勤務医を中心とした医師や高収入の会社員にとって、悩みの種はその高収入による税率の高さです。激務に耐えてお金を稼いでも、税金が高いため、思ったほど手元には残らず、資産形成も思うようにならないとお悩みでしょうか。
このような場合、プライベートカンパニーを設立して節税をすることが出来ます。本記事では、はじめてプライベートカンパニー設立を検討する医師(勤務医)・高収入の会社員が知っておくべきことをまとめました。
目次
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■プライベートカンパニー設立で何ができるのか
プライベートカンパニーの設立により、まずは節税が出来ます。医師(勤務医)や会社員をしながら自分の会社を作り、その収入をプライベートカンパニーの収益にし、法人税の対象にします。
プライベートカンパニーとは、オーナーやその同族といった少数の人(または株主)が所有する一般事業・不動産・株主や現金預貯金などの資産を保有・管理をする会社です。
医師(勤務医)の場合、プライベートカンパニーで得られる収入は本業(医療)以外の事業になります。
個人事業主との違いは、法人化されているかどうかです。同じような事業内容だったとしても、法人化すると法人税の対象になります。
プライベートカンパニー、個人事業主のどちらを選んでも問題ありませんが、目安としては下記となります。
医師(勤務医)や会社員としての収入が800万円を超え
・事業売上見込みが1,000万円以下なら個人事業主
・事業売上見込みが1,000万円を超える場合はプライベートカンパニー(法人化)
また、スタートは小規模でも、今後、事業化や大きな投資などを計画しているのであれば、法人化しておいたほうが良いでしょう。
実際にどの方法を選択するかは、個人で判断するよりも税務や事業のコンサルタントなどに相談をして決定しましょう。
■プライベートカンパニーの「事業」とは何を指すのか
プライベートカンパニーが運営する事業内容は、カンタンに言えば、何でも良いのです。例えば
・ワンルーム一戸
・マンション一棟購入
・原稿料・原稿監修料
・テレビ出演料
・セミナー講師
など、本業の給与以外の収入が起きるものは、全て事業になります。
例えば、医師(勤務医)が名刺代わりの本を出版しているケースは多くありますが、その収益をプライベートカンパニーのものにすれば、ベストセラーになっても賢く節税ができます。
■プライベートカンパニーによる節税メリット
プライベートカンパニー(法人化)による税制面でのメリットをまとめました。
メリット1:適用される税率が変わる
個人事業主は、所得税と住民税の合計が最大で55%(半分)ですが、法人税の場合は累進性が低いため、最大で約30%程度です。収入が多い人ほど法人化をすると節税ができるのはこのためです。
【参照:国税庁 法人税税率】
【参照:所得税 住民税】
メリット2:経費の範囲が違う
法人になると、経費として落とせる項目が非常に多くなります。むしろ、経費として落とせなくなる項目は、
・事業主の給料
・事業主の健康診断費用
・敷金
・事業と無関係の費用
だけで、それ以外は経費化しやすいというメリットがあります。
【参照:国税庁 法人税】
メリット3:相続税対策ができる
不動産や有価証券などの財産を、法人名義にすると手続きも簡単になり、相続税の税率を引き下げることができます。
日本の相続税は、個人に厳しく法人に優しい傾向があるため、財産をプライベートカンパニー名義にしておく方が、先々の心配も少なくなるでしょう。また、事業継承の視点で見たときも、トラブルを最小限にすることが出来るでしょう。
この方法は昭和初期から多くの成功者や富裕層が取り入れてきた非常にベーシックな節税方法でもあります。
【参照:国税庁 相続と税金】
メリット4:社会的な信用度が上がる
プライベートカンパニーとして法人化をすると社会的な信用度が上がるので、事業を拡大しやすくなります。
取引企業の中には、法人取引しかしない所も多く、法人化による社会的な信用度は抜群です。ここは個人事業主と比較したときには、大きなメリットになります。
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■プライベートカンパニー設立によるデメリット
プライベートカンパニー(法人化)によるデメリットもあります。
設立費用などがかかる
会社を設立することになるので、法人登記のための費用として、法定費用・謄本代、会社印等を合わせて平均20~30万円前後が必要です。これらを行政書士などの専門家に依頼した場合は、40~50万円が相場でしょう。
また、会社には顧問税理士が必要になるため会社設立後からは月額3~5万円の固定費がかかります。
勤務先に理解・説明が必要になる
給与を貰っている医療機関や企業に、給与・医療行為以外の収入を、別口にして欲しい旨を説明して理解してもらう必要があります。
了承されるかは、勤務先の考え方次第なので、説明した末にOKが出るかは事前に判断できないのですが、おおむね、丁寧に説明をすれば理解を示してくれる傾向があります。
ただし、中には副業禁止な会社や医療機関もあるため、その場合は交渉して、ダメな場合はルールに従う必要があるでしょう。
また、基本的に公務員は副業禁止、民間勤務の場合でも派遣勤務先が公的機関ならば副業が出来なくなります。
個人情報が出る可能性がある
会社登記をすると、登記所で誰でも会社情報を確認できるようになります。(有料)
そのため、会社情報から自分の個人情報やプライベートカンパニーでの事業内容が、関係者以外にも明らかになります。
特にプライベートカンパニーが同族経営の場合、登録されている身内の情報なども全て明らかになります。
【参照:法務局 登記所】
専門の税理士が少ない
医師(勤務医)や高収入の会社員にとって、プライベートカンパニーは節税目的で設立する会社のため、節税に詳しい弁護士を探す必要があります。
しかし、プライベートカンパニー専門、節税専門の税理士という分野はないため、適任者を探すのに苦労します。
一般的な税理士を顧問税理士として雇った場合、設立目的などを詳細説明しないと、型どおりの税務処理しかしてもらえないことがあり、固定費がかかっているのに節税のためのアイデアのサポートが得られないことがあります。
■医師(勤務医)に向いているプライベートカンパニー事業
不動産経営は、今のところ、医師(勤務医)に最も向いているプライベートカンパニーの事業です。
勤務医として働いている医師は激務です。プライベートカンパニーで出来る事業内容はたくさんあっても、実際に医師(勤務医)が本業以外の時間に仕事として出来ることは、物理的に限られてくるでしょう。
また、医師(勤務医)は本業に関して絶えず新しい勉強が必要でもあり、事業を加えたことで、その時間が上手に割けなくなってくることもあります。
さらに世間一般の企業が営業している時間帯には自分も勤務をしているため、自由に商取引が出来る状態にはないのです。
しかし、不動産経営は、物件を所有するために投資することが事業ですから、投資をした時点でオーナーになります。実際の不動産管理は専門会社に任せ、必要な指示を出しプロに代行してもらいます。
あとは月次報告などでキャッシュフローを確認すれば良く、事業主としての仕事は、指示命令をすることがメインになります。
■医師(勤務医)ならではのMS法人という選択肢
もう一つ、医師(勤務医)に向いているプライベートカンパニーの選択肢に、MS法人という方法があります。
MS法人とは、メディカルサービス法人のことで、医療系のサービスをすることを目的として設立された会社のことです。
法人形態として株式会社や合同会社(LLC)、NPO法人、有限責任事業組合(LLP)などがあります。
医療系のサービスを提供をしていますが、MS法人としての制度があるわけではありませんので普通の会社です。医療機関としての認可が不要なため、例えば、
・介護などの一部を負担してくれるサービス機関として
・子供が医療系の仕事をしていないが、自分の医院や医療設備などを遺したい
・地域医療のサポート対応が出来る施設提供が欲しい
などで、MS法人を起こしているケースが見られます。
最近では、ビルを1棟購入し、そこにクリニックや医療施設として必要な設備を完備してから、医療専門テナントとして医療施設を誘致する、医療専門ビル経営という考え方もあります。
アメリカでは医療機関は基本、高度な専門設備とリハビリ施設などがあるビルにテナントで入るのが普通ですので、今後は日本も開業にあたって、このようなスタイルをとる医師が増えてくる可能性があり将来性がある上に、資産形成に役立ちます。
【参照:メディカルサービス法人】
まとめ
いかがでしたでしょうか。プライベートカンパニー設立における医師(勤務医)や高収入の会社員が知っておくべきことをまとめました。
せっかくの高収入を将来の資産形成につなげていくには、このような節税方法を併用しながらが確実な方法のようです。