不動産・証券などの投資会社から、資産運用を促す「迷惑電話」が来たことはないでしょうか。自宅だけでなく勤務先にまでかけてくるケースもあり、「どうしてここがわかったの?」となる方もいるはずです。こうした迷惑電話がなぜかかってくるのか、狙いはなんなのか、どう対応すればよいのかを解説します。
投資の迷惑電話は「なぜ」かけられるのか
投資の迷惑電話は、ある日突然かかってきます。電話をとって対応をしたが最後、こちらの都合もお構いなしに喋り続け、投資商品を強引に勧めてきます。なぜこうした電話がくるのか。当たり前ですが、向こうが売りたい商品を買わせようとするためです。
商品を売るには様々な方法があります。店舗に並べたり、テレビでCMを流したり、新聞にチラシを入れたり、最近はインターネットによるネット通販も広がったりしています。
それなのに、なぜわざわざ電話というある意味昔ながらの方法を使うのでしょうか。そこにはいくつかの理由があります。
まず、売りたい商品が高額で、専門的知識が必要な雰囲気があり、その良し悪しが一般人にはわかりにくいことがあります。新規公開株や生命保険などの金融商品をはじめ、額の大きい投資用不動産などは、店舗に並べたり、テレビCMや新聞チラシに広告を載せたりして、簡単に売るものではありません。ある程度、じっくり説明する必要があります。
そこで電話を使い、「税金が高くてお困りではありませんか?」「銀行預金はほとんど利息も付かず、ご不満ではありませんか?」「公的年金だけでは老後に不安はありませんか?」などと興味をひいて、売り込もうとするのです。
また、一般人にはわかりにくいという商品特性を逆手にとって、電話を使い、割高なものやリスクの高いものを勧めてくることもあるでしょう。
営業マンが電話で勧めてくるのは、最初から詳細な情報をオープンにするのではなく、自分のペースで情報を小出しにしながら話を進めるためです。
また、電話営業にはコスト面のメリットもあります。テレビや新聞に広告を出すとなるとそれこそ1回何百万円もかかります。チラシも枚数によりますが、安くはありません。
それに比べ、電話での営業は初期投資が少なく、誰でも簡単に始められます。特に迷惑電話をかけてくるような業者は、マンションの一室で、ほとんどコストのかからないIP電話を使ったりしています。
さらに、電話対応は声だけの接触であり、身なりや表情まではわかりません。内容もあらかじめ用意したマニュアル通りに話すようにすれば、誰にでもできます。
実際、こうした迷惑電話の営業マンは、学歴や資格など不問で、若くて元気だけは負けないといったタイプを歩合給で雇うことが多いようです。
また、いまだに投資商品の電話セールスは、それなりに売れるという事実があります。電話をなかなか切れない人、これまでなんとなく投資には興味があったのでつい営業マンの説明を聞いてしまう人などが一定数存在するのです。
こうした様々な理由から、投資の迷惑電話はなくなるどころか、むしろ増えているといってもいいでしょう。
「コンタクト名簿」をどうやって入手するのか
ところで、投資の迷惑電話をかけるとしても、何の準備もなく電話をしまくるのでは非効率です。そこで、高額所得者にターゲットを絞るため、業者は名簿を作ったり、入手したりします。
個人情報の保護が厳しくなった現在でも、こうしたコンタクト用の名簿を販売する業者はいくつもあるのです。
ここからは、医師をターゲットとしたケースについて見ていきましょう。医師の名簿(リスト)は、次のような方法を組み合わせて作成していると考えられます。
(1)インターネット検索
患者の来院を促すため、ほとんどの病院やクリニックが充実したホームページを作成し、診療科目と医師名、診療日・診療時間などを公表しています。こうした情報は誰でも入手できます。
(2)病院への訪問
病院やクリニックを訪れると、入り口付近や待合室などにやはり、診療科目と医師名が記載された案内板があります。ここから情報を集めることができます。
(3)公開情報を調べる
医師に関する情報としては、一般に公開されているものもあります。たとえば、国会図書館には次のような名簿があり、閲覧することができます(以下、国会図書館リサーチ・ナビより)。
『全国医師名簿』(ドクターズファミリー 年刊)
都道府県別に、医師の氏名、医院名、住所、電話番号、診療科目を掲載しています。現在は電子資料で刊行されています。
『醫籍総覧』(醫事公論社 年刊)
都道府県別に病院と開業医を掲載しています。開業医は、氏名、科目、院名または勤務先、住所、電話番号、出身県、生年月日、学歴、登録番号、略歴などを掲載しています。東日本版は第80版(2004年発行)、西日本版は第81版(2005年発行)をもって刊行を終了。
『日本医籍録』(医学公論社 1~2年に1回刊)
市区郡別に、医師の氏名、専門科名、自営医・病院名または勤務先、住所、出身地、生年月日、出身校、登録番号、経歴などを掲載しています。東日本版は第77版(2004年発行)、西日本版は第78版(2005年発行)をもって刊行を終了。
『医育機関名簿』(羊土社 年刊)
大学の医学部に所属している教授、准教授、講師である医師について掲載されています。2017-18年版をもって刊行を終了。
受付をどうやって突破してくるのか
営業マンたちは、医師の名簿を入手・作成するとすぐに電話をかけ始めます。
ただ、大きな病院ほど、外からの電話は一度受付につながるものです。ですから、「○○社の○○です。○○先生に資産形成(あるいは税金対策など)に関するお話があってお電話しました」といっても、間違いなく受付で拒否されています。
以前は「○○先生に個人的な要件がありまして」などと曖昧な表現で押し通すこともあったようですが、最近はほぼ無理です。
では業者がどのような手法を使うのかというと、たとえば「○○病院の○○です。△△先生に学会の件(あるいは治療の件など)でお話ししたいことがあるのですが……」といって、ほかの病院の医師になりすまし、偽名を使って受付を突破するのです。
ある医師(勤務医)の場合、アルバイト先の病院にわざわざ大学時代の指導教授の名前で電話がかかってきました。「こんなところまで、いったい何だろう?」と思って受話器を取ったら、投資会社からの営業で驚いたそうです。
「このようなワザは詐欺ではないか?」と考える方もいることでしょう。営業マンからしてみても、相手の反感を買いかねない手法です。しかし、きついノルマを持つ彼らは、とにかく医師に連絡をすることしか頭になくなっています。コンタクトさえ取ることができれば、社内でもそれなりに評価される仕組みになっているのです。
相手のペースに乗らないのが一番
悪質な方法で投資の迷惑電話をかけてくるような営業マンは、そもそも相手にしないのが一番です。
受話器を取ってしまっても、しばらく聞くふりをしながら早めに話を遮り「関心がない」「忙しいので」といって電話を切るのがよいでしょう。
怒ったり、反論したりするのは考えものです。相手はとにかく話を引き延ばし、付け入るスキを狙っています。相手と議論すること自体、相手の術中にはまるリスクがあります。
また真面目な性格や、やや気の弱いタイプだと、ついつい相手をしてしまい、何度も電話がかかってくるかもしれません。その場合は、営業マンの名前や社名、連絡先をメモしておき、各地の消費者センターに相談するといいでしょう。色々なアドバイスが受けられます。
なお、全国共通消費者ホットライン「188」にかけると、最寄りの消費生活センターなどにつながります。
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