「経費で落とす」「経費にする」という言葉をよく耳にします。でも、“どこからどこまで”が経費なのか、明確に理解している人はそう多くはないかもしれません。そこで今回は、経費とはそもそも何か、どこまでを経費とすることができるのか、というところを解説します。
経費とは? 経費の基本を知る
確定申告をして納税する際のポイントの1つに「経費」があります。納税額は年間の合計収入から経費と控除を差し引いて課税所得を算出し、その額に一定の税率を掛けたものなので、経費をきちんと計上することが節税には欠かせません。
では、「経費」にはどのようなものを計上することができるのでしょうか? 具体例は後半で出しますが、経理の基本を知るために国税庁のHPをチェックしてみると、(1) 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額、(2) その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額、とあります。「収入金額を得るために直接要した費用」、「業務上の費用」というところに着目しましょう。
さらに、これらの費用は「その年において債務の確定した金額」という点も注意が必要です(債務とは簡単に言えば、「他社に金銭を支払う義務」のこと)。つまり、その年に支払った費用でも、その年に債務の確定していないものはその年の必要経費にならず、 逆に支払っていなくても、その年に債務が確定しているものはその年の必要経費になります。
要するに、経理の基本をまとめると、経費とは「収入金額を得るために直接要した費用」、「業務上の費用」であり、経費として計上するためには「債務が確定しているか」という時期を確認する必要がある、と言えます。
家事按分、勘定科目を考える
時期は確認すればすぐにわかることですが、「収入金額を得るために直接要した費用」、「業務上の費用」というところで、多くの人が「どこまでを経費にできるのか?」という疑問を抱くことになります。
この点を明確にするためには、まず全ての経費候補の領収書を手元にまとめてから、「勘定科目」ごとに領収書を分けて考えていきます。勘定科目は一般的に、旅費交通費(打合せや仕事に行くための電車やバス、タクシーなどの交通費)、水道光熱費(水道代、ガス代、電気代)、交際費(営業目的の飲食代など)、消耗品費(仕事で使うパソコン、文房具、事務用品の代金など)、会議費(打合せの飲食代など)、広告宣伝費(所品やサービスを販売するために使った広告代)などがあります。勘定科目は該当する項目がなければ自分で設定することも可能です。
このようにして振り分けると、「収入金額を得るために直接要した費用」、「業務上の費用」に当てはまるかどうかがわかりやすくなると思います。ここで個人事業主や自宅を仕事場にしている人は「家事按分」という言葉を覚えておきましょう。家事按分とは、事業と家事で使っている割合を設定し、家事で使っている部分を必要経費から除外することです。
たとえば自宅が仕事場のフリーランサーは勘定科目「水道光熱費」の中に水道代を計上します。ただ、自宅は生活の場でもあるため、全ての水道代が仕事のために使われているわけではありません。そのため、生活7:仕事3などと割合を決めて、水道代の3割だけを経費として計上するのです。
経費を考える際は、勘定科目と家事按分、この2つを覚えておいてください。
これって経費? Q&A
最後に、「これは経費なのか?」という疑問をQ&A形式で紹介します。
Q:個人事業主として働いていて、国民年金と国民健康保険を払っています。この費用は経費として計上できますか?
A:国民年金と国民健康保険は経費ではなく、控除の対象になります。
Q:取材とプライベートの旅行をかねて、沖縄に行きました。飛行機代や宿泊代、現地での飲食代や交通費は経費になりますか?
A:全ての領収書をとっておき、取材のための領収書とプライベートの領収書を分ける必要があります。取材とは関係がなく、個人的な観光のために使った交通費や飲食代は経費として計上することはできません。
Q:事務所で借りている部屋は火災保険に加入しています。火災保険料は経費になりますか?
A:火災保険料などの保険料は経費になります。勘定科目は「損害保険料」にすることが一般的です。
Q:事務所を借りる際の敷金・礼金は経費になりますか?
A:礼金は20万円未満の場合は「地代家賃」で経費として処理します。20万円以上の場合は資産とし、賃貸する期間などで減価償却します。一方、敷金は退去をする際には戻ってくることが一般的なので、支払った時点では経費になりません。
Q:取引先の方と新年会をした際の飲食費用は経費になりますか?
A:個人事業主の場合で、仕事としておつきあいがあり、今後も仕事が続くためにとの接待に関しては事業の利益に結びつくので、交際費として経費にすることができます。
ここに挙げたものは一部ですが、経費にならないものを経費としてあげていると、税務調査が入った際にペナルティを受ける可能性があります。そんなことのないように、不明点があったら必ず調べるようにしましょう。
まとめ
「経費になるか、ならないか」は少し複雑な部分がありますが、基本的には「仕事に直接つながるか」がポイントになります。節税をするためには経費の計上も重要なポイントなので、見逃しがないよう経費として計上できるものをしっかり把握し、日々の生活でも意識しましょう。