今回も引き続き、20年間メガバンクに勤務されたご経験をお持ちの洲濵拓志氏をお迎えして、開業医の事業や資産に関する悩みについてのスペシャルインタビューをお届けします。
後編は「資産の相続」と「事業の承継」をキーワードに、金融業界と不動産業界での現場経験が豊富な洲濵氏にお話を伺いました。
■資産が多いほど悩ましい相続問題も、事前の対策は可能
──基本的なことですが、相続税はどのように計算されるのでしょうか?
洲濵氏
相続税というのは、資産に対する税金です。
死亡した時点で保有している現金や株式、不動産などの資産価値に対してかかるのですが、ここにそのまま税金をかけると高額になってしまうので、一部免除されます。
これがいわゆる基礎控除と呼ばれるもので「3000万円 + 600万円 × 相続人数」という計算式で算出されます。
例えば、残された家族が妻と息子の2人なら、基礎控除額は「3000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円」と計算されます。
この場合、資産価値が4,200万円よりも低ければ、相続税はかかりません。相続税が一定の資産を持っている人向けの税金といわれているのは、このためですね。
相続税は累進課税制ですから、資産が大きいほど多くの税金を取られてしまいます。
──相続と生前贈与、それぞれのメリットとデメリットを教えてください。
洲濵氏
相続を選択するメリットは、相続税がかからないようにうまく対策を打てるところです。そのためには、誰が何を引き継ぐかということについて、あらかじめ話し合い、合意を取っておく必要があります。
この話し合いができていない段階で、遺言もなく突然亡くなってしまった場合、残された人が揉める可能性があるというのは、相続のデメリットですね。
相続権のある人全員で話し合って合意を形成し、遺産分割協議書というものを作成して、提出しなければなりません。
一方、生前贈与は、生きているうちに資産を分け与えることです。
1年間に110万円以内の贈与であれば、税金はかかりませんから、存命中に少しずつ贈与して資産を減らしていけば、相続税を減らすことができます。
相続税が心配なほど資産が多く、かつ親子間で生前贈与ができるくらいの信頼関係のある場合は、メリットはあるといえるでしょう。
デメリットもあります。
手間がかかる点です。
贈与する際は贈与する金額や相手を決めて、贈与契約書を作成しなければなりません。
何回かに分けて贈与をする場合は、結構な手間がかかりますね。
しかも、贈与してまもなく相続が始まってしまって、結局、相続税がかかってしまった、(つまり贈与してもしなくても同じ結果だった)というケースもあります。
■個人資産の相続に加えて、事業承継についても考慮が必要
──開業医の相続問題は、どのようなケースが多いと思われますか?
洲濵氏
開業医の相続問題とは、言い方を変えると、『事業承継』といわれる問題です。
これには二つの典型的なケースがあります。
まずひとつは、事業を相続する人がいないというケースです。
なんとかして後継者を探さなければなりません。どうしても見つからなければ、事業を売却するという選択肢もありますが、やはりもったいないですよね。
もうひとつは、複数の相続人がいるケースです。
例えば、2人の息子のいる開業医がいたとして、兄弟のうち、どちらが事業を引き継ぐかで揉めてしまうことはかなり多いですね。
病院という事業そのものと、土地や建物などの病院としての資産は切っても切れない関係にありますから、きれいにふたつに分けるなどということはなかなかできません。
──事業の承継と個人資産の相続、開業医の負担が大きくなるのはどちらでしょうか?
洲濵氏
個人資産の相続のほうがまだ簡単です。
相続税は、前もっていろいろな対策を打つことができますし、その中でも王道の対策パターンというものがいくつかあります。
考える必要があるのは「どのプランでいくか」ということぐらいです。
これに比べて、事業承継は非常に大変です。
事業には、ヒト・モノ・カネ、すべてが含まれています。
人を雇い、診療所を構え、治療機器を揃え、資金繰りをしてと、考慮すべき要素が相続とは比べものになりません。
これではパターン化などできませんから、これだという答えもなかなか出ません。
事業をしっかりやること自体も大変ですが、赤字になってしまうと事業承継はさらに大変で、引き継いだ人が苦労するとか、事業を売却したり廃業することになったりします。
■悩ましい開業医の相続問題、迷った時は専門家に相談を
──相続について考えていらっしゃる開業医の方にアドバイスをお願いします。
洲濵氏
開業医の方は、まずは事業を軌道に乗せて、それをしっかりと維持していかなければなりません。
そこをクリアした上で、さらに誰にどう事業を引き継いでいくかを考えていく必要もあります。
医師としての本業もある一方で、経営者として常に未来について考えていかなければなりません。
ぜひ医師としての本業に集中していただいて、事業承継や資産相続などに関する問題は専門家にご相談されるとよいでしょう。
とはいえ、さまざまな要素が複雑に絡み合っていて、誰に相談すればいいかわからないという声をよく聞きます。
銀行でもないし、税理士でもないし、ファイナンシャルプランナーでもないし、なかなかこれだという人がいませんよね。
私自身、まさにこういった問題に力になりたいと思ってキャリアを積んできました。
金融業界に身を置いたり、不動産業界に身を置いたり、ファイナンシャルプランナーをしたりしているのは、事業だけでなく、税金や不動産についても考慮する必要がある時に力になりたいという思いがあったからです。
頼りになる、信頼のおけるアドバイザーは必ずいます。本業に集中できるよう、こういった複雑な話については早めに相談をするのがよろしいかなと思います。
――ありがとうございました。
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