前回の「勤務医の弱点「円安」と、その対策」に続いて、今回はインフレのお話です。
勤務医がインフレに弱い理由とは
勤務医はインフレに弱い、なぜならば日本の医療費は国民皆保険だからです。
日本の医療費は、勤務医の給料の源泉です。日本の医療費が病院の収益となり、病院の収益が勤務医の給料となっているわけですから、当たり前ですね。
仮に日本でインフレが起こったとします。金回りが良く、物価も上がり、事業主の収益はどんどん上がって、サラリーマンの給料も上がっていきます。
一方で、勤務医はどうでしょうか?
日本の医療費は、厚生労働省が保険点数から料金を決めています。多少は物価の上昇に合わせて、医療費も調整してくれるでしょうが、わざわざ「医療費を上げる」なんて事を、物価に合わせて国が行う事は、考えにくいでしょう。それよりも「対物価指数の医療費、減少に転じる」など、医療費が割安になった事を大々的に報じるのでは無いでしょうか?
そうなってくるとどうなるか?病院の収益が上がらず、上がってもちょっとだけ増えて、物価や消耗品の値上がり分を吸収してしまって終わり、程度に止まるでしょう。勤務医に配分する給料は、当然増えません。ただインフレが起こっていますから、物価が上がります。勤務医は、国内でも相対的にデフレ下の時と比べると、購買力を失うはずです。
相対的にはやや貧しい存在になってしまう事でしょう。
一方で、勤務医の中でも、美容医療に携わっている方は、別です。
こちらはまだ開かれた自由市場で戦う事になるので、インフレが起こった際の価格転嫁が容易で、それが給料にすぐ反映されるはずなので、インフレに強く、逆にデフレに弱いという事ができます。
勤務医の弱点、インフレと円安がダブルでやってきたらどうすれば良い?
以上のことから、勤務医にとってインフレと円安は、ともに非常に危険で、よろしくない事なのがお分かりいただけたかと思います。
しかしながら、今現実にそれが起ころうとしています。未来はわかりませんが、そのシナリオも十分あり得ます。
一体でどうしたら良いのでしょうか?
円安リスクは、為替でヘッジせよ
まず円安リスクですが、それは為替で逆にヘッジするしかありません。
具体的には、円を売ってドルやユーロで保有しておけば、問題ありません。円安になれば、対円の資産は為替差益分だけ上昇していきます。
ただし、日本での生活をする上で日本円をゼロにするのは、正直なかなか難しいと思います。
そこで便利なのが、レバレッジです。
例えば現金が2000万円あったとします。これを日本円として使える状態にしておいたまま、為替リスクをヘッジするにはどうしたら良いのでしょうか?
簡単です。例えば400万円と1600万円に、分けるとします。400万円を証券口座に入れて、5倍のレバレッジをかけて、2000万円の米ドルのポジションを確保します。
そうすると、2000万円分の米ドルを保有しているポジションを作ることができて、日本円の2000万円も残存します。証拠金の400万円は動かせないので、事実上は1600万円の日本円が使える状態になります。
仮にドル高円安になれば、レバレッジ分の為替利益があり、日本円の為替差損があります。ドル安円高になれば、レバレッジ分の為替差損があり、日本円の為替利益が出ます。これらの金額はバランスしているので、差益はプラスマイナスゼロになります。
これで、対外購買力は維持されることになります。
インフレは現金を捨てて資産に組み替えてヘッジせよ
インフレをヘッジするのは、割と簡単です。現金を持たず、資産に変えてしまえば良いです。具体的には
・不動産
・株
・金
・ロレックス
などですね。インフレではこれらの対通貨価格が上昇していくので、現金のポジションは悪です。
ただし、これで失敗するパターンが2通りあります。
1つは、キャッシュの枯渇。資産に一気に変えすぎて、手元のキャッシュが枯渇してしまい、何かしらの理由でキャッシュが必要な時に足りなくて、焦げ付いてしまうパターンです。
ある程度手元の現金は保存した上で、バランスを取るようにしましょう。
もう1つは、借金の増大。資産の値上がりに目が眩んで、手元のお金を資産に変えるだけじゃ飽き足らず、銀行からお金を借りて資産に変えるパターンです。これもインフレ初期では儲かりますが、それなりの時期になってくると後から金利も上がってきて、金利が上がるとキャッシュが苦しくなりがちです。
なるべく借金はせず、しても余裕のある金額の範囲に留めた状態で、資産を購入することをオススメします。
特に、株や不動産は抵抗があるという方でも、金やロレックスはなぜか抵抗がない、というお医者さんは結構いる印象です(笑)おそらく、価値が直感的に算定しやすい、不動産や株のように個別の差があまりないということだと思うのですが、なかなか不思議です(笑)
いかがでしたでしょうか?
特に、為替の話は初めて耳にしたという方も多いのではないでしょうか?
実際、多くの日本人は日本円を疑うという事をしません。というかほとんどは信じきっています。
僕は、国の通貨とは国そのものの信用力であって、決して絶対ではないと思っています。
あくまでそういう流動的な価値の、具現化した姿の1つが日本円に過ぎない、という認識が持てれば、また円安とインフレに対するイメージも、少し変わって、今回の話を捉えやすくなるかもしれません。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。