20代から30代といった若い世代の医師の方々にとって、資産形成はまだまだ先の話に映るかもしれません。しかし、資産形成は時間をかければかけるほど効果が大きく、そしてリスクを分散することができるため、実は資産形成で最も結果を出しやすいのは若い世代の人たちです。
言うまでもありませんが、そのためには資金が必要です。まだまだ収入に余裕がない方も多い世代ということで資産形成を始めるだけの十分な資金がないと感じていても、10万円なら用意できるという方は多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では10万円以下で始められる少額からの資産形成に的を絞り、数ある投資方法の中から有効性の高いものを5つ厳選しました。資産形成の必要性を理解しているものの、その資金がないとお感じの方も今すぐ取り組めるものばかりなので、ぜひ参考にしてください。
低額からでも資産形成は十分可能
結論から言うと、少額からであっても資産形成は十分可能です。資産形成や投資というとお金持ちのためのものと先入観を持っている人は依然として多くいますが、今ではITの発達や投資商品の進化によって少額からでも始めやすくなっています。
日本証券業協会が全国の個人投資家(20 歳以上)5,000 人を対象に2020年に実施した「個人投資家の証券投資に関する意識調査」では、投資をしている人の中で金融資産保有額が10万円未満と回答している人が3.3%います。前回の調査では2.6%となっているので、その比率は増えています。
全体(%) | 前回(令和元年)(%) | |
10万円未満 | 3.3 | 2.6 |
10万円~50万円未満 | 4.0 | 4.1 |
50万円~100万円未満 | 5.4 | 5.7 |
100万円~300万円未満 | 13.2 | 13.3 |
300万円~500万円未満 | 12.9 | 12.2 |
500万円~1,000万円未満 | 17.4 | 17.8 |
1,000万円~3,000万円未満 | 26.0 | 26.2 |
3,000万円~5,000万円未満 | 9.4 | 9.8 |
5,000万円以上 | 8.4 | 8.3 |
出典:個人投資家の証券投資に関する意識調査(日本証券業協会)
このことから見えてくるのは、少額であっても何らかの投資を始めようと考え、それを実践した人が多いことではないでしょうか。
もう1つ、10万円以下の少額投資の現実味を窺い知ることができる興味深いデータを紹介しましょう。こちらは2021年8月現在、10万円以下で購入できる上場株式の銘柄を「SBIおすすめスクリーナー(SBI証券)」でスクリーニングしたところ、検索結果は1,665件でした。ETFやREITといった上場投資信託も含めた数字ですが、10万円以下でもかなり多くの選択肢があることがわかります。
初心者は少額から始めるべき
今ではすでに多くの資産を築いている人も、資産家の生まれであるなど特殊な理由がない限りは資産ゼロからのスタートだったはずです。これから資産形成を始めようとお考えの若い世代の方々も、最初は少額から始めるのがベストです。
資産形成のための投資は、最初からお金持ちの人ではなく、むしろ標準的な所得の人こそ取り組むべきものです。その結果として将来や老後への安心感が生まれ、今の生活を豊かにすることができます。近年ではFIREといって資産形成による早期リタイアを目指す人が多くなっていますが、そのためにも少額からの資産形成はとても重要です。
金融庁の諮問機関が2019年に発表したレポートの中にあって大々的に報道された「老後2,000万円不足問題」についても、その問題への対処法として現役世代からの資産形成を推奨しています。単に「老後に2,000万円が不足する」というだけでなく、資産形成をすることでそのリスクを回避できると論じているところが重要です。
少額(10万円)でも始められる資産形成方法5選
それでは10万円以下の少額であっても今すぐ始められるおすすめの資産形成法を5つ紹介します。
1.株式投資
先ほども述べたように、2021年8月現在、10万円以下で買える株式の銘柄は1,665件です。これらの選択肢から銘柄を選んで投資をすることで、株価の上昇や配当による利益を狙うことができます。
2.ETF・投資信託
投資信託とは運用のプロであるファンドマネージャーが運用方針に沿って投資家から集めた資金を運用し、その運用益を投資家に分配する金融商品です。個別株投資だとその企業の業績や動向の影響を強く受けますが、「株式市場全体」「特定のテーマ株全体」といったように複数の銘柄に分散している投資信託であればリスクの分散効果が得られます。
投資信託の中でも証券取引所に上場している銘柄群を、ETFといいます。日経平均株価と連動するETFやTOPIXと連動するETFといったように、株価指数と連動するETFを購入すると、対象となっている市場全体に投資するのと同じ効果が得られます。
リスク分散効果が高いので、積立投資によって資産形成をしていくのにも適しています。
3.REIT
資産形成のために不動産投資をしたいと考えているものの、まとまった資金がない方におすすめなのが、REITです。REITとは不動産投資信託のことで、投資家から集めたお金を不動産に投資し、そこから得られた利益を投資家に分配します。これなら間接的な不動産投資が実現しますし、複数の不動産で運用しているのでリスクの分散効果もあります。
REITの中で東証に上場している銘柄群のことを、J-REITといいます。ETFのように株式と全く同じ感覚で売買が可能で、2021年8月現在の平均利回りは3%台なので、比較的安定的に運用できる金融商品といえます。
4.FX
FXというとハイリスク商品のイメージをお持ちの方は多いかもしれませんが、適切な資金管理さえすればレバレッジを生かして少額からでも本格的な投資ができるのは魅力的です。
最悪の場合は10万円を失っても勉強代だと割り切れるのであれば、10万円の資金を目一杯使って積極的なトレードをすることで利益と経験を積み上げていくのが常道です。
そうではなく10万円を失ってはいけない場合は、レバレッジを低くして少額投資を実践し、トレードの技術を磨いてから本格的な投資に乗り出すのも有効です。
このように投資家の事情に応じて投資スタイルを自由に変えることはできるのは、FXの魅力といってよいでしょう。
5.個人向け国債
4番目まで紹介してきた金融商品はいずれも、元本保証ではありません。市場の動向によっては収支がマイナスになってしまうことがありますし、最悪の場合は手持ちの資金がゼロになってしまうリスクもあります。しっかりと利回りを得るにはリスクを取る必要があるのは投資の常識ですが、どうしてもリスクを取りたくないという方には、個人向け国債がおすすめです。
国が借金をするために発行する国債を個人向けに販売しているもので、2021年8月現在の最低金利保証は0.05%(年率)です。他の資産形成方法と比べるとかなりの低金利ではありますが、1万円から始められるので少額投資も可能ですし、何といっても実質的な元本保証であることは大きな安心感があります。
老後など遠い将来に向けた資産形成の方法としては利回りが低すぎて不向きではありますが、必要となる時期が決まっている資金の一時的な運用手法として検討の余地があります。
10万円は資産形成の出発点
この記事では「少額からでも始められる資産形成」として、10万円以下でも可能な投資方法を紹介してきました。10万円からでももちろん有効性はありますが、あくまでも資産形成の目的は長期的な視野で取り組み、最終的に大きな資産を築くことです。10万円からの資産形成はゴールではなく、ここから踏み出す第一歩です。
若いうちは給料から投資に回せるお金が少なくても、問題はありません。少しずつでも毎月続けることが重要で、それによってドルコスト平均法によるリスク分散も実現します。少しずつ積み立てながら運用益も再投資をすることで、資産は加速度的に増えていきます。それが将来の安心や豊かさにつながるのです。