定年退職後の生活を考えるうえで重要な「退職金」。医師は高収入のため退職金も多くもらえるイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか? 今回は医師の中で勤務医の退職金事情に着目します。
退職金とはどのような制度なのか?
退職金とは、定年退職する際に勤務先から支払われる報酬のことです。退職金の額を考える前に「自分は退職金そのものをもらえるのか?」を知っておく必要があります。退職時に退職金を支払う制度は法律で定められた必須の制度ではなく、あくまでも病院側が主体的に定めている制度だからです。
そのため、「自分が勤務している病院には退職金制度がない」ということも考えられます。この場合、退職金は制度が存在しないため出ません。たくさん出るだろうと思っていた退職金が出ないとなると、老後の計画も一変してしまうので、不安に思った勤務医の方は総務部に問い合わせるか、手持ちの契約書などを確認してみましょう。
ちなみに、開業医の場合も自分自身で退職金制度を設けていなければ、退職金はありません。開業医の場合は自身の定年後に備えて「小規模企業共済」に加入して、毎月掛け金を積み立てていく形で準備する人も多いようです。
退職金が出たとしても、収入である以上、退職金にも税金がかかります。
退職金にかかる税金は【退職金-退職所得控除×1/2】で計算することができます。退職所得控除は勤続年数によって異なり、20年以下は【40万円×勤続年数】、20年以上は【800万円+70万円×(勤続年数-20年)】です。
医師の退職金はどれくらい?
退職金制度がある病院に勤める勤務医の場合、退職金はどのぐらいもらうことができるのでしょうか。相場は1,000~2,000万円程度とされています。勤務医の平均年収1,700万円(厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」)から見るとそれほど多い額ではなく、老後に不安を覚える方もいるかもしれません。
勤務医の退職金の額が多くないのは、その働き方に原因があります。退職金は通常、「勤務年数に比例して額が増えていく」ものなので、勤務医も一つの病院、一つの局で長年働き続ければ退職金の額は大きくなるはずです。
しかし、勤務医は特に若いころは2~3年で病院を移ることが多く、40代になってから一カ所の病院に落ち着くというケースが少なくありません。40代から65歳まで働き続けた場合、連続勤続年数は約20年です。一般の会社員が新卒から一つの会社で働き続けると40年以上になるので、およそ半分の年数です。勤務医も若い頃から他の職種よりも多忙を極めて働き続けているのに、この仕組みのために退職金は多くないというわけです。
では、思ったよりも退職金が出ずに、老後の計画を見直さなければならなくなった医師はどうしているのでしょうか。よく「医師に定年はあってないようなもの」と言われますが、実際に定年後も勤務先の病院に非常勤として勤めたり、クリニックに再就職したりしている医師は少なくありません。
退職金をもらうために
勤務医が退職金をしっかりともらうためには、勤務する病院が変わる際に新しく務める病院の退職金制度を事前に確認する必要があります。冒頭でお伝えした通り、退職金制度は法律で定められた一律のルールがあるわけではなく、病院が決めているものなので条件が細かく異なります。
退職金制度のあるのか、退職金は毎月の給与に含まれているのか。さらに、退職金の計算方法も知っておきたいところです。退職金は、勤続年数別に設定された金額が支払われる「定額方式」、退職時の基本給に勤続年数と支給率を掛ける「退職時基本給」、役職や勤続年数をポイントにして計算する「ポイント制」など、さまざまなものがあります。そのほかにも、退職金が支給される年数は勤続何年以上なのか、という点も確認しましょう。
病院を移る際に退職金のことを第一に考えて動く医師は少ないかもしれませんが、退職金があるかないか、多いか少ないかは、老後の生活に大きく影響します。医師は収入が高くても、生活水準が高く支出も高いことがあるため、思ったよりも貯蓄に回せないケースが多いものです。その場合、退職金がもらえるか否かは大きなポイントになるはずです。
また、老後の資産形成を行ううえでは「投資」も効果的です。投資には、保険、証券、不動産などさまざまなものがありますが、勤務医は不動産投資がおすすめです。その理由などの詳細は本コラムの他の記事で書いているので、気になる方はチェックしてみてください。
不動産投資が医師におすすめな理由と注意すべきこと
投資初心者の医師必見!経験者もおさらいしておこう 不動産投資の基本的な考え方
節税だけじゃない!不動産投資で医師が得られるメリットとは
まとめ
退職金が出ないかもしれない、思ったよりも退職金が少ないかもしれない。今回のコラムを読んでちょっと憂鬱になった勤務医の方もいるでしょう。でも、定年時にそれに気づくよりも、若いうちに気付いて「老後に向けて対策を打つ」ことができると前向きに考えることもできます。できることからはじめてみてはいかがでしょうか。