診療科による医師の年収の違いが気になる方もいるかもしれませんが、必ずしも診療科だけで年収が決まるとは言えないようです。また長時間労働で多くの収入を得ている現実もあり、高収入ではあるものの疲弊している医師の姿がうかがえます。
今回の記事では診療科別の年収ランキングと、さらに高収入を得ている医師の勤務実態などをお伝えします。どのようにして高収入を目指せばよいのか、考えるきっかけにしてみてください。
目次
■診療科別年収ランキング
初めに独立行政法人労働政策研究・研修機構による「勤務医の就労実態と意識に関する調査」(2011年12月実施)での、診療科別年収ランキングを紹介します。
診療科 | 平均金額(万円) | |
1 | 脳神経外科 | 1,480.3 |
2 | 産科・婦人科 | 1,466.3 |
3 | 外科 | 1,374.2 |
4 | 麻酔科 | 1,335.2 |
5 | 整形外科 | 1,289.9 |
6 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267.2 |
7 | 内科 | 1,247.4 |
8 | 精神科 | 1,230.2 |
9 | 小児科 | 1,220.5 |
10 | 救急科 | 1,215.3 |
11 | その他 | 1,171.5 |
12 | 放射線科 | 1,103.3 |
13 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 1,078.7 |
最も平均年収が高いのは脳神経外科です。繊細かつ高度な技術が求められ、命にかかわる治療を行うため報酬が高いと考えられます。さらにくも膜下出血や脳内出血など、緊急対応が必要なケースもあります。このため時間外勤務や長時間労働が多く、結果的に高収入となる面がありそうです。
2位は産科・婦人科ですが、こちらも出産対応は24時間体制であり休診日も関係ありません。このため脳神経外科と同様に激務の結果として高収入になっていると考えられます。また全国的な産科・婦人科の減少により、対応できる病院に患者が集中している可能性もあります。
■勤務先経営形態別の収入ランキング
診療科以外にも勤務先の経営形態によって収入の違いが生まれています。上と同じ調査の結果を見ると、民間の医療法人や個人の施設では平均年収が1,400万円を超えますが、国立では平均年収が882.4万円と大きな開きがあります。
ただし経営状態による給与削減やリストラなどがあり得る民間と比べ、独立行政法人国立病院機構として厚生労働省の所轄にある国立病院の医師は、安定して勤務を続けられるというメリットがあります。
地方自治体などが運営する公立病院は、1,347.1万円と比較的高い平均年収となっています。国立病院に比べ高額ですが、自治体の財政状況に左右されるため安定感は欠けるかもしれません。
●勤務先経営形態別 収入ランキング
勤務施設の経営形態 | 平均年収(万円) | |
1 | 医療法人 | 1,443.8 |
2 | 個人 | 1,414.0 |
3 | その他の法人 | 1,406.4 |
4 | 公的 | 1,353.4 |
5 | 公立 | 1,347.1 |
6 | 社会保険関係団体 | 1,280.7 |
7 | 国立 | 882.4 |
8 | 学校法人 | 739.0 |
■政令指定都市・東京23区以外が高収入
一見すると人口の多い都内や都市部の医療機関に勤務すれば、多くの収入が得られるように思えます。しかし地域別の平均年収を見ると、必ずしも都内や都市部の医療機関が高収入とは限らないことがわかります。
●地域による平均年収の違い
平均年収(万円) | |
政令指定都市・東京23区 | 1,137.3 |
上記以外 | 1,314.7 |
平均年収(万円) | |
過疎地域 | 1,428.2 |
上記以外 | 1,247.5 |
過疎地域の勤務医の平均年収は、それ以外の地域に勤める医師より高くなっています。地方や過疎地域の医療機関では医師が不足しており、1人が担う職務が多くなっている可能性があります。このため勤務時間が長期化し高収入になっていると考えられます。
■長時間労働による高収入では満たされるか
上述の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、すべての診療科を含めた医師の労働時間は、主な勤務先における平均で週当たり46.6時間にのぼります。また診療科別の週当たりの平均労働時間は以下のとおりですが、上位は50時間を超える長時間労働になっています。
国の定める1週間の労働時間は40時間であり、協定を結べばそれ以上も可能です。しかし長時間労働は心身への負担が大きく、決して推奨されるものではありません。
●診療科別 週当たりの平均労働時間
診療科 | 週当たりの平均労働時間(時間) | |
1 | 救急科 | 54.0 |
2 | 脳神経外科 | 53.3 |
3 | 外科 | 52.5 |
4 | 小児科 | 52.0 |
5 | 産科・婦人科 | 49.4 |
5 | 呼吸器科・消化器科・循環器科 | 49.4 |
7 | 整形外科 | 46.8 |
8 | 放射線科 | 46.1 |
9 | 麻酔科 | 45.8 |
10 | 眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科 | 44.3 |
11 | 内科 | 43.4 |
12 | 精神科 | 38.4 |
13 | その他 | 46.0 |
この調査では勤務で感じる疲労感、睡眠不足、健康不安についても質問しており、医師の認識は以下のようになっています。
長時間労働によって高収入を得ても、健康面で大きな代償を払う可能性があります。また家族や友人と過ごす時間もない生活は、本当に満たされた働き方なのか疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
●疲労感、睡眠不足感、健康不安に対する認識
感じる | 感じない | |
疲労感 | 60.3% | 15.8% |
睡眠不足感 | 45.5% | 25.1% |
健康不安 | 49.2% | 22.3% |
※「感じる」は、「非常に感じる」「まあ感じる」の合計
「感じない」は、「ほとんど感じない」「あまり感じない」の合計
「どちらとも言えない」は除いて集計
■40代で1,000万円超えの現実
負担の大きい長時間労働で高収入を得られるとしても、それはすぐに果たせるわけではないようです。仮に1,000万円超を高収入の1つの目安とした場合、「勤務医の就労実態と意識に関する調査」からわかるのは、それを実現できる年齢は40歳代以降ということです。
●年齢から見た主たる勤務先の年収
年齢別 | 平均年収(万円) |
20歳代 | 599.0 |
30歳代 | 967.8 |
40歳代 | 1326.6 |
50歳代 | 1527.8 |
60歳以上 | 1486.6 |
20歳代や30歳代でも、医師としての重責に耐えながら激務を日々こなさなければなりません。しかし給与だけではそれに見合った収入を得ることは難しいと言えそうです。
また、40歳代を迎え高収入となっても、お子さんがいれば教育費のかかる時期になります。将来同じ医師の道に進ませるなら、普段の教育費のほかにしっかりと資金を蓄える必要があります。世間からは高収入と見られる医師ですが、実際に納得できる収入となるには時間がかかると言えるでしょう。
■資産運用でゆとりと収入増を両立
診療科によって収入の違いはありますが、長時間労働の結果で高年収になっているケースも多いようです。もし激務で体調を崩すのは避けたい、自分や家族のための時間を持ちたいと考えるなら、本業以外の資産形成を考えてみてはいかがでしょうか。
たとえば不動産投資なら、物件の購入後は管理会社に運営を任せられるため面倒な手間はかかりません。また株式投資と違い融資を利用して始められるため、自己資金は少ないが早めに将来の備えをしておきたい方にもおすすめです。
心身に負担をかけず、経済的にゆとりのある医師生活を送る方法としてぜひ検討してみてください。