医師にとって「独立・開業」とは、自身の目指す医療を実現するための大きな夢の一つといえるでしょう。しかし、準備金が膨大にかかるのがボトルネックです。ここでは、一般的にどういった方法で独立・開業の準備金を医師が集めているのか紹介しましょう。
開業資金の平均はどれくらい?
他の業界と比べても、医師の開業には多額の資金が必要とされます。
医院開業支援を行なっているFPサービス株式会社によると、診療科目別の開業資金の目安は以下のとおりです。
- 内科クリニック 土地・建物で約3000万円〜、設備で約2500万〜3500万円
- 皮膚科クリニック 土地・建物で約1500万円〜、設備で約500万円(ただし各種レーザー機器を導入しない場合)
- 心療内科・精神科クリニック 土地・建物で約1000万円〜、設備で約400万円〜
- 小児科クリニック 土地・建物で約3000万円〜、設備で約1000万円
- 産婦人科クリニック 土地・建物で約3000万円〜、設備で約2000万円
- 眼科クリニック 土地・建物で約3000万円〜、設備で約2000万〜4500万円
- 耳鼻咽喉科クリニック 土地・建物で約3000万円〜、設備で約2000万〜2500万円
- 整形外科クリニック 土地・建物で約3000万円〜、設備で約1900万〜2500万円
- 外科クリニック 土地・建物で約3000万円〜、設備で約1500万円
参考:https://www.doctorsupportnet.jp/kamoku/
いまだに預貯金するドクターが大半の現実
日本人は他国と比べて「現金・貯金」志向が強いといえます。
日本銀行調査統計局の「資産循環の日米欧比較」によると、日本人の資産構成は現金・預金は52.4%。これはアメリカの13.8%、ユーロ圏の34.4%を大きく上回る数字です。
この現金・貯金志向は、医師でも変わりません。
リクルートドクターズキャリアの「医師のお金大調査」によると、「資産のうち投資額の割合」を聞いたところ、「0円」と回答した医師は、なんと「41.3%」でした。
回答のなかには、「投資してみたいがどんなものが初心者に向くか分からない」「投資の勉強をしたいが難しい」「貯蓄しても増えることはないが、投資は怖い」など、投資に対して関心があるものの知識不足に悩んでいたり、漠然と恐れていたりする人がいることがわかります。
参考:https://www.recruit-dc.co.jp/contents_feature/no1608a/
ここから、独立・開業の準備資金も多くは預貯金から捻出したのではないかと推察できます。年収が高い医師ならではといえるでしょう。
預貯金は必ずしも安全ではない
しかし、預貯金をしているだけでは、現在の日本の超低金利を考えると、お金は増えていきません。ほとんどの銀行では、普通預金の金利は0.01〜0.02%です。これでは、たとえ1000万円を預けていても年間で100円しか利子がつかないことになります。
また、預貯金の不安材料はほかにもあります。
それは「インフレ(物価上昇)リスク」です。仮に10000円で買えていた物が15000円に値上がりすると、10000円の価値が3分の2に目減りすることになります。つまり、預金していれば、額面上の元本割れは起こしませんが、物価が値上がりした分だけ事実上は元本割れしていることになります。
インフレに対して最も脆弱な資産は、預貯金といわれています。
たとえば、これが「不動産」であれば、インフレに合わせて価格が上昇していきますが、定期預金の金利は増えることはありません。
したがって、インフレリスクの観点から見ても預貯金はおすすめできないのです。