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    知っておきたい、開業医の確定申告と節税対策 | 勤務医ドットコム

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    知っておきたい、開業医の確定申告と節税対策

    tokyoh@dmin2017

    勤務医で経験を積んだのちに晴れてクリニックを開業する医師は多いでしょう。そのとき気になるのが開業後の確定申告です。開業医と勤務医の確定申告にはどのような違いがあるのでしょうか。こんかいは、計上できる必要経費など開業医の確定申告の方法と所得控除を利用した節税方法について解説します。

    同じ医師の確定申告でも開業医と勤務医では対応が異なります。勤務医のときの所得区分は「給与所得」です。給与所得は、給与収入から給与所得控除を差し引いて計算されます。算出された課税給与所得から所得税などの税額が計算され税金を源泉徴収された給与が支払われる仕組みです。この一連の計算は、勤務していた病院が行ってくれるので勤務医は基本的に確定申告の必要はありません。ただし、給与の年間収入金額2,000万円超の人は確定申告が必要ですので注意してください。

    しかし勤務医を経てクリニックを開業した後は、個人事業主に変わります。個人事業主の所得区分は「事業所得」です。事業所得から控除額を差し引いて納付税額を求めます。勤務医のときのような源泉徴収はないため、自分で確定申告しなくてはなりません。

    ■ 事業所得の「納付税額」計算方法

    では、事業所得から納付税額を計算する方法を確認しておきましょう。納付税額は、以下のような手順で計算します。

    1.事業収入から必要経費を差し引いて「事業所得」を算出
    2.事業所得から所得控除を差し引いて「課税所得」を算出
    3.課税所得に所得税率を掛けて「算出税額」を算出
    4.算出税額から税額控除を差し引いて「納付税額」を算出

    事業所得以外にも副収入がある場合は、事業所得と合わせて計上が必要です。所得は、事業所得のほかにも利子所得、配当所得、不動産所得など全部で10種類あります。開業医がほかの医院でアルバイト勤務した場合は「給与所得」となるため、注意しましょう。

    ■ 開業医にはどんな収入があるか

    開業医の収入は、「保険診療収入」「自由診療収入」「雑収入」の3つに区分されます。

    保険診療収入
    公的保険の「社会保険診療報酬」や「国民健康保険診療報酬」による収入です。

    自由診療収入
    いわゆる保険を適用できない診療収入のことです。人間ドックや予防接種、差額ベッド代、交通事故、保険証を持参しない場合の診療など多岐にわたります。地方自治体から支給される報酬や後期高齢者医療制度に定められた医療以外の保健事業も自由診療収入にあたります。

    雑収入
    雑収入とは、医療行為以外の収入のことです。患者紹介料や各種事務手数料、認定調査料、診断書の作成費などが該当します。また院内に設置した自動販売機設置手数料や健康食品、歯ブラシなど医療関連商品の売り上げも雑収入です。

    ■ 開業医の必要経費をチェックしよう

    開業医が計上できる必要経費についてもチェックしておきましょう。必要経費に関しては、「特例を利用して申告する」「実際にかかった実額で申告する」といった方法があります。開業医には、租税特別措置法によって「社会保険診療報酬の特例」が認められています。特例が適用されるのは、年間の社会保険診療報酬が5,000万円以下かつ自由診療収入を含めた医業収入が7,000万円以下の人です。

    該当する場合は、当該社会保険診療にかかる実際の経費にかかわらず当該社会保険診療報酬を4段階の階層に区分し各階層の金額に所定の割合を乗じた金額の合計額を社会保険診療にかかる経費とすることができます。概算経費率は、以下の速算表の通りです。

    社会保険診療報酬の金額 概算経費率
    2,500万円以下 72%
    2,500万円超3,000万円以下 70%+50万円
    3,000万円超4,000万円以下 62%+290万円
    4,000万円超5,000万円以下 57%+490万円

    例えば社会保険診療報酬が3,000万円で必要経費が1,500万円の開業医の場合、以下のような計算になります。

    ・特例を使わない場合の経費:3,000万円-1,500万円=1,500万円
    ・特例を使った場合の経費:3,000万円×70%+50万円=2,150万円

    この制度を利用せずに実額申告を選ぶ場合は、以下のような必要経費を収入から差し引いて計算します。

    原価
    院内処方による薬の仕入れ代や注射器、湿布など患者数に応じて計上できる経費です。請求書がなくてもカルテなどから使用数を割り出して計上することができます。

    人件費
    給料や社会保険料、福利厚生費など従業員のために使った経費です。架空の従業員がいないか税務署からチェックされる場合があるため、給与の支払いは銀行振り込みにしたほうが良いでしょう。

    設備・維持費
    店舗を借りて営業している場合の地代・家賃や機器のリース料、水道光熱費、減価償却費など設備を維持するための経費です。リース期間や減価償却資産の耐用年数を判断するため、購入したときの契約書や請求書を保存しておくようにします。

    その他の経費
    学会や研修に参加した場合の研修費や医療関係の雑誌・書籍代、税理士などへの報酬、銀行への支払い手数料、事務作業を行うための消耗品費など経費として計上できるものは多岐にわたります。そのため購入した(支払った)際の請求書・領収書は必ず保存しておきましょう。

    ■ 所得控除になるものはすべて利用して節税を

    事業収入から必要経費を引いても黒字になる場合は、所得控除できるものがあれば計上して少しでも節税することが大事です。例えば所得控除できるものには、以下の表のような項目があります。

    控除名 対象者 控除額
    社会保険料控除 国民健康保険料や国民年金保険料などの社会保険料を支払った人 1年間に支払った全額
    小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済や個人型拠出年金などに加入している人 1年間に支払った全額
    生命保険料控除 民間の保険会社に保険料を支払った人 1年間に支払った金額(最高12万円)
    地震保険料控除 民間の保険会社に保険料を支払った人 1年間に支払った金額(最高5万円)
    寡婦・寡夫控除 配偶者と離婚または死別して寡婦の人 27万円もしくは35万円
    ひとり親控除 要件を満たすひとり親 35万円
    勤労学生控除 勤労学生に該当する人 27万円
    障害者控除 本人や家族が障害者の認定を受けている人 1人につき27万円。(40万円もしくは75万円の場合あり)
    配偶者控除 控除対象配偶者がいる人 原則として38万円(70歳以上の配偶者は48万円)
    配偶者特別控除 配偶者の所得が38万円以上あり、配偶者控除が受けられない人 原則として38万円(配偶者の所得による)
    扶養控除 扶養親族がいる人 原則として38万円(扶養親族の年齢による)
    基礎控除 所得2,500万円以下の人 48万円(2,400万円超2,450円以下は32万円、2,450万円超2,500万円以下は16万円)
    雑損控除 震災などの災害や盗難などに遭った人 ・差引損失額-総所得金額等×10%                              ・差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円のうち金額が多いほう
    医療費控除 1年間に10万円以上医療費がかかった人※セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)あり 支払った医療費-10万円(総所得等が年間所得200万円未満の場合は総所得の5%を差し引く)
    寄附金控除 国や地方公共団体、認定NPO法人などに寄付した人 特定寄附金の額-2,000円(上限は(総所得金額等×40%)-2,000円)

    ※参考:個人事業主メモ「所得控除の一覧表【まとめ】個人事業主・会社員の所得控除」

    上表の控除額は基本的なケースで条件によって基準が異なる場合があります。詳細は国税庁ホームページでご確認ください。

    参考:国税庁「所得金額から差し引かれる金額(所得控除)」

    また所得控除とは別に事業収入から必要経費・所得控除を引いて計算された課税所得額から直接差し引ける以下のような「税額控除」という制度もあります。

    ・特定の団体に寄付した場合に控除される「寄附金特別控除」
    ・住宅ローンを組んで住宅を購入した場合に控除される「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」
    ・配当金を受け取った場合に控除される「配当控除」

    なお一定の団体への寄付は所得控除の「寄附金控除」と税額控除の「寄附金特別控除」のいずれかを選択することが可能です。一般的には、税額控除を選択したほうが節税効果は高いといわれています。ほかの節税対策として「青色申告」の届け出を行う方法があります。青色申告の主なメリットは以下の通りです。

    ・青色申告特別控除として適用要件を満たすと課税所得から最大65万円が控除される(※下記参照)
    ・赤字になった場合、3年間にわたり課税所得から差し引ける「損益通算」を利用できる
    ・妻など生計を一にする人が医院を手伝った場合に「青色専従者給与」として必要経費に算入できる

    ※2020(令和2)年分の所得税確定申告から青色申告特別控除の摘用要件が変更になります。(1)正規の簿記の原則で記帳(複式簿記)、(2)申告書に貸借対照表と損益計算書などを添付、(3)期限内申告。これらの要件を満たすと55万円が控除され、さらに「e-Taxによる申告(電子申告)」又は「電子帳簿保存」にすると65万円が控除されます。

    参考:国税庁「青色申告特別控除額・基礎控除額が変わります!!」

    以上のようにメリットが大きい制度ですが青色申告を利用するには開業から2ヵ月以内に所轄の税務署に届け出を行う必要があります。期間を過ぎても受け付けてくれるケースはありますが、65万円の青色申告特別控除を受けるためにも届け出期間内に提出するようにしましょう。

    ■ 不明点が多い場合は専門家に相談

    開業医になって初めての確定申告は不明な点も多いかもしれません。ただし開業年度はまだ軌道に乗ることができず総収入が7,000万円を超えるケースは少ないことが予測されます。そのため「社会保険診療報酬の特例」を利用して簡単に申告を行うのも方法の一つです。ただし開業経費が予想以上にかかった場合は、実額申告にしたほうが節税になる可能性もあります。

    自分で判断が付かない場合は、税理士などの専門家へ相談のうえ自分にとって有利な確定申告を行いましょう。

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