「医者になれば、とりあえずお金には困らないでしょ」
と思っている医学生の方は、多いと思います。かくいう僕も、昔はそうでした。
しかしながら、実際に医師になって色々と経験し、人生のステージが進むにつれて、実感した事…それは
医師になったからといって、必ずしも「お金に困らない」という状況を作り出せるわけではない、という事です。
一体どういう事なのか?どのような医者が「お金に困る」事になってしまうのか?解説していきたいと思います。
医師の給料は税金でかなり取られる
細かい事は省きますが、医師の給料は高く、税金や社会保険料でかなりを取られてしまいます。
仮に年収3000万円くらい稼いでも、何もしなければ、場合によっては1800万円くらいしか手元に残りません。60%しか残らないわけです。
仮に土日を潰して30万円稼いだとしても、実際に手元に残るのは18万円です。そうなってくると、このお金を使ってしまうのが、もったいないような気がしてきてしまうんですよね。
この思考そのものも、医師のお金にまつわる精神性を、より貧しくしていると思います。
医師は多忙、パートナーがガッツリ働くのは難しい
医師が多忙だという事は、おそらく誰もが知っている事実だと思います。しかしその裏に隠された
「パートナーがガッツリ働いて家を開ける事は不可能に近い」
という事実まで、認識している人は実はあまりいません。
これは実は、税制面でもかなり不利なのです。
極端な例ですが
・ 家庭A:医師(年収2000万円)、専業主婦(年収0円)
・ 家庭B:医師(年収1500万円)、OL(年収500万円)
であれば、合計年収は一緒のはずですが、家庭Aに比べてBの方が、手元に残るお金は多いです。
所得が分散して平均税率が下がるからです。
しかしながら、実際には家庭Bのような形式を築けている医師は、稀です。少なくとも奥さんの実家が近くにあって、ご両親が健在で、子育てに協力的という条件を満たす必要がありますが、これはかなりレアなのです。
医師が多忙すぎるゆえに、パートナーがあまり働けず、キャリアを捨てなければならない。家庭のためにキャリアを捨てるという不満をパートナーが抱える事になり、その上で家庭Bのような「自分は自分でキャリアを捨てていない」人と比べても、手残りのお金が少ない。
この状況に、不満を感じる場合も結構見受けられます。問題はお金の問題だけに、止まらないというわけですね。
医師家庭は子供の教育にお金をかける傾向にある
巨大な出費の1つに、子供の教育費があります。
我が子に少しでも良い思いをさせてあげたい、そういう親心は誰もがもっているはず。しかしながら、医師家庭にはそれとはまた別の力が働くのです。
医師家庭の場合、パートナーの立場に立ってみれば答えはわかります。
自分の旦那は医師で、成績が昔から優秀。それを旦那の親である姑も知っているわけで、当然のように孫にも同様の優秀さを期待するわけです。
直接的には言わないかもしれませんが、無言の圧力がかかるでしょう。
そうすると、パートナーの心理としては
「自分と結婚したせいで、子供の勉強ができないと思われたくない」
と思いますから、教育費をバンバンかけます。
あの手この手で、なんとか勉強をできるようにさせて、自分のメンツを保ちたい。自分のせいで子供の優秀さが削られたと思われるのは、耐えられない。
そういう心理が、自分の頭脳に自信のない人ほど、働きます。
同様の心配を、医師の親もする可能性があって、もう教育費をドバドバ注ぎます。誰も止める人がいません。注げば注ぐほど結果が出てくると思い込んで、ガンガンなんでもやらせます。
結果、教育費に知らない間に莫大なお金を注ぎ込んで、貯金はいつもギリギリ。なんて医師が少なくありません。
この悩みは医師ならではだと思いますが、ここにもお金の問題が隠れていたのです。
医師はつい地位財にお金を使いがち
これは昨今、あまり見受けられませんが、それでもやはり地位財にお金を使ってしまう医師は必ずいます。
具体的には
・高級時計
・高級車
・高級マンション
・別荘
・その他ブランド品
などです。
高い税金を支払った後のお金で、これらの地位財にお金を使ってしまうと、手元に残るお金は本当にわずか。
地位財にとらわれている間は、資産構築の可能性はグッと下がってしまいます。
医師になればお金は困らない、は幻想
税金、パートナーの仕事、教育費、地位財…医師が落ちてしまうお金の落とし穴は、たくさんあります。
これらの恐ろしいところは、他を避けられていても、どれか1つでもハマってしまうとお金に困る可能性が出てくるというところです。
全てを回避する必要があります。
これらの諸問題に、全て自力で対応して、クリアする自信が、この記事を読んでいる医学生の皆さんにはおありでしょうか?
難しいですよね。
そこでやはり必要なのは、勉強です。まずは「医師になればお金は困らない」という幻想を捨てて、素直に「医師になってもお金に困る可能性があるぞ」と思いながら、勉強する。必要な情報を自ら取りに行く。
これが、医師になってからお金に困らないために、必要な事なのではないでしょうか。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。