有で財を成した
株式への長期投資で大成功し世界を代表する投資家になったのがウォーレン・バフェットです。投資会社バークシャー・ハサウェイの会長兼CEOであるウォーレン・バフェットの投資手法は「バリュー投資」といわれています。バリュー投資とは、企業価値を分析して理論株価を割り出し市場の株価が理論株価より安い場合に投資する方法です。
またバリュー投資では、理論株価に戻るまで保有し続けます。バフェットが世界的な投資家に飛躍するきっかけを作ったのが飲料メーカー大手のコカ・コーラ株への投資でした。1988年当時コカ・コーラ株は、PER12~16倍(年間高低、以下同)、株価は4~5米ドルと割安の水準でしたが同社の成長率は18%程度で推移していたのです。
コカ・コーラの成長性に着目したバフェットは1988年、1989年、1994年の3回に分けてコカ・コーラ株を買い進めて行きました。株価は業、績の伸長とともに上昇を続け1997年には51~72米ドルと10倍以上まで上昇。2021年4月の時点でコカ・コーラは、59年連続増配継続中で現在でも配当面でバークシャー・ハサウェイに大きな利益をもたらしています。
成長率は、かつての勢いこそなくなったものの今後も7%程度の安定成長を目指す予想で連続増配も記録を伸ばしそうです。コカ・コーラは、まさに資産株の代表的銘柄と評価してよいでしょう。
超成長株を長期保有していたら
現在世界のトップレベルに成長した企業の株を上場時に購入しそのまま保有していたらどうなっていたでしょうか。「BUSINESS INSIDER」が調査したところによると世界を代表する超成長企業のAppleを1980年12月12日のIPO(新規株式公開)後に1,000米ドル投資していた場合、2018年7月3日の時点でおよそ800万米ドルになっているという試算が出ています。2021年には1,000万ドルを超えているかもしれません。
Appleの例は極端ですが新規上場株には大きな夢があるのは事実でしょう。数十年後の未来図を描けるような企業に上場時から投資するのも資産株を持つ1つの方法といえそうです。
資産増加効果大きい連続増配株
米国には、コカ・コーラのように数十年以上にわたって配当金を増やし続けている企業が多数あります。米国市場では、25年以上連続増配している銘柄を「配当貴族」、50年以上連続増配している銘柄を「配当王」と呼んでいます。連続増配株は、長期的に資産を増やすには最適な銘柄です。毎年配当金を増やすには、業績も連動して向上していかなければ続けていくことはできません。
連続増配を続けている企業は、先行きにも自信を持っていることの表れと解釈することができます。三菱HCキャピタル(旧三菱UFJリース)<8593>を例にとって長期投資によるリターンの大きさを確認してみましょう。同社は、2021年3月期まで22年連続増配です。リース事業業績は、安定しており投資リスクが小さいことから当時投資を判断することはそれほど難しくなかったのかもしれません。
もし三菱HCキャピタルを2012年3月1日終値の590円で1万株購入し2021年3月まで保有していたとすると以下のようなリターンを得られたことになります。
▽三菱HCキャピタル配当金と配当利回りの推移(1万株保有の例)
決算期 | 1株配当金 | 配当利回り | 累積配当金額 |
---|---|---|---|
2012年3月 | 6円 | 約1.02% | 6万円 |
2013年3月 | 6.50円 | 約1.10% | 12万5,000円 |
2014年3月 | 8円 | 約1.36% | 20万5,000円 |
2015年3月 | 9.5円 | 約1.61% | 30万円 |
2016年3月 | 12.3円 | 約2.08% | 42万3,000円 |
2017年3月 | 13円 | 約2.20% | 55万3,000円 |
2018年3月 | 18円 | 約3.05% | 73万3,000円 |
2019年3月 | 23.5円 | 約3.98% | 96万8,000円 |
2020年3月 | 25円 | 約4.24% | 121万8,000円 |
2021年3月 | 25.5円 | 約4.32% | 147万3,000円 |
※配当金額は税引き前。
配当金は、10年間で約4倍に増えています。累積配当金も147万3,000円となり投資額に対する回収率は、約25%です。同社の2021年3月期における配当性向は41.1%のため、連続増配を継続するには十分な余力があります。三菱HCキャピタルの2021年5月21日終値の株価は647円と買値を57円上回っており、保有時価総額も57万円増加しています。
上表は、再投資しない単利の例です。累積配当金が100株購入費用に達し次第追加購入した場合、2021年3月期には1万200株に株数が増えているため、複利効果でさらに配当利回りはアップします。
国内外の資産株でポートフォリオを作る
では、資産株でポートフォリオを作るとしたらどのようなポイントで銘柄を選択したらよいでしょうか。主に次のようなポイントを考慮する必要があります。
成長株として期待できる
業績が悪化し衰退していくような企業であれば株価が長期的に下落するリスクがあります。特に成長性が高い銘柄なら株式分割も期待できるでしょう。先に紹介したAppleやヤフーのようにたび重なる株式分割を行った銘柄は、持ち株数の増大が大きな資産増加効果を生んでいます。
安定した配当を行っている
成長性があっても無配株の場合は売却するまで何もリターンがありません。配当があれば毎年着実にリターンを積み上げることができ元本を少しずつ回収できます。連続増配株であれば毎年利回りも上がっていくのでなお理想です。
リスク分散のため各国の資産株に投資する
日本株だけでなく米国株をはじめとする外国株も組み入れることで地域を分散できます。
超成長株を上場時から保有し続けることは、よほど先見の明がないと難しいでしょう。しかし連続増配株のように今後も安定した業績が見込め配当金が増えると予想できる銘柄に今から投資することは可能です。目先の株価に一喜一憂せず長期的な視点で持ち株の成長を待つ株式投資の王道に立ち返るのもよいのではないでしょうか。
※本記事は2021年5月21日現在の情報を基に構成しています。記事中で紹介している銘柄は一例であり、当該銘柄への投資を推奨するものではありません。