このコラムでは、「医師の人生をより豊かに」をモットーに、多忙の極みである医師に、少しでも有益なコンテンツを提供しようと日夜考える勤務医ドットコム編集部が監修しています。
今回は最終回、開業リスク対策とメリット・デメリットなどを解説します。
開業後のリスクと対策方法
よく一般企業で重要なのはヒト・モノ・カネと言いますが、クリニック開業・経営のリスクも同様に考えられます。
まずヒトについては、クリニックを野球に例えると、院長先生が監督でありキャプテンであり、エースであり4番打者です。
開業前からしっかりとどんなクリニックで攻めるのかビジョンを持ち、同様にどう運営するのかという戦略を考え、どのようなチームにするかを考えてスタッフを採用し、患者さんから信頼されるクリニックにするためにチームを動かし、なおかつ自分が中心となり診療を行っていかなければなりません。
勤務医時代と違い、代わりは誰もいません。自身が医師であると同時に経営者であり、マネージャーでもあるということにしっかりと責任をもちましょう。
次にモノです。
モノというのは先ほどから述べているようにクリニックの立地や内装、設備や診療のクオリティのことです。
患者さんにとって充実したサービスであるということを前提に計画を立てて開業しないと、売り上げも伸びていきません。せっかく独立したのですから、自身の理想の医療を追求しながらも楽しみながら、しっかり綿密な計画を立てていきましょう。
最後にカネです。
これも上記でも述べたので詳細は割愛しますが、医師は医療の専門家である一方で、お金の知識には乏しい、ということが多々あります。
信頼できる専門家やブレーンを探して相談できる体制を作ることが一番重要です。
以上のように、ヒト・モノ・カネをおろそかにせずにしっかりと事前に体制を整えておくことが、開業後のリスクを抑える最大の対策になります。
開業するメリット
こんなに手間と時間をかけて開業する必要があるのか……とお思いかもしれませんが、もちろん開業するメリットはあります。挙げられるのは以下のような点です。
・収入が増える
・自身のペースで仕事ができる
・独自の診療スタイルを築ける
・地域医療への貢献を実感できる
第一に、自身の頑張りで次第で収入が大きく増える可能性があるということです。勤務医の平均年収は約1467万円である一方、開業医は約2699万円というデータも出ています。さらに、勤務医の年収のピークは45~49歳と言われていますが、開業医は引退しない限り50~60代でも稼ぎ続けることが可能です。(参考:https://doctor.mynavi.jp/column/income_fulltimedoctor/#a1)
二つ目は、自身のペースで働けるということです。昨今医師の働きかた改革の話題もよく出ますが、基本的に勤務医は働く職場によって業務量や時間は違ってきます。そしてそれは年収にも直結します。しかし開業医であれば、業務量が減ったからといって収入が減るかというと、一概にはそう言えません。開業医の中には、スタッフや勤務医を雇いながらしっかりと高収入を得て、自身や家族との時間もしっかりと確保している方も大勢いらっしゃいます。
三つ目は、独自の診療スタイルが築けるということです。勤務医の方が転職を考える理由として、勤務先と自身の診療スタイルが合わないというのはよくある話です。開業すれば、自身の追求する理想の診療スタイルを貫くことが可能となります。
最後に、地域医療への貢献を実感できるということです。自身が開業したエリアで患者さんに支持され、経営も軌道に乗ると、地域医療に貢献していると実感することができます。大きな病院で勤務している時とは違い、より身近な距離で患者さんに接するとこで、直接感謝の声を聞く機会も多くあるでしょう。
開業するデメリット
一方で、開業するデメリットも存在します。メリットだけでなく、デメリットもしっかり把握しておくことが必要です。挙げられるのは以下のような点です。
・収入の不安定性
・責任が大きい
・自身の体調不良による経営への影響
・医師会との付き合い
第一に、収入の不安定性は開業医にはつきものです。開業当初は赤字で、貯蓄を切り崩す日々が続くかもしれません。
また軌道に乗った後でもスタッフの大量退職や口コミなどによる突然の経営不振や、昨今のパンデミックのような外的要因で売上が急減する可能性もあります。
報酬が保障されていないのは経営者の宿命のようなものですが、それをデメリットだと思う方は開業医には向いていないかもしれません。
二つ目については、開業医は何事も自身の責任で行わなければなりません。成功も失敗もすべて自分で受け止めるという責任が伴うのは、人によっては耐え難いストレスになる可能性があります。
またよくあるのが、自身の体調不良により経営に大きな打撃あるということもデメリットでしょう。
代わりが利かない院長というポジションは、自身の休業=売上減ということにも繋がります。就業不能への保障対策や代診の当てを見つけておくなどの対処でリスクヘッジも可能ですので、念頭に置いておきましょう。
最後に、これまでと比べて付き合わないといけない人が増えるということも、人によってはデメリットかもしれません。
医師であると同時に経営者でもある開業医は、患者さんやスタッフだけでなく、銀行や医療機器メーカーなどの取引業者や、税理士や社労士などの士業、業界団体である医師会への加入など、様々な業界や属性の人々と付き合っていかなければいけません。
開業には煩わしい人付き合いも伴い、それがストレスで勤務医に戻る方もいらっしゃるほどです。
ただ、ここに挙げた事象がデメリットには感じないという方もいらっしゃいます。自身はどう感じるか開業前に少し想像してみるのもいいかもしれません。
まとめ
医師が開業するためには、候補地の選定はもちろん、開業資金の準備やスタッフの確保などさまざまな工程が必要です。
せっかく理想をもって開業するのですから、失敗しないためにもメリット・デメリットをしっかり押さえてうえで、周りのサポートも得ながら事前準備を行いましょう。
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