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    【現役医師連載コラム】クリニックでよくあるスタッフ間トラブルとその対処

    tokyoh@dmin2017

    院長の頭を最も悩ませるもの、それは「スタッフ間トラブル」です。言ってしまえば、人間関係のトラブル。

    病気は治せるけど、人間関係を修復させるのが不得意な先生、結構いらっしゃるのではないでしょうか。

    今回はそんな、クリニックでよくあるスタッフ間トラブルと、その対処についてです。

    クリニックでスタッフ間トラブルが起こったら…

    スタッフ間のトラブルは

    1.お互いに相手を悪いと言っている
    2.片方が一方的に相手を悪いと言っている

    の、どちらかです。発生確率は2の方が高いと思われます。

    1の場合は、ほとんどが「どちらも同じくらい悪い」という結論に達しがちなので、省略致します。

    2の場合、まず重要なのは、双方の意見をしっかりと否定せず聞いてあげる事です。

    中には「院長に愚痴ったらスッキリした」と言って、カラッとしている人もいます。

    お互いの意見をじっくりと聞いたら、ここから重要なのは事実の洗い出しです。

    意見の中には「予想」が含まれる事も多く、何が事実で何が事実でないのか、話を聞いている中で不明瞭な事が多くあります。

    与えられた情報が不明瞭なまま、話を進めていくと、手順が正しくても間違ったアウトプットになってしまうため、まずは正しい材料を集める事が大事です。

    具体的な手順としては、お互いから話を聞いて、話の中で「意見なのか事実なのかわからない事象」が出現した際に、お互いにそれが事実なのかどうかを、個別で聞いてみましょう。

    お互いの言い分が一致した場合、それは事実として扱いますが、齟齬が生じた場合、それは一旦「不明瞭な事実」として扱いましょう。

    スタッフの「怒り」は、相手への願望の表れ

    これは僕が思っている事ですが、誰かに「怒り」を感じた時は、それは相手に対して「もっとこうなってほしい、こうしてほしい」という願望の現れです。願望に即していない現実があって、それが耐えがたく、願望に則った進化を遂げてほしいけれども、それが成される気配のない今の相手に対して「怒り」という感情が生まれているだけ。

    つまり怒りの感情は、願望を達成させるための手段として捏造された心理状態である、という話です。

    これは「アドラー心理学」という心理学らしく、書籍を読むと詳しく書いてありますから、ぜひ読んでみて下さい。

    僕はこれは、確かにそうかもな、と思っています。

    スタッフが誰かに対して怒りの感情がある時、多くの場合は

    「もっとこうなって欲しい!今はそれができていないし、できるようになる努力をしていない!」

    という願望に対して、乖離した現実の相手に怒りを持っているように見えます。

    逆に言えば「怒り」の感情の裏には、必ず願望があって、その願望の裏には「その願望が達成されていない現実」があるはずです。

    話をじっくり聞いて、怒りの感情の源泉はどこなのか、その原因となっている現実は何なのか、つきとめてあげる必要があります。

    病巣の原発を見つけるイメージです。

    お互いの意見を聞いて、事実と感情を分離し、病巣の原発を見つけたら、今度はそれらを客観的に見て判断します。

    特定の事実に対して、どちらが正しいか。要望のレベルが高すぎるのか、実行者のレベルが低すぎるのか。

    その事実に対する感情は、妥当なのか。そこまで反応する必要があるのか。

    これらを「あくまで中立な立場」で判断する事が重要です。

    実際にあったクリニックでのスタッフ間トラブル

    色々な先生と話してみて、実際に頭を悩ませるケースとしては、こんなケースのようです。

    仕事がちょっとできないスタッフがいて、できるスタッフが、妥当な範囲内で不満と怒りを持っている。

    言い分としては間違っていないけど、できないスタッフ本人の能力から見れば、十分頑張っている。努力の姿勢は見られる。けれども成長速度が遅く、結果がついてこない。

    悩ましいですよねえ。できるスタッフからすれば、できないスタッフの「できなさ」に対して、できるようになって欲しくて、怒りの感情を持ってしまうといったところです。

    このようなケースでは、基本的に「ある程度は成長を見守って、伸びが見られればオッケー、そうでなければ残念ながら」という方針を、そのできるスタッフに伝えて、実行するのが良さそうです。

    具体的には

    「確かに言い分はわかるが、人の能力には個人差があって、その成長速度にも個人差がある。」

    「実際、仕事が全くできないスタッフがいて、本人もそれを自覚して、努力をし続けていたけれども中々できるようにならず、周りも諦めかけていたが、努力はものすごいしていて、メモを取るなど態度は良かった。その後少しずつ良くなって、最終的には誰よりも仕事ができるようになった、という話もあるそうだよ。元々色々とできなかったからこそ、細かいところまで仕事をメモして覚えたから、痒いところに手が届く、隅々までしっかりやってくれる、誰よりも信頼されるスタッフになったそう。」

    と言ったように

    ●実際の事例を交えて説得
    ●ある程度の期限を明確に設ける

    と、できるスタッフもうまく説得する事が多いように思います。

    人間関係のトラブルは一筋縄ではいかないものですが、ぜひその時が来たら試してみて下さい。

    現役医師連載シリーズ


    ▼著者
    大石龍之介
    株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。

    URL:https://bluestorage.co.jp/

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