今の世の中、ショートムービー全盛期だと言われています。
ショートムービーとは、15秒程度の短い時間で構成された動画コンテンツの事で、これらのショートムービーだけが寄せ集められたSNSプラットフォームが、中国のバイトダンスが提供するTikTokです。これらの勢いは凄まじく、特に若年層のユーザーから世界的に圧倒的に支持されています。この動きに追随するべく
・YouTubeショート
・Instagramリール
など、他のプラットフォームもショートムービーによるSNSプラットフォームを構築しようと躍起になっています。
今まさに、全盛期とも言えるこのTikTok業界ですが、美容外科医にとってはどうなのでしょうか?
目次
日本のTikTokを一番使っているのは、40代男性
これは結構衝撃の事実なのですが、年齢と性別でユーザーカテゴリを分類すると、TikTokを最も使っているのは「40代男性」らしいです(マーケティング会社「edamame Japan」の公式サイトより)。
なぜこうなっているのか?
理由は明確ではありませんが、10代や20代の若い女性が投稿した動画を、40代のおじさんが見ているのではないか、と言われています。
若い女性が、自分の美しさや可愛さをフォロワーに変え、承認欲求を満たすべくTikTokに動画コンテンツを投稿。それを40代のおじさんが無料で消費しているという、なかなかに地獄絵図です。
これを聞くと、美容外科をはじめとした美容医療領域が、TikTokに参戦する事の困難さを感じます。40代男性に美容医療を販売するのは、ちょっと今だとまだ難しいですからね。
TikTokユーザーは、お金がない可能性
仮にTikTokで美容医療のマーケティングを行おうとするならば、どこにセグメントを合わせるのかが難しくなります。
若年層は、そもそもお金がありません。美容医療に多大な興味は持ちつつも、今支払うお金がなくてサービスを受ける事ができない、という層が多いと思われます。
将来顧客にはつながる可能性は秘めていますが、回収までの時間が長い投資は経営上、決定しにくいものですよね。
かといって最も多いとされる40代男性にフォーカスするかどうか、という問題もあります。彼らが美容医療、AGAやヒゲ脱毛などに興味を持ってくれるのかというと、これもまた怪しい。
TikTokは、現状では美容医療業界が参入するには、ややコスパが悪い、まだプラットフォームとしてユーザーが集まりきっていない、そんな感じの印象を受けます。
むしろ、Instagramのリール動画で止まっているのが20代、30代女性を中心に多く存在している印象です。急いでTikTokに参入するよりは、Instagramのリール動画を攻略していった方が、経営上はやりやすいかもしれませんね。
しかしこれはあくまで今であって、今後勢力図が変わる可能性は秘めています。
今となってはSNSの主流であるInstagramも、最初の頃は単に写真を加工できるというだけの位置付けで、徐々に画像SNSとしての地位を確立、ユーザーを増やしていきました。
今後若いユーザーがTikTokに参戦するのは明確なので、昔のInstagramのような立ち位置が今のTikTokだとするならば、今のうちから参戦し長い目でやっていくのはアリかもしれません。
TikTokを唯一効率的に使えるのは、採用活動
ではTikTokは美容医療業界にとって、全く何にも使えないかというと、そういうわけではありません。
やはり一定の若年層へのリーチ数は圧倒的なので、採用活動には効果的です。
特にTikTokをやっている若年女性は、美容業界への興味は多大であり、これらの興味をTikTok経由でうまく採用へと向かわせる事ができれば、効率的な採用活動へと結びつく可能性は十分にあります。
TikTokユーザーはお金はありませんが、労働力としての資本を持っています。彼らを顧客として捉え、物やサービスを販売するというよりは、彼らに働いてもらう。労働力を買わせていただく。
そういうスタンスで眺めると、TikTokが急に効率的な市場に見えてくるのではないでしょうか。
この辺りの事は、おそらく大手の美容医療チェーンも気付いていると思います。もちろん美容業界だけでなく、他のあらゆる業界がTikTokを採用活動の場として捉え、企業アカウントとして参戦してくる可能性は常にあると思います。
どの業界もいずれ参入してくるとは思いますが、今のうちから美容医療業界として少しずつ参入していくのも、面白いかもしれませんね。
TikTokもInstagramと同じ道を歩みつつある
Instagramもそうでしたが、まず最初にこういったメディア系SNSは
・若くて可愛い女の子
が台頭します。そして色々な若年女性が、生き馬の目を抜く争いをし、ユーザーも徐々に飽和する似たようなコンテンツに飽きてきて、次の段階に移行します。
そして次は
・本当に役に立つ情報
が流行り始めます。
本来なら調べたり、本を読んだり、実際に体験しないとわからないような内容をうまくそのプラットフォームにそぐう形でまとめたコンテンツが、流行り始めます。
実際、Instagramでは綺麗な写真よりも、今は「見やすくまとまっている情報」でも、十分なインプレッションを得る事ができます。
TikTokも最近はその傾向があり、メディアSNSは同じ道を歩むのかもしれませんね。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。