「テンバガー(一〇倍上がる株)を見つけるには、まず自分の家の近くから始めることだ」
出典:ピーター・リンチの株で勝つ―アマの知恵でプロを出し抜け
これは著名投資家、ピーター・リンチの金言です。つまり「自分の家の近く=日常生活」に株式投資で大成功するヒントがあるということです。これを医師や医療関係者にあてはめて医療関連銘柄にフォーカスしてみてはいかがでしょうか。本記事では、その手がかりになる今注目の医療関連5銘柄を紹介します。
目次
■医療関連の注目銘柄1:シンバイオ製薬<4582>
シンバイオ製薬<4582>は、抗がん剤トレアキシンの国内独占ライセンスを持つ企業で2021年1月に注目されはじめた銘柄です。同社は、ガンや血液領域に特化した希少性の高い薬品を扱うベンチャー企業。2021年2月1日時点の時価総額は約278億円になります。シンバイオ製薬の株価は、2020年末の時点では400円前後でしたが、2021年1月下旬には倍以上となる800円超まで急騰しました。
つまりわずか1ヵ月で株価が倍になったのです。急騰のきっかけは、抗がん剤トレアキシンの液剤タイプ(RTD製剤)の国内販売が1月12日に発表されたためです。これまでトレアキシンは凍結乾燥タイプ(FD製剤)しかなく現場で溶解する手間がかかりました。液体タイプではこの手間が省けるため、業務効率化につながると期待されています。
シンバイオ製薬の株式のもう一つの好材料としてトレアキシン販売体制の変更が挙げられます。これまで同社ではトレアキシンの販売を大手製薬会社エーザイに委託していました。しかし2020年12月から自社販売に切り替えることを発表しています。同社の自社販売体制が比較的短期間で機能し利益に寄与すると見るのであれば買いそうでないと見るのであれば様子見が賢明となるでしょうか。
■医療関連の注目銘柄2:エムスリー<2413>
「エムスリー<2413>」は、2020年に引き続き2021年も目が離せない医療関連の銘柄の一つです。医師に対しては、同社の詳しい紹介は不要でしょう。国内29万人、グローバルで600万人以上の医師が登録するプラットフォーム「m3.com」を運営している企業です。
エムスリーの株価は、2020年後半になって急騰。2020年前半に4,000円を切っていた株価は その年の12月には8,000円を超えました。これによりエムスリーの時価総額は、国内上場企業のトップ20入り。時価総額5兆9,437億円(20位)は、武田薬品工業(21位・5兆8,562億円)を上回ります。
※2021年2月10日時点の時価総額と順位
エムスリーの株価が急騰した理由としては、新型コロナ感染の拡大によって「m3.com」のアクセス数が46%増加したことが挙げられます。また同社では製薬会社のマーケティング支援もビジネスの柱ですが、こちらも新型コロナ感染の影響によって 2.5 倍以上の増加になっています。
エムスリーの最大の注目点は、割高となったPER・PBRをクリアして2021年さらなる成長を遂げられるかでしょう。同社では、M&Aと展開する国を増やすことで事業領域を拡大してきました。今後もこれを維持することで成長を実現する方針を掲げています。
■医療関連の注目銘柄3:メドピア<6095>
エムスリーと同様、医師会員向けの情報サイトを軸に2020年後半に株価を大きく上げたのがメドピア<6095>です。同年9月、東証マザーズから東証一部へ市場変更したことも株式マーケットのトピックとなりました。エムスリーと比較すると時価総額1,586億円と規模は劣りますが売上・利益ともに堅調に拡大しています。
メドピアのビジネスの柱は、医師同士が情報交換できる会員制サイト「MedPeer」(登録者12万人)などを展開する「集合知プラットフォーム」事業。この会員制サイト内で表示される製薬会社などの広告が大きな収益源です。このほか、MedPeerのブランド名で医師向けの転職・人材紹介サイトも展開しています。
もう一つのメドピアの主力ビジネスは「予防医療プラットフォーム事業」。具体的には、契約企業の従業員が産業医にオンラインで相談できる「first call」を提供しています。このサービスでは、産業医面談の手間(従来の3分の1以下)と契約料(相場の月額5万円を4万円に)をカットすることで競合他社に対しアドバンテージを得ています。
これら2つの事業に薬局やクリニックが自らCRMアプリを構築できる「プライマリケアプラットフォーム事業(サービス名:kakari)」を加えた3本柱をそれぞれ成長させていくことで、2020年9月期約53億円の売上を150億円に拡大することをメドピアでは中期計画としています。
■医療関連の注目銘柄4:メディカルデータビジョン<3902>
メディカルデータビジョン<3902>は、国内最大級の医療データを保有する企業です。同社の収益源は、対をなす2つの事業「データネットワークサービス」と「データ利活用サービス」。
1つ目の収益源の「データネットワークサービス」は、病院にパッケージの経営支援システムを提供しシステム利用料と診療情報を得る仕組み。2つ目の収益源の「データ利活用サービス」は、製薬会社などに診療情報をもとにした分析調査データを提供しその調査費用を得る仕組みです。なお同社が扱う診療情報は2次利用許諾を得たものなので倫理的・法的に問題はありません。
直近の2020年12月期の売上推移は「データネットワークサービス」はコロナ感染の影響を受けつつも前期の売上をほぼ維持。 一方「データ利活用サービス」はコロナ禍においても高い成長率を維持し、これがメディカルデータビジョンの2020年期の成長エンジンとなりました。2021年期に向けても利益続伸見込みです。
2020年にローンチされた同社の医療データを生かした「オンライン診療サービス」がどれくらい普及するかがさらなる成長のカギとなりそうです。
■医療関連の注目銘柄5:栄研化学<4549>
栄研化学<4549>は、便潜血検査試薬(OC)のシェア6割超の臨床検査薬の大手として知られます。同社の株式が注目を集める理由は、新型コロナ遺伝子検査試薬・機器の売上が好調だからです。栄研化学の新型コロナ遺伝子検査試薬は、独自技術である「LAMP法」を採用することでスピーディかつ高感度な遺伝子検出を実現。競合技術よりもアドバンテージが大きいといわれます。
この新型コロナ遺伝子検査試薬の増産体制の整備を進め、第2波、第3波に対応したことで2021年1月末に売上高・利益・配当金を上方修正。それに伴い株価を大きく上げました。2021年期以降も新型コロナ遺伝子検査試薬のニーズが持続し、それに対応できれば長期的な利益拡大のシナリオもあり得ます。また同社の悪材料は新型コロナ感染拡大の影響によるOCの受診減少でした。
しかしこの部分が解消されれば上積みも見込めます。
医師や医療関係者であれば、医療関連の銘柄でリターンを
ここでは、2021年前半に注目されている医療関連の株式銘柄を5つ紹介してきました。医師や医療関係者であればこれをお読みになって「さらなる好材料があるのではないか」「注目というけれどこんな悪材料があるのではないか」と一般の人が気づけない部分にまで視点が広がりやすいのではないでしょうか。
冒頭でも解説した通り日常生活に株式投資で成功するヒントがあります。ご自身の身近な知識を最大限に活かし得意な医療分野で安定的なリターンを目指しましょう。最後に本稿では、紹介した銘柄の購入を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いいたします。