医師という生き物は、いわゆるエリートです。
近年の医学部人気もあってか、その傾向はますます強まっていると感じております。
僕自身は、地方出身で高校時代に塾なども特別通っておりませんでしたが、大学に入るとそのエリート具合に、驚愕しました。
そして同時に、それは弱点だとも思いました。
今回はそんな、偏差値エリートの医師ならではの、落とし穴についてです。
医師が知るべき人生の落とし穴1、人生は敵より味方の方が多い
医師はいわゆる偏差値エリートで、学問における競争を勝ち抜いて生きてきた人種です。それゆえ競争となると燃えてしまう性分の方が多く、逆に競争に勝てないと途端にやる気と自信を無くしてしまう、そんな弱い一面も持ち合わせているように思います。
しかしながら、人生はそもそも「明確な敵」なんてものは少ないのです。なぜならば、各々が協力してより良く生きていこうとして、生活をしているのが人間だからです。
競争に勝つために敵を探し、競争をふっかけて勝ち、また競争相手を探して…という人生は、現実的ではありません。敵はそんな簡単にみつからず、むしろ味方になってくれる人の方が、多いのですから。
人生を「勝負」として捉えている、その思考そのものが狭く、誤りである事に気が付かないのです。
医師が知るべき人生の落とし穴2、他人との比較には意味がない
人生の価値を決めるのは客観的な数字ではありません。人生の主人公である自分がどれくらい、自分に誇りを持って、日々満足して過ごしているか。ここにかかっています。
しかしながら偏差値エリートの医師は、どうしても他人と比較してしまうのです。自分の価値は競争に勝つ事、その証として学歴を手に入れ、明確に他人との比較を得る事だと思っているからです。
人生の価値を客観的な学歴、資産などで判定する事は不可能です。社会に出てその事に気がついた時、医師は今までの価値観を否定された気になって、逆に自分の手に入れたものを誇示し始めます。他人との比較を強めます。
こうして周囲の人間から嫌われ、孤独に陥ってしまうのは、不幸な事です。
医師が知るべき人生の落とし穴3、物事に勝ち負けがあるとは限らない
競争と勝ち負けが好きな、エリートである医師は、白黒ハッキリさせたがる傾向があります。しかし人間社会の物事はそんな単純ではありません。白に近いグレーだったり、限りなく黒に近いグレーだったり、色々な物事がアナログで存在し続けています。
この事実を受け入れきれず、無理矢理にでも白黒をはっきりとつけようとしたりして、要らぬ軋轢を生み出してしまうのも、エリートである医師の傾向として強く存在しているように思えます。
人生で重要なのは仕事で、仕事で重要なのは人間関係です。人間観系に軋轢を生み出し、仕事をつまらなくし、人生をつまらくしてしまう医師が多いように思います。
物事には勝ち負け、白黒がはっきりしない領域もあるという事を受け入れなければなりません。
医師が知るべき人生の落とし穴4、努力の及ばない領域がある
仮に勝負がつくような場面でも、永遠に勝ち続ける事は不可能です。今まで人生でひたすら勝ち続けてきた医師は、自分が負けるという場面を受け入れられない時があるようです。
しかし人生において、勝ち負けの揺らぎがある中で、負けた時に学びを得て、さらに次のステップに進む。そうしてレベルアップしていく事の方が、重要なのではないでしょうか?
ポケモンで言うならば、マサラタウンから出ずにレベル3のポッポに勝ち続けてレベル20のままでいるよりも、マサラタウンから出て勝ったり負けたりしながら試行錯誤をし、レベルを50まで上げ、最終的に四天王を倒す。ここまで到達する事が、人生においても重要だと思いませんか。
自分の努力が及ばない領域を認めて、糧にして前に進んでいく。そこに人間としての、人生の価値があると認識することが重要です。
医師が知るべき人生の落とし穴5、人生は1本道ではない
偏差値エリートである医師は、医学部に入るまで人生を1本道だと思っている人が多いように思いました。
勉強は塾の先生が言う通り。進路は親の言う通り。あらゆる大人の言う事を聞いていれば、人生は勝手に開ける。子供の人生を安全に舗装したい親の愛情の一種かもしれませんが、これでは変化に満ちた現代社会を生き抜くための「何か」を、子供時代に失ってしまいます。
人生とは当然1本道ではありません。道が複数延びているだけではなく、時代や環境によっても選択肢は変わり続け、道は変形し続けます。このような不確実性を孕んだ選択に、偏差値エリートである医師はあまりにも慣れていません。
医学部を出て、いざ社会に飛び込んでみた時、初めて気が付く医師が多いように思います。自分はこれがしたかったのだっけ?これでいいんだっけ?わからなくなって、また誰かに意見を求めます。人生を決めるのは自分です。リスクも不確実性も全て自分が背負って、自分で決めるのです。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。