今回は20年間メガバンクに勤務されたご経験をお持ちの洲濵拓志氏をお迎えして、開業を考えている勤務医に向けて「開業医の事業や資産に関する悩みについて」のスペシャルインタビューをお届けします。
「病院の経営」と「資産の形成」をキーワードに、金融業界と不動産業界の現場経験が豊富な洲濵氏のお話を伺いました。
■医師であり経営者でもある開業医、お金の悩みは尽きない
──メガバンクでのご経験に加えて、ファイナンシャルプランナーや不動産鑑定士の資格もお持ちとのことですが、これまでのご経歴を教えてください。
洲濵氏
私は6年前に不動産鑑定士として独立したのですが、それまでは金融業界と不動産業界、両方の現場で経験を積んできました。
三井住友銀行で20年、東京スター銀行で2年、法人・個人向けの融資や資産運用などの業務に従事していました。
不動産業界では、不動産鑑定業のほか、中古不動産のリノベーション事業や不動産投資セミナーの開催などに携わってきました。
独立後は、不動産鑑定士としての公的な仕事だけでなく、民間の方々からの不動産やお金に関するご相談もお受けしています。
また、(株)財務部(https://zaimubu.co.jp/)という会社も経営しております。
経営相談や財務コンサルタントだけでなく、不動産の宅建業の免許も持っているため、不動産の売却や活用などのご相談にも対応できます。
また私自身、8年ほどアパートを経営していましたから、オーナーとしての立場からご相談に乗ることも可能です。
──開業医のクライアントもいらっしゃるとのことですが、これまでにどのような相談がありましたか?
洲濵氏
よくあるご相談のひとつは、開業資金に関するものです。
土地や建物を準備するためには、まとまったお金が必要ですから「資金が足りない」あるいは「借り過ぎてしまった」などのお悩みが多くなる傾向にあります。
事業のための資金繰りについてのご相談もよくお受けします。
「開業したものの、もうやめざるをえない」という驚くほど深刻なケースもありますね。
高額な機械のリース代が払えなくなり、ポケットマネーでは足りずに消費者金融に手を出した結果、ご家族との関係にひびが入ってしまったというご相談もありました。
「いい治療をしたい、患者さんを満足させたい」という医師としての思いが、経営面で裏目に出てしまったパターンです。
──開業するために金融機関から多額の借入をしていた場合、住宅ローンの審査にも影響があるのでしょうか?
洲濵氏
住宅ローンの審査では「返済比率」と呼ばれるものがポイントとなります。
収入に対するローン返済額の比率のことです。これがだいたい35%以内に収まっていれば、審査に問題はありません。
勤務医の場合はこれで話は完結します。
しかし、開業医の場合は話が違ってきます。金融機関は、個人事業主の場合、経営と経営者の家計の収入と、事業借入と住宅ローンの返済額を各々合算して審査します。
ですから本業の借入の返済額が多いと、合算したトータルのローン金額が増え、返済比率が上がってしまい、ローンの審査が通りにくくなったりします。
事業のために法人として借金をしているのであれば問題はないのですが、そこに加えて経営者が個人として消費者金融などで借入をしていると難しい状況になってしまいます。
審査が通りにくくなったり、少額のローンしか出なくて自己資金をたくさん出さなければいけなくなったりといった影響はありうるでしょう。
■投資は周囲に流されず、信頼できる情報かを見極めて
──株や不動産などといった投資に取り組む上で、失敗しないコツはありますか?
洲濵氏
株や不動産など、多種多様な投資商品があり、それを販売する営業マンは「開業医はお金を持っている」と思っています。
そこで、開業医の方は、提案された商品が優れているのか、自分に合っているのか、という判断基準をもって行動することが大切です。それが失敗を防ぐためのポイントになります。
私のもとに寄せられる相談の中でも多いのが「これいいらしいよ」「あの人もやってるらしいよ」という言葉に流されてしまったというパターンです。
投資商品は内容が複雑であることが多く、期待収益が高いほどリスクも高まります。
ハイリスクとローリスクどちらをとるべきか、商品の選択や組み合わせをどうするべきか。など迷った時は、ぜひ専門家に相談していただきたいと思います。
──投資について専門家に意見を求める際のポイントはありますか?
洲濵氏
担当者との信頼関係は重要です。私自身、2年以上のお付き合いのあった人から「いい物件が、ついに出ましたよ」という情報をもらって不動産を買いました。信頼できる担当者と出会えれば、一度ならず二度、三度といい情報をもらえることもあります。
特定の業界に属している人だけでなく、中立公平な立場からアドバイスをしてくれる専門家の声にも耳を傾けるとよいですね。親身になって誠実なアドバイスをしてくれる専門家は必ずいます。
■病院経営と資産形成、両立のポイントは「キャッシュフロー経営」
──開業医の方におすすめの資産形成について教えてください。
洲濵氏
投資信託を使い、ポートフォリオをきちんと決めて、長期分散の積立投資は取り組みやすい資産形成のひとつです。
長期間にわたって投資対象を分散することでリスクが抑えながら一定の収益が期待できます。日本や外国の株式や債券や不動産商品も含まれています。
ある程度の自己資金があれば、不動産投資をするのもよいと思います。特に不動産投資をする上では、医師はアドバンテージのある職業です。
社会的な信用度が高いので借入がしやすく、不動産業者も良質な情報を持ってくる傾向にあります。
保険はどうでしょうか。「株は怖いけど、保険なら安心」という思い込みで資産形成目的の保険に多数加入している例を見かけます。
しかし、投資効率の悪い内容であるケースは意外と多いのです。
──病院の経営と個人の資産形成の両立について、アドバイスをお願いします。
洲濵氏
両立のポイントは「キャッシュフロー経営」です。
病院の経営は、まず収入があって、そこから家賃や人件費、税金などを支払った後に、ようやく手元資金(キャッシュ)が残ります。
経営者としてはコストは抑えたいものですが、そこに含まれる自分の給料は増やしたいですよね。
コストの無駄な部分を削ったり、事業の売上を増やしたりすれば、そのぶん給料を増やすことができます。
その給料が入ってくる家庭の中でも、キャッシュフローが重要になります。
収入の中から、生活費や税金、ローンなどを払い、残ったお金で積み立てなどによって資産形成を考えるのです。
このように、事業経営と資産形成、二つのキャッシュフローをイメージすることが両立のポイントです。
とはいえ、ここまでやる時間はなかなか取れないというのが現実です。
実際のところ、だいたいはどんぶり勘定で経営されていますが、そのまま続けていくといつか行き詰まってしまう可能性もあります。
ぜひ早い段階で専門家にご相談いただきたいと思います。
――ありがとうございました。
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