本記事は過去に勤務医ドットコムが開催したセミナーの内容を記事にしています。
西川航志氏(にしかわ・こうじ)
1984年生まれ。三菱UFJ信託銀行で、富裕層のプライベートバンカーとして資産管理、相続、不動産などのトータルコンサルティングを経験。その後外資系の保険会社を経て独立し、コンサルティング会社を設立。これまでの信用実績により、個人融資だけで10億円の融資を受けて資産形成を実践し、100戸以上の収益不動産、自宅マンション、リゾート民泊物件、太陽光設備、コインランドリー施設などを保有してオーナー経営を行う。自身の実体験を生かしてそのリアルを伝えながら、融資アレンジや財務コンサルティングを行う。
私のお客様には勤務医の方がかなりいらっしゃいますが、皆様にじかにお聞きしたところ、現実はなかなか厳しいようです。
所属の病院だけでなく、アルバイトもかけもちして、寝る間を惜しんで長時間働いていたり、仕事が忙しくて家族との時間を作ることができなかったり……。
さらに、「お医者さんの子供はやはり将来お医者さんに」という傾向もあり、教育費はどうしてもかかりますし、住む環境でも、物価が高い地域に生活する方が多く、支出は多くなります。
さらに、所得が高く社会的信用があるため、社会保障、福利厚生等の補助制度がほとんど使えません。
時間も制度補助もなく、そして支出が異常に多く、結局手元にお金が残らない――。本記事では、勤務医の方々のそんな厳しい実情を打破する解決策についてお話ししていきましょう。
○勤務医の4つの理想像
勤務医の方々の現状を改善していくために、まずは「勤務医の理想」をピックアップしてみましょう。
①余裕を持った仕事ぶり
睡眠時間を削って働くのではなく、ちゃんと生活感のある、ゆとりを持った仕事をすることが理想です。
休みをしっかり取って、家族との時間を作りたいものですね。
②支出が抑えられて手取りが多くなる高キャッシュフローの実現
「稼いでいるのになぜかお金がない」という声をよく聞きます。
これは、高いキャッシュフローを作れていないということです。
つまり、知らないうちにお金が貯まっているというようなキャッシュフローを作らなければなりません。
③高い社会的信用で融資を受けて「規模の運用」をする
記事「医師だからこそできる!「資産管理会社」を使った節税対策とは? 前編」でもご説明したことですが、手元のキャッシュで行う金融投資などではなく、もっと大きな規模での運用をしていくことが必要です。
④社会保障・福利厚生等の制度を活用して無駄な支出をなくす
制度を上手に活用すれば、無駄なお金は払わなくてすみます。
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つまり、時間・余裕・高いキャッシュフローを創って、コストカットにより無駄を削減すること。
要は入ってくるお金を増やして支出を減らすと、手元にお金が残るということです。
そして、なによりもお金以上に時間的余裕を得ることが求められています。
○「勤務医の財務改善ルーティン」とは?
勤務医の皆さんの厳しい現実を改善し、先に述べたような「理想形」にもっていくために私がコンサルティングをするとき、必ずやることがあります。
それが「勤務医の財務改善ルーティン」です。
簡単にいえば、まずキャッシュリッチなドクターのキャッシュを資産化し、そして資産化したら個人を事業主化し、事業主化したら今度は法人設立までもっていき、さらに個人の所得を法人にもっていく所得移転をする、というルーティンです。
その具体的な3つのステップを解説しましょう。
STEP1 キャッシュリッチなドクターのキャッシュを資産化する
勤務医の皆さんは、最初は研修医としてハードに働いて勉強して、各病院などに配属されて収入が上がってきます。
本業で売り上げを上げると、税金をしっかり払うので社会的信用を確保できますし、お金に余裕ができるキャッシュリッチな状況になります。
支出が多くても払えてしまうのでなんとかやっていけますが、実はこれには、けっこうなリスクがあります。
税金をかける国の側からすると、キャッシュはまさに「見えているもの」です。これを「見えなくする」というと語弊がありますが、これが「資産化」です。
現金で1000万持っていたら、突然泥棒にあって一気になくなってしまいますが、不動産で名義として持っておくとそういうことはありません。
このようなリスクを回避するという意味で、キャッシュを資産化していく必要があるのです。
STEP2 資産化したら個人を事業主化する
サラリーマンだと源泉徴収で決まった税金をもっていかれてしまいますが、個人事業主だと経費計上等が認められています。
そのため、個人事業主のほうがいろいろな節税対策が可能となるのです。
STEP3 法人を設立する
資産を拡大したら、個人では限界がきます。
そこで資産管理会社を設立して、ご自身の資産を管理するのです。
課税されている個人所得を落として法人の売り上げにすれば、法人にはさまざまな優遇制度がありますので、税対策を行いやすいのです。
法人のほうで実績をしっかりと作ると、法人融資を受けられて、その融資で規模の運用ができます。
そして個人の所得を法人にもっていく所得移転をするのです。
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この「財務改善ルーティン」がどんどん回り続けると、資産が増えていく流れをつくることができるのです。
○「税対策」とは、何をすればいいのか?
そもそも税対策とは何をすればいいのか、あらためて考えてみましょう。
所得に対しての税率の速算表では、5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%と、ややいびつな上がり方をしています。
23%からいきなり33%に上がりますが、この10%の壁というのが大きく変わってくるところです。
つまり、33%以上の人が23%以下になるように所得を落としていくことが、税対策ということになります。所得でいうと、900万未満に持っていくことができたら、税対策は成功といえるでしょう。
これを具体的な収入に合わせて試算してみましょう。
2,000万円の給与所得がある人でしたら、給与所得控除があって、所得は1,800万円。さらにここに所得控除、社会保険控除、基礎控除200万円弱を引いて、課税されるのは33%になります。
この33%で課税をされると、所得税と住民税、合計で5,379,100円、何も対策をしない場合はこのぐらいの数字になりますが、税対策をすると、税額の差は4,189,000円です。
何もしなければ、この418万円は国に納めることになり、対策をしたらこの418万円が手元に残るということになります。
もちろん、収入が大きければ大きいほどこの効果は高くなってきます。
○個人の税対策の2つの手法・まとめ
税対策の手法はいろいろありますが、まとめると次の2つになります。
①控除の増加
確定申告の際に目にする、社会保険料控除・保険料控除・小規模企業共済控除など、国が定める控除枠を使うと、売り上げから引かれて非課税対象額になります。
この控除を増やせばいいのです。
②所得削減
本業以外の事業を興してマイナスを作って、総合課税を活用して課税所得を下げる方法です。
たとえば不動産を買うことで、諸経費がかかり、減価償却費や借入金利子等のいろいろな経費計上ができます。
不動産事業でマイナスを作って、本業の給与所得と合算して総合課税でかかってくる課税所得を落とすことができるのです。
○個人の税対策には限界がある
ここまでお話ししてきたのは、あくまで個人税対策の話であり、控除の増加と所得削減をすればそれなりに対策はできますが、いずれ限界がきます。
控除の増加でいえば、社会保険料や基礎控除などで200万くらいの控除額あるものです。そこからいろいろな控除を積み上げても、300〜400万になるくらいが限界でしょう。
所得削減でも、これはかなり効果が大きいですが、不動産を使うこと以外、キャッシュを使った対策がほとんどです。
毎年対策をしても、それは税金の繰り延べにすぎず、無税になるわけではありません。この繰り延べたものにまた対策をしなければならず、キャッシュに限界がきてしまうのです。
そこで、資産管理法人設立による対策が必要となります。
個人での税対策ももちろん必要ですが、2~3年やってきてキャッシュフローがよくなってきたら、資産管理法人を使った対策に移行していく流れが不可欠なのです。
「法人設立なんて意味があるのか?」と思う方もいるかもしれませんが、記事「医師だからこそできる!「資産管理会社」を使った節税対策とは? 後編」では、そのメリットとデメリットを解説していきましょう。
▼セミナー登壇者
西川 航志
株式会社アンビション代表取締役。
アンビションはあなたのマネーフローを構築し、資産を育て、⽣活を豊かにするお⼿伝いをいたします。