毎年3月15日に提出の期限を迎える「確定申告」。自営業者はもちろん、給与所得の方でも、本業と並行して株や不動産投資等の副収入がある人は申告義務があります。また、医師の方の場合は《年収2,000万円以上/2つ以上の事業主から給与所得がある/副業の収入が20万円以上ある》といった条件に該当していたら、確定申告をしなければいけません。
「所得控除」には家族に関わるもの、事業に関わるもの、保険に関わるもの等、多彩にありますが、生活環境や就業状態によって、適用できるものとそうでないものがありますので、それぞれの立場から精査しなければいけません。今回は、一般家庭や医療従事者が活用できる所得控除について説明します。あまり知られていませんが、医師(勤務医)こそ活用してほしい「特定支出控除」も紹介しています。
家庭・家族のための控除
「基礎控除」…確定申告した人は誰でも受けられます。
確定申告をする人すべてが受けられる控除です。控除される金額は一律38万円です(令和2年以降は変更有り)。
「配偶者控除」…配偶者の所得を抑え気味にしておくと効果有り。
家族の年間所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が38万円以下の場合、配偶者控除の適用を受けることができます。控除金額は、家族が70歳未満の場合は38万円、70歳以上の場合は48万円となります。
「扶養控除」…年配の親や、高校生以上の子供に適用されます。
たとえば、75歳以上の親を扶養している場合は、扶養控除を受けることができます。控除額は、同居の場合は58万円、別居の場合は48万円になります。また16歳以上の子供がいる場合も扶養控除の対象となり、控除額は38万円です。15歳以下の子供は「児童手当」が支給されているため、扶養控除の対象外となります。
「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」…家計の負担を軽減できます。
住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合、一定の割合に相当する金額が所得税から控除される制度のことをいいます。年末時点でのローン残高を基準として控除金額が決定されます。
「医療費控除」…人間ドックが対象になる場合もあります。
医療機関や処方箋薬局でかかった医療費に対する控除です。1年間の医療費が10万円を超えた場合、その超えた金額分が控除されます。一般の通院だけでなく、定期的な健康診断として人間ドックを受けた場合でも、異常所見があれば、この診察が治療の一環と考えられるので、控除の対象となります。
医療費控除は、家族の分をまとめて申告できます。共働きの配偶者の医療費も、さらには離れて暮らす学生・社会人の息子や娘の医療費も併せて控除を受けることができます。
「社会保険料控除」…家族全員分、支払額全額が対象となります。
健康保険や公的年金保険料、または国民健康保険や国民年金等を支払った場合、支払額の全額が控除されます。一緒に暮らす家族の保険料も払っている場合は、その金額も全額控除となります。
「障害者控除」…家族に障害者がいる場合に適用されます。
納税者本人や家族が障害者である場合に控除が受けられます。控除額は、障害者1人につき27万円です(特別障害者、同居特別障害者の場合は控除額が異なります)。
「寡婦控除(寡夫控除)」…夫と別れたり、未亡人になってしまった女性等が対象です。
配偶者と離婚や死別をして、同居の子供がいる、または年間所得が500万円以下の女性・男性ともに対象となり、一般的な控除額は27万円です。再婚した場合は適用されません。
保険関連の控除
「生命保険料控除」…契約した時期によって控除の条件が変わります。
生命保険料を支払った場合に控除されます。所得税の場合、1年間に支払った保険料に応じて、また保険契約の時期によって控除できる対象や上限額が変わってきます。
・平成23年12月末までに契約 → 旧制度:控除額一律5万円(総支払額10万円超の場合)
・平成24年1月以降に契約 → 新制度:控除額一律4万円(総支払額8万円超の場合)
「地震保険料控除」…マイホームの損害保険と併せて契約したときに適用されます。
損害保険等のオプションで地震関連保険に加入し、保険料を支払った場合に受けることができます。所得税の場合、支払った保険料から5万円を限度に控除されます。確定申告の際は、保険会社から交付される「地震保険料控除証明書」の提出が必要です。
「雑損控除」…災害での損失や、盗まれたお金も対象になります。
盗難や横領等の犯罪被害(詐欺や恐喝は除く)、災害で資産を失った場合に受けることができる控除です。控除される金額は、次の2つのうちいずれかの金額が高いほうになります。また、損害額が高額な場合は、翌年以降(3年が限度)に繰り越すことができます。
・差引損失額(※)-総所得金額等×10%
・差引損失額のうち災害関連支出の額-5万円
※差引損失額とは、損失金額から損害保険補てん金等を差し引いた額のことです。
高額所得者・医療従事者が活用できる控除
「給与所得控除」…勤務医として働く医師にとって基礎控除的な項目
医師の中で勤務医等、給与所得者の場合は「給与所得控除」が受けられます。給与所得の金額により控除額が異なります。最低控除額は65万円、控除額上限は220万円です。
「外国税額控除」…臨床研修等で海外で働いた場合は申告が必要です。
国外での労働で得た収入がある場合、国内と海外での二重課税を防ぐために「外国税額控除」の申告をする必要があります。申告には、外国税額控除に関する明細書等を提出する必要があります。この明細書には、収入を得た国名や、その国での課税標準といった内訳を記載し、最終的な控除額の算出までを納税者が行います。
「特定支出控除」…自腹出費が多いな、と感じたら活用してほしい控除です。
給与所得者で、医学書等の購入費、学会や講演会への参加費、資格取得のための費用等、高額な自腹支払いをしている場合は、「特定支出控除」が利用できます。通勤費、転居費、研修費、資格取得費、図書費等の年間支出額が、同じ年の給与所得控除額の1/2以上となった場合に適用されます。
「寄附金控除」…ふるさと納税の恩恵を再び受けられます。
国や地方公共団体等に寄附を行った場合に控除されます。今話題の「ふるさと納税」もこの控除の対象になります。1年間に寄附をした総額か、総所得金額の40%のいずれかの金額で低いほうから2000円を引いた額が控除されます。
寄附金控除の対象には「政治献金(政党や政治資金団体に対して行った寄附金)」も含まれますが、これを寄附金控除とするか、または別の控除項目である「政党等寄附金特別控除」の適用を受けるかは、自由に選択することができます。
確定申告を簡単にすませる方法
これまで手書きが主流だった確定申告ですが、最近は、国税に関する各種の手続きがインターネット上で行える、国税庁の「確定申告等作成コーナー(e-Tax)」を使う人が増えています。控除額の計算等も自動で行ってくれるので、間違いが少なく安心です。書類が完成したら、プリントアウトしたものを税務署へ郵送し、金融機関から税金を振り込めば確定申告は完了です。さらに「e-Tax」に登録すればプリントの郵送は不要、税金もインターネットバンキング等で支払うことができます。白色申告、青色申告のどちらにも利用できます。