節税効果が高いことから、不動産投資が軌道に乗り次第、法人化させることを目指すことが推奨されています。
ただ、そのメリットが見いだせないとなかなか実践に移すことができないのも事実です。
ここでは不動産投資を法人化させることのメリットや法人化移行へのタイミング、法人化する流れについてまとめました。
不動産投資を個人で行う場合と法人として行う場合の相違点はどんなところにあるか?
不動産投資を個人で行う場合と法人化させて行う場合とのメリットとデメリットをまとめました。
【個人で不動産投資を行う場合】
メリット
①マンションの区分購入など少額投資でも大きな利益を生むことができる
②自己所有資産を増やすことができる
③相続資産としての土地は、相続税の課税評価が下がるため相続税の圧縮ができる
デメリット
①家賃収入を含む個人収入が1,300万未満の場合節税効果は生まれない
②経費計上の点で制約がでる
③青色申告での赤字相殺効果は3年間
④減価償却は毎年強制償却
【法人で不動産投資を行う場合】
メリット
①法人課税率が年々減少する傾向にあるため大きな節税効果が生まれる
②法人にかかる費用はすべて経費として計上可能
③青色申告での赤字申告は欠損金として10年間相殺繰り越し可能(平成29年4月以降の事業年度に発生したもの限る)
④相続税が発生しない
⑤任意償却が可能
デメリット
①投資物件を売却した場合の売却益も含め、課税対象となる所得に含まなければいけないため、課税率が高まる可能性がある
②法人にかかる税金などのコストがかかるため、ある程度以上の家賃収入が見込めなければ赤字経営に陥る
法人化する場合に最適なタイミング
法人化の実現には最適なタイミングが存在します。では、ポイントをみていきましょう。
①年間の給与所得が1,300万円以上見込まれる時
個人の場合、給与所得と不動産収入の合算が「総所得」と見なされます。
給与所得分には既に所得税が源泉徴収されていますが、不動産収入に関しては確定申告をする必要があります。
確定申告にて所得税を計上し納付する仕組みですが、給与所得がある場合は不動産所得に対してもその課税率で所得税が算出されてしまいます。
高所得者であるほど不動産収入の半額近くを税金として納付しなければいけなくなるため、法人設立によって節税することが推奨されます。
②年間の不動産所得が900万円を超える時
給与所得が少ない場合でも、年間の個人不動産所得が900万円を超える場合には、次の物件を購入するタイミングで法人設立を行うことで節税効果が生まれます。
マンションの区分購入など年間100万円未満の家賃収入を見込んだ購入であれば、課税率は変わらないため個人所有のままでも良いかもしれません。
将来的に手広く不動産経営に携わりたいという場合は、早い段階で法人設立を検討すべきでしょう。
③不動産投資を始めようとする今
高所得者層の場合「これから不動産投資を始める」というタイミングで法人を設立することがベストです。
法人設立のために費用がかかりますが、経費として計上することができますし、個人所有の資産を法人名義に登記し直すという場合にも費用や時間がかかります。
また、設立したばかりの法人でも、自己資金があるなどの条件が整えば不動産投資のための融資が可能になるケースがほとんどです。法人格を持つことで信用度も上がります。
法人化するための大まかな流れ
法人設立は時間と費用がかかる行為ですので、余裕を持って行動することをおすすめします。
会社設立に長けている司法書士を頼ることで、スピーディーに定款の作成や認証手続き等が進みます。
不動産事業について法人化を試みるための流れを説明します。
ここでは一般的な株式会社化を前提にまとめました。それではみていきましょう。
①会社設立準備
どのような事業を行うのか(ここでは不動産の賃貸事業)設立項目の決定を行います。
また社名がきまったら、代表者印を作成します。
この印鑑は会社の実印と見なされます。
②定款の作成と認証
会社の約束事である定款を作成します。
会社法に基づいて必要事項を盛り込むことが必須です。
定款には会社の住所や保有する株式の数、役員の任期などを記します。
でき上がった定款は公証役場で認証を得ることが必須です。
③資本金の払い込み
準備した資本金を会社発起人個人の銀行口座に入金し、銀行から払込証明書をもらい受ける。
通帳のコピーと払込証明書をセットにし、登記書類に添付する資料とします。
④登記書類の作成
会社登記を行うため、登記申請書を作成します。
定款の作成から登記申請書の作成までは司法書士・行政書士に依頼するとスムーズです。
⑤会社設立登記
代表取締役となる方もしくは司法書士が法務局に出向き書類を提出し会社設立登記を行います。
内容に問題がなければ、1週間程度で会社登記が完了します。
登記簿謄本と印鑑証明書を取得しましょう。
⑥開業の届け出を行う
会社名義の銀行口座を開設するほか、税務署に開業の旨を届け出します。
その際に青色申告承認申請書を提出すると良いでしょう。
⑦設立完了・業務開始
ここから会社としての不動産事業を進めることができます。
法人格を持って不動産投資を行う場合のボーダーラインについてまとめました。
簡単に法人登記のプロセスもまとめましたので、これから不動産投資を検討している方は法人化も視野に入れながら今後の展望を見極めていくことが大切です。