中古マンションがまたじわじわと値上がりしています。都心に売り物がなくなった不動産業者は、一気に「地方都市」へシフトし始めました。東京一極集中のため、地方物件は空室リスクが高いと思われがちですが、蓋を開けてみれば、オーナーチェンジで高利回りの有益物件があるものです。もちろん、遠方のため物件の状況がわからないというデメリットや、地方特有のルールなど、リスクもあります。それらを克服して「地方都市」に賭けるか否か、悩みどころです。
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都心の格安物件は在庫切れ? 不動産業者は「地方都市」に注目
このところ、不動産業者からのダイレクトメールの内容が変化しています。これまで「売ります」、「指値(値引き交渉)応じます」など、売り文句ばかりだったのですが、最近は「高値で買います」、「再建築不可でもOK」と、買いに転じてきたのです。
インターネットのポータルサイトで不動産市況を見てみると、中古マンション価格は、「爆買い」ブーム再来のような高騰ぶりです。都内ではワンルームでも2000万円を下回る物件がほとんど見られません。それどころか、数年前は980万円だった赤坂の昭和築ワンルームが、現在は2180万円(オーナーチェンジ・現状有姿)で売りに出ているほど。どんなに安くても、1900万円台、利回り3%以下。これでは、購買意欲も萎えてしまいます。
現在、都心には「格安」と呼べる物件がありません。しかし、それでも買う人がいます。恐らく過去を知らない人や、外国人投資家か、投資ビギナーでしょう。
この事態に、不動産業者は新たな市場開拓を強いられています。格安物件を求めて、業者が地方へ向かっているのです。
地方の「新幹線駅前」は高利回りで期待大! 実際の物件を紹介
不動産業者が新たな市場として注目したのは、地方の新幹線駅前エリアです。以前は100万円台の築浅物件が10件前後並んでいたものですが、今は1件も見当たらないことが珍しくありません。軒並み買い取られてしまったのでしょう。とはいえ、現在の販売価格帯もそう高くはなく、300万円~500万円台がメインです。平成築で専有面積20㎡前後、オーナーチェンジ物件では家賃3万円程度を取れていますので、表面利回り8%~12%といったところでしょうか。
ここで、実際に販売されている、地方都市・駅前物件の例をご紹介します。
・東北新幹線「宇都宮」駅より徒歩6分/価格290万円(オーナーチェンジ・家賃3万円)
専有面積18.87㎡、平成元年築、エレベータ・オートロック装備、維持費8000円
・上越新幹線「新潟」駅より徒歩4分/価格280万円(オーナーチェンジ・家賃3万円)
専有面積20.60㎡、昭和63年築、エレベータ・オートロック装備、維持費12000円
・東海道新幹線「浜松」駅より徒歩9分/価格298万円(オーナーチェンジ・家賃4万円)
専有面積17.86㎡、昭和59年築、エレベータ・オートロック装備、維持費なし
※「維持費」は管理費・修繕積立金の合計金額です。
地方都市は基本的に車社会ですので、駐車場付の物件なら、駅から離れていても人気があります。とくにファミリータイプの間取なら、駅よりも学校や公園、大型駐車場を備えたショッピング施設に近い郊外物件のほうが好まれます。物件探しのエリアが広域になるので、調査・吟味に手間がかかるかもしれませんが、ファミリータイプは坪単価が安く、高い家賃が取れるので、インフラが整った環境の良い立地であれば、ワンルームより投資向きかもしれません。
以下に、実際販売されているファミリータイプ物件の例をご紹介します。
・上越新幹線「新潟」駅よりバス20分/価格598万円(オーナーチェンジ・家賃8万円)
専有面積74.75㎡、平成元年築、エレベータ・オートロックなし、維持費33000円
「リニア中央新幹線」が今後の不動産市況を左右?
東京近郊都市の開発で近年注目されているのが、「リニア中央新幹線(品川~名古屋間が2027年開業予定)」のルートに決定している相模原市。今のところ、「橋本」駅が設置駅として有力なようです。「橋本」駅徒歩5分圏内の不動産市況を見てみますと、中古マンションの売値(坪単価)が昨年より3割程度上昇しています。今話題になっているうちに売却しようという一方的な動きかもしれませんが、開業後はさらに高騰する可能性もあります。
橋本駅は、JR横浜線・相模線、京王線が乗り入れるターミナル駅。また、橋本駅のある緑区は八王子市と並ぶ学園都市であり、青山学院などの4年制大学や専門学校も多いため、以前から投資用ワンルームアパートを中心とした不動産売買が活発なエリアです。商業施設や医療施設、行政サービスなどのインフラはある程度整っていますが、東京、名古屋方面から人口が流れ込んだときに、どれだけのキャパシティがあるかは今のところ未知数です。
リニア新幹線開業まであと7年。「橋本」がより暮らしやすい、魅力的な街となっていることを期待します。
「政令指定都市」にも格安物件は溢れているものの…
地方ばかりでなく、政令指定都市、特に「関西エリア」には格安物件がひしめいているケースもあります。
「新大阪」駅前エリアは再開発の途上にあり、駅から3分圏内でも500万円未満で買えるワンルームマンションが多数あります。建物は昭和築ばかりですが、立地はピカ一。東海道・山陽新幹線の2大交通網を結ぶターミナルステーションのお膝元、関西の一等地といっても過言ではありません。
京都市内の山間部でも、新大阪のような掘り出し物件はあります。ただ、そのほとんどが、建築基準法違反の物件です。たとえば、京都市北区、山の傾斜地に建つマンション。1階部分が木造長屋で、その上の2階からひな壇のように鉄筋コンクリート造の建物が続きます。
当然、建築確認など取っておらず、築年も不明です。そういった物件の上層階の部屋は安価で取り引きされています。オーナーチェンジで家賃37000円、表面利回り30%。しかし自主管理物件のため、大規模修繕の予定はありません。修繕積立金もないので、いずれ持ち出しが発生します。転売も難しいでしょう。
まとめ
堅いところでいうと東北・上越新幹線の駅前物件。多少リスクはありますが高利回りを期待できるのが関西物件。5年後、10年後の再開発エリアも視野に入れながら、賢く吟味することをおすすめします。
空き家問題が取り沙汰される昨今ではありますが、実は投資物件でその割合は少なく、相続がらみの所有権問題でもめている物件が大半なようです。入居者募集については、親身になってくれる地元の不動産管理会社にお願いすれば、すぐに空室は埋まります。併せて管理も任せておくと安心でしょう。そして、たまには旅行がてら現地へ赴き、周辺を散策するのも悪くないかもしれません。地方に投資物件を持つことで、自分自身もそこに居るような、別荘のような感覚も楽しめます。
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