今回登場いただくのは、某県にある大学病院の消化器外科を担当する夜王先生。研修医を経て、消化器系を中心に幅広い治療領域で活躍する夜王先生は、仕事と遊び、そして投資にも全力投球だ。30代に入り、病院で主軸として活躍する独身男性医師の「リアル」を訊いてみた。
目次
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治療領域の広さに魅力を感じ、大学病院の消化器外科へ
――まずは年齢と、現在までのキャリアをお聞かせください。
1990年生まれの33歳で、大学の医学部を卒業後、県内の医療機関で研修医としてキャリアをスタートしました。消化器外科を志そうと思ったのは、救急医療はもとより、がんに関わる治療や終末期の患者さんを診るなど、治療領域の広さが魅力だったからです。現在は大学病院に勤務しています。
――多忙な日々を送っているとお聞きしましたが、大学病院勤務医のルーティンを教えてください。
週4日勤務していて、出勤は午前7時くらいです。出勤するとすぐに外科に関するルーティン業務やカンファレンスをこなします。実地診療に関しては検体に関する特殊な部署にいるので、顕微鏡や内視鏡で診ることが多いですね。一連の業務が終わるのはだいたい午後6~7時ごろです。
――1日10時間以上の勤務は日常なんですね。
いや、これは通常業務だけの場合です。私のところは大学病院なので、自身で取り組んでいる研究を進めたり、担当している病院の外勤アルバイトも含めると仕事に関わる拘束時間はそれ以上になります。研究は2~5時間、場合によっては徹夜作業になってしまうことも少なくありません。
「将来はゆっくりしたい」という夢に向けて、専門性の高い資格取得に挑戦中の日々
――やはりお医者さんはハードなお仕事なのですね……。医師になろうとしたきっかけは何だったのでしょうか?
小学校のときに将来の夢を発表する機会があったのですが、当時漫画の『ブラックジャック』を読んでいたのでなんとなく「医者になりたい」と言ったんです。うちの両親は医者でもないですし、教育熱心なほうでもなかったのでだいぶ驚かれましたね。そのうちに医者を目指さないとならない状況になってしまい、これはまずいと思ってちゃんと勉強に取り組むようになりました。英才教育を受けたわけではなく、自分で塾や模擬試験などを調べて取り組んできました。
――なるほど。子どものころから自立されていたんですね。夜王先生は専門医の資格をいろいろと取得されていますね。
大学を卒業してから5年目に外科専門医の資格を取りました。これは消化器以外に心臓や小児などを含む資格です。8年目に消化器系の細かい資格やがんに関する専門医の資格も取得しました。取得できる資格はできるだけ早く取ろうと考えていて、これからもほかの資格を取得する予定です。
――お忙しい日のなかで積極的に資格を取得していますが、向上心やモチベーションを保つ秘訣は何でしょうか?
昔から「将来はゆっくりしたい」という考えがあるので、今のうちにやれることをやっておこうというのがベースにあります。例えば結婚して家庭を持ったときに、色々な資格や経験があればノウハウを活用して効率的に仕事をすることができますし、家庭に時間を割くことができると思うんです。 また、専門性の高い医師に従事しようとした場合、やはり勉強や資格が必要であることがわかってきます。医学は常に進化していますから、日々学ぶことは欠かせません。資格を取るための勉強は苦ではないですし、これからも努力を続けていくつもりです。
キャリアに悩む30代、まずは自分がどれくらいの仕事をしたいか問いかける
――とても素晴らしい姿勢ですね。では、将来の展望をお聞かせください。
医師が不足しているような地域のオールラウンダーになりたいですね。現在、人口10万に対して医師数の全国平均が226.5人なのですが、私の住むエリアを例に挙げると172.7人と平均を大きく下回っています。そのような地域でオールラウンダーの「何でも屋」として活躍したいという希望があります。
――お話を伺っていると、かなり高い意識で仕事に取り組んでおられますが、これからも大学病院でキャリアを積む予定なのでしょうか?
そのあたりの判断は難しいですね。大学病院は研究をするための設備や下地が充実しているので、研究に比重を置くのであれば大学病院にいることを選びます。ただ、先ほどお話した「何でも屋」として活躍しようとするなら、ほかの選択肢を探す必要が出てくると思います。私は現在独身ですが、結婚して家庭ができると環境が変わり、家庭とキャリアのバランスをどのようにしていくかも考えなくてはならなくなるでしょう。
――医師は30歳を過ぎると選択肢が増えて悩む時期だと耳にします。
私の周りでいうと、研修医の期間が終わる20代後半で結婚されてお子さんがいる先生が多くいます。そういう方は、家庭があるなかでどのようなキャリアを歩むかを早い段階で考えなくてはならないのでもっと大変だと思います。私も30代に入り、今後の仕事と結婚について考えることが増えてきました。医師の業務内容は年齢を経ても大きく変わらず、基本的に忙しく、楽な仕事ではありません。だからこそ「今後、自分がどれくらいの仕事をやっていきたいのか」を自分に問いかけることが重要です。それをよく考えたうえで、これからのキャリアを選択していくのが良いでしょう。
次回、後編に続きます。
【取材協力】
夜王先生
大学病院消化器外科医。向上心が高く仕事熱心で、投資の勉強にも遊びにも全力投球。