東京都内では第2波で一日あたりの感染者数が次第に増えてきている現在ですが、今回のCOVID-19は今までの医療業界の流れやルールを大きく変えることになるでしょう。
今後、あらゆる医療は常に新型コロナウイルスのことも考慮した体制を取る必要があります。
現在、私は某大学病院で内科医をしつつ、市中病院で3次救急もやっていますが、この半年でいろんな変化が起きました。
今回は医療業界の中でも私が勤務する①大学病院の内科、②3次救急の現状と今後についてお伝えできればなと思っています。
大学病院内科の現状
まず、大学病院についてですがこのような大きい病院は新型コロナウイルスのワクチンが開発されるまでは今後も起点病院になるため、一定数の病床が必要になってきます。
そのためには主に外科系の患者数を減らす必要があります。現在、ワクチンができていない状況ではまたパンデミックが起こる可能性があります。日本でもそのような状況が起きた際には無理矢理にでもベッドを確保する必要があるでしょう。実際に今年の4-5月は完全にコロナ患者専用の病棟が作られました。
しかし、実際のところ入院したのはコロナ陽性患者ではなくコロナ疑似症患者が多かったです。
そして今後もコロナ擬似症患者という状態が確立されたまま医療を展開しなくてはならないでしょう。その影響を大学病院などの起点病院はもろに受けます。
現在、私が務める大学病院には、立地する県の西側半分の発熱患者、特に高齢者の誤嚥性肺炎、また心不全患者もレントゲン上は肺炎に見えるのでこの2病気に関してはほとんどがたらい回しにされて私の大学病院に運ばれてきます。このおかげで内科の入院患者数は増加する一方です。
患者の偏りがとんでもなく生じているのが現状です。
また、慶応大学であったように外科の手術待機の患者さんが特に症状もないのにコロナ陽性であったという報道があってから、だいたいどこの病院も手術前には症状がなくても術前にCT検査を、少なくともレントゲンを取るようになった施設が多いです。
難しいのは高齢者の場合は異常がなくてもすりガラス印影のように見える病変があったりしてコロナでもないのに手術が延期になるケースが多発しているケースです。
眼科、耳鼻科、口腔外科でさえ徹底しています。少なくともコロナが落ち着くまではこのような状況が続くでしょう。医療費はただただ増加していきます。
この辺を解決させるためには、ほんとにワクチンと正確性に優れた迅速キットの開発が待たれるところですね。
3次救急の現状
さて、もう一つ明らかに大きな変化があったのは救急外来でしょう。
多数の患者の入り口ですから、一番新型コロナウイルスに触れる機会が多いのも救急外来でしょう。ほとんどの施設では徹底して感染予防するための決まりやルールが決められるようになり、そのうち気管挿管は一番飛沫感染を受けやすい処置なので、多くの施設でプロトコールが決められているように思えます。
私の大学病院や勤務先の市中病院では気管挿管をする際には全例、PPE装着のもと鎮静・筋弛緩を使用した上でビデオ喉頭鏡を用いるようになりました。
また、現在の救急外来での問題は発熱患者はまずコロナを疑って対応するというルールが決まっているために、熱中症患者もコロナ患者として扱う必要がでてきていることです。
実際に、いろんな施設では発熱というワードだけで受け入れ拒否の施設も多いため、熱中症はたらい回しにされがちです。それが仮に病歴的にほぼ間違いなく熱中症だったとしてもです。
救急は時間との勝負です。1分1秒でも治療介入が遅れれば治療の奏効率が変わってきます。故に救急搬送の段階でたらい回しにされるというとんでもなく信じられない状況が起きています。
この状況を打開するためにも前述したように早急なワクチンと正確な迅速キットの開発が待たれるところです。
今後医療業界がもともとの状況になるためには何度も言っていますが、早急なワクチン開発と迅速キット開発が重要でしょう。
今後について
とはいえ、一度このような経験をした日本の医療はワクチンで新型コロナウイルスに対して免疫がついたとしても以前と同じような状況に戻るかというとそうは思えません。
また同じような新種の感染症が出現する可能性もありますからね。
他の業界ではリモート化が進んでいますが医療も少しずつリモート化が進んでいくと思います。まずは外来から進んでいくでしょう。
初診外来では実際に目で見て触って、聴診してなどといった診察が必要ですが、定期通院されている患者では薬だけほしいという方もたくさんいます。
そういった方々を対象にリモートでの診察、また、薬も直接薬局に行かずに家に届くというスタイルが確立する可能性も十分にあると思います。
開業されている病院の立ち位置も少しずつ変わっていくことでしょう。
新型コロナウイルスの出現により医療体制は確実に変化しましたし、これからもまだまだ十分に変わっていくと思います。
我々医師はその変化に順応していく必要があり、そしてその状況下でも最高のパフォーマンスを発揮できるようになる必要があります。
みなさんも新型コロナウイルスに負けずに、むしろ今現在言われているようwithコロナという言葉の通り頑張っていきましょう。