不動産投資物件の購入を検討する際、事前の情報収集と合わせ購入を考えている物件を内見することで、より有利な物件を選定することができます。
しかし、物件にはパッと見ただけでは見つけられない隠された瑕疵 (かし) が多く存在しています。瑕疵とは、簡単にいえば「その物件が抱える欠陥」のこと。瑕疵は概ね、「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境瑕疵」の4つに分類できます。
今回はその中から、内見することによって回避が比較的可能な「物理的瑕疵」にスポットあててみましょう。
物理的瑕疵とは
物理的瑕疵には、建物と土地について主に次のようなものがあります。
建物 |
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土地 |
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建物の雨漏りやひび割れに関しては、目で見て確認することができます。しかし、シロアリ被害や耐震強度の不足などは、より専門的な視点で見る必要があります。
物理的瑕疵がある場合、売主及び貸主は契約時に重要事項として買主・借主に説明する義務があり、口頭での説明に加え、書面での案内も必須となります。
宅地建物取引業法第三十五条(重要事項の説明等) |
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宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。 |
この義務があるため、契約書に「瑕疵担保責任を負わない」旨を特約として記載していても、瑕疵を買主・借主に伝えなかった場合は瑕疵担保責任を負い、契約の解除・損害賠償の請求を受ける場合があります。
リフォームやリノベーションによって物理的瑕疵が解消されれば告知の義務はなくなりますが、リフォームを担当した業者にも気づかれぬまま、解消されなかった瑕疵が残るケースも存在します。
そこで、「リノベーションに潜む落とし穴」にスポットを当てていきましょう。
見えないところに潜む物理的瑕疵
投資用物件を探していると、リノベーションマンションという言葉を目にしたことはないでしょうか。中古マンションをリノベーションすることで「新しさ」と「デザイン性」が付加され、購入者にとってみれば新築同様の内装でありながら、新築物件よりも2〜4割価格が安いというメリットがあります。
しかしこういった物件には時として、予期せぬ落とし穴が潜んでいる場合があります。
例を2つ見てみましょう。
ケース①:水道の配管から発生する水漏れ
原因:リノベーション業者が配管の交換作業時に接続部を閉め忘れたままになっている場合や、配管が古い鉄管のまま取り替えられていないため、配管の腐食などにより水漏れが発生
ケース②:交換したエアコンの故障によるトラブル
原因:電気配線が一つのブレーカーに繋がっており、電圧の許容量を超えてしまった
このように、人的なものから旧時代の建設方法によるものなど、さまざまな原因によって発生します。
また、中古物件には最低2年間の瑕疵保証が付いていますが、3年目以降に起きるトラブルは買主の負担となります。そのため、水道配管や電気配線などに老朽化している箇所があったとしても、交換費用を見積もらない悪質な業者も残念ながら存在しています。
「ホームインスペクション」を有効活用する
このように、一見綺麗に仕上がっているリノベーション物件にも、数々の落とし穴が潜んでいます。購入前にできる対策としては、「ホームインスペクション」というサービスがあります。
このサービスは、ホームインスペクター(住宅診断士)と呼ばれる住宅診断の専門家が、第三者的な立場から住宅の劣化状況・欠陥の有無・改修すべき箇所について、おおよその費用や時期についてアドバイスを行う専門業務です。
費用の相場としては、目視による一次診断で5~6万円前後、機材を使用する詳細診断になると10万円以上になることもあります。特定の条件や基準を満たした際には「住宅ストック循環支援事業」「長期優良住宅化リフォーム推進事業」といった補助金が交付されます。
また「宅地建物取引業法(宅建業法)の一部を改正する法律」のうち、インスペクションに関する規定の施行日が2018年4月1日に定めるとの閣議決定がなされています。こちらも合わせて確認しておくことが望ましいでしょう。
リノベーションしているからといって油断しない
リノベーションマンションは不動産投資用の物件として有利性を持つ反面、事前にしっかりとした調査・対策をとることが必要となります。
目に見えない脅威をひとつひとつ知ることで、起こりうる不動産投資のリスクを軽減していきましょう!