節税対策としてプライベートカンパニーを設立する勤務医がいます。でも、「節税ができる」というメリットだけで、デメリットはないのでしょうか? そこで今回は、勤務医として働いている医師がプライベートカンパニーを持つメリット・デメリットについて解説します。
プライベートカンパニーとは
プライベートカンパニーとは「会社」のことです。病院に勤務するサラリーマンである勤務医がプライベートカンパニーを設立するのは、設立するだけのメリットが多数あるからです。
ただ、設立する際にはメリットだけに目を向けるのではなく、デメリットもあわせて知っておく必要があります。具体的なメリットとデメリットを書き出してみましょう。
勤務医がプライベートカンパニーを持つメリットとは
①節税ができる
勤務医として働く医師であっても、勤務先の病院以外から副収入を得ているケースがあります。他の病院で非常勤勤務、講演、書籍や雑誌の執筆、テレビ出演、教材の資料作成など、副業にはさまざまなものがあります。
これを全て個人の収入にしてしまうと、支払う税金が高くなってしまいます。具体的な数字を示すと、個人の所得税の税率は、課税所得金額が900万円~1,800万円以下で33%、1,800万円~4,000万円以下で40%。さらに住民税も払わなければなりません。一方、会社(法人)で売上が年800万円以上の法人税の税率は23.2%で地方税を合わせて29.74%です。
個人よりも法人のほうが税率が低いことは明らかで、さらに日本では法人税を引き下げる動きが見られています。つまり、所得が高い医師は個人よりも法人にお金を入れる方が税負担が軽くなるのです。ゆえに、プライベートカンパニーは「2つ目の財布をもつ」という表現をされることもあります。
②経費を計上できる
立ち上げたプライベートカンパニーでセミナーの講演や雑誌の執筆の仕事を受けた場合、それらは会社の事業と関連する仕事になります。そうなると、仕事に必要になるモノ、例えばパソコンの購入費用、タクシー代金、飲食代金などは経費として計上することができます。
経費を計上することができると、会社が支払う法人税が少なくなります。法人税は簡略的にいえば、売上から経費を差し引いた利益に法人税率を掛けたものなので、正当に経費を計上できればできるほど、法人税は安くなるのです。
ただ、決算が赤字の場合(売上よりも経費が多い)でも、法人住民税として最低7万円は支払う必要があります。
勤務医がプライベートカンパニーを持つデメリットとは
①運用コストがかかる
会社を設立する場合は、実態は名ばかりのプライベートカンパニーであっても、法務局で登記手続きを行う必要があります。登記に必要な合計費用は、株式会社の場合は25~30万円、合同会社の場合は10~15万程度がかかります。
事務所を家と別に借りる場合は、家賃や水道光熱費が発生することになります。もちろん、家を会社住所として登記することも可能ですが、その場合は家が登記可能な契約内容化を事前に確認するようにしましょう。登記不可の場合は後々トラブルになりますし、登記をやり直すとなると、またお金がかかります。
また、会社を運営するということは決算をして税金を支払うこととイコールなので、税理士と契約する必要があります。税理士の顧問料は税理士によってさまざまですが、数十万円はかかると考えてよいでしょう。
②情報が公開される
プライベートカンパニーであっても、登記した法人の情報は公開されます。法務局に行けば照会が可能なので、自宅を会社住所にして登記している場合は、自宅住所が公開されてしまうということを意味します。
また、営業の電話やDMが送られてくることもあるので、そのやり取りを煩わしいと感じるかもしれません。
具体的なプライベートカンパニーの運用方法
具体例として、プライベートカンパニーを設立した医師のAさんの話をしましょう。Aさんはセミナー講演や雑誌執筆の副業を多く抱えていたため、会社を設立し、副業はプライベートカンパニーで受けることにしました。
その結果、仕事に必要なパソコン購入代金(15万円)、携帯代金(年間24万円)、医学書などの購入代金(年間20万円)などを経費として計上し、節税に成功しています。
さらに、奥さんを役員に入れて事務作業をしてもらい、給与所得控除内の給料を支払っています。給与所得控除とは扶養の範囲内で給料を無税で受け取れる制度なので、奥さんには無税で給料が入ります。
さらに、年間最大84万円まで積み立てた額が全額経費になる「小規模企業共済」に入り、年間約36万円の節税にも成功しています。この共済はiDecoと違い、途中解約が可能というところもポイントです。
まとめ
「プライベートカンパニー」という名前の響きはかっこいいものですが、そこにはメリットだけでなく、デメリットが存在します。プライベートカンパニーを持つことで得られるメリット・デメリットについてしっかりと把握し、向き不向きを吟味した上でプライベートカンパニーを設立しましょう。
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