昨今、美容クリニックがかなり増えました。
地球規模で「美しさ」を手に入れたい、買いたい人がドンドン増え続け、その高い需要を埋めるように供給も増えているのでしょう。
美容クリニックが増えれば、当然の事ながら競争が生まれます。
今ですら激しい競争が既にありますが、よりその激しさは勢いを増していく事でしょう。
美容クリニックの経営競争、コスパの良い方法
一般的に経営改善の方法は
1.新規顧客で売上を増やす
2.既存顧客で売上を増やす
3.コストを削減する
のどれかです。
中でも新規顧客で売上を増やす事が、あまりにも重要視されている傾向があるように感じられます。
しかしながら、コスパの良さで言えば既存顧客で売上を増やし、コストを削減する方が、圧倒的に簡便ですぐに効果が出ます。コスパが良い方法だと言えるでしょう。
美容クリニックは広告を出し過ぎている?
特に「新規顧客で売上を増やす」という方法を選ぶと、まず最初に考えなければいけないのが広告です。
広告を出せば出すほど、当然ながら新規顧客は獲得できます。
しかしながら、この方法のコスパは悪いと言わざるを得ません。理由は2つあります。
まず、人口が日本は減っていくからです。
いくら美容の市場が広がっているとはいえ、人口が減る日本では顧客数が減り、少なくとも日本人だけを対象とした事業の縮小傾向は避けられません。
そんな中、減っていく新規顧客に対して多数のクリニックが群がれば、経営効率が悪化していく事は目に見えています。
そしてシンプルに、新規顧客を捕まえるのは、既存顧客に対して別の商品を販売する方法よりも、難易度が高いのです。
これはマーケティングの世界では有名ですが、新規顧客の獲得コストは既存顧客の数倍です。当たり前ですよね。
そもそもの難易度が高いフィールドで、減っていくパイを奪い合うわけですから、効率が悪い事は明確だと思います。
特に美容クリニックは、ザックリとした広告をバンバン出し過ぎだと思います。
今は予算がそれなりにあるのでやっていけるのだと思いますが、これからは広告戦略に対してパフォーマンスを計測する必要があると思います。
美容クリニックも広告効果の判定を行うべき
まさに「なんとなくザックリで」広告を出している美容クリニックは多いと思いますが、これからの競争激化を考えれば、まず着手するべきは広告の効率化です。
具体的には、広告効果の判定を必ず数字で行うべきです。
概ね決まっているのは「予算」だけだったりしますが、見なければならない指標として
CPA(顧客1人あたり獲得単価)
を重要視するべきです。
例えばCPAが1万円で、その顧客がクリニックにもたらす平均営業利益(広告を除く)が5万円であれば、その広告によってもたらされた真の営業利益は4万円という事になります。
これが逆にCPAが5万円であれば、プラマイゼロです。5万円以上ならば赤字で、経営上はその広告はマイナスです。
つまりCPAを見なければ「そもそも広告をする意味があるのか?」を判定する事さえ、できないわけです。
ここを蔑ろにして、予算だけで広告が決まっている美容クリニックが、結構多いように感じられます。
これから競争が激化してくる世界では、まず着手しやすい広告について効率化を測るのがスタンダードになるでしょう。早めにやっておくのに越した事はありません。
美容クリニックはコストを見直そう
今まさに波が来ている美容業界では、コスト意識がやや低いという印象も受けます。
これ、本当に必要なのかな?
そう一度止まって考える事が、少ない印象です。
かの有名な、日産自動車のカリスマ経営者カルロス・ゴーンは、まず就任してから着手したのはコストカットだったそうです。
最も手っ取り早く、数字でコントロールしやすい部分ですからね。確実性があります。
実際、カルロス・ゴーンは就任してすぐに原材料の鉄を徹底的にコストカット、赤字だった日産自動車を黒字化させます。
その成功体験に追随すべく他の自動車メーカーも鉄の徹底的なコストカットに踏み切りました。
自動車業界も、バブルの良かった時代ではザックリしたコスト意識でやっていけたのでしょうが、その後の不況下ではコスト意識を徹底したゴーンのような存在がトップになるまで、ひどい赤字を垂れ流していました。
美容クリニック業界も、同じようになると思います。
レンタルしている空気清浄機、ウォーターサーバー。本当に経営上必要でしょうか?
それによって顧客満足度は上がっているのかもしれませんが、売上につながるのでしょうか?
特にサブスクの商品で、実は必要のないものはないでしょうか?
今のうちからコスト意識についてしっかりと考え、不必要なコストを削減し、さらにそのコスト意識を従業員全体に浸透させ、常に目を光らせておく。コスト意識を組織全体に浸透させ、機能させるのも立派な経営改善です。
これからの競争激化、もしかしたら来るかもしれない不況に備えて、今から準備しておくのが良いのではないでしょうか。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。