医師のみなさんはどのようして収入をあげていますか? 当直やアルバイトなどで収入を増やす方もいますが、医療経験を生かした新規事業というチャレンジングな選択肢もあり得るでしょう。
今回は医学生時代から事業を興した経験のあるH先生に、また医師でありながら大家業を営むS先生に、事業内容やそれに伴う税金対策などについてお話を伺いました。キャリアアップを考える医師の方はぜひ参考にしてみてくださいね。
医学生時代に始めたネット事業が功を奏した!
H先生が初めて自分で事業を始めたのは医学生の時。「当時趣味で作っていた、地元に関するホームページがあったんです。そこに医学生の家庭教師について情報を載せ始めたのがきっかけでした」と語ります。当時の私の地元の家庭教師事情といえば、医学生であってもそうでなくても一律の時給であるケースがほとんどでした。
そこに目をつけたH先生は、医学生を「青田買い」して、医学生の家庭教師なら相場よりも1500円高く時給を払ってもいいという家庭と結びつける仕組みを考案。自身のホームページでサービスの提供を開始しました。
「これが結構人気になって、当時Googleの検索窓で『○○市 家庭教師』といれて検索すると、自分のホームページが一番上に表示されるようになったんです」とH先生。SEOについての知識もそのときに培ったといいます。「家庭教師の問い合わせでホームページから電話をかけてくる人が増えて、授業中によく電話が鳴って大変でした(笑)」と当時を振り返ります。
収入アップと税金対策は切っても切り離せない. 不動産投資のきっかけ
医学部を卒業し研修医として勤め始めたころ、前述のホームページを他会社に売却したH先生。次に思いついたのが、SEOに着目した求人広告の運用でした。
「SEO対策を万全にしてGoogleの検索結果で上位に表示されることが、どれだけ事業の成功を左右するかというのはよく分かっていました。それに加えて着目したのが医師向けの転職サイトです」とH先生。自らも医師として働く傍ら、医師向けの転職サイトを手がけるように。「広告単価が高くて、僕のサイトを経由して転職した場合は一人につき10万円くらいの報酬がもらえたんです」と話します。
初めは数人だった転職人数も徐々に増えていき、医師の年収と合わせると税金対策が必要なまでになったそう。「そこで対策として法人化したものの、利益率が高くキャッシュが余ったため不動産投資を開始しました」と話します。
悪質コンサルタントに要注意!
次にお話を伺ったS先生は、医師として働く傍ら大家業を営んでいます。きっかけはリハビリ病院に勤めていた時に、「高齢者が賃貸を借りにくく、リハビリ後の生活に必要なバリアフリーの物件に移り住むことが難しい」という現実を目の当たりにしたことからでした。
最初の大家業は東京都内のマンションでしたが、「トラブルなく家賃が定期的に入ってくるのは良いのですが、まったく経験値にならないことに不満を感じていました」といいます。「不動産業は間違った物件を買うと一文も入らず撤退、といったこともあり得る業種です。これから大家業を拡大していくことを考えると、実践を通して知識を身につけていく必要がありました」とS先生。そして、とあるコンサルタント集団に入ることを決意しました。
「年会費は200数万円と決して安くはない額でしたが、『受講生の9割が20パーセントの利回りを出している』という宣伝文句や、特許申請もしているという独自のノウハウに惹かれたというS先生。将来を見据えた決断をと思い、入会に至りました。
しかし、入会して1年も経たないうちに暗雲が立ち込め始めます。最初はS先生からの質問にもなんとなく答えてくれていた担当者でしたが、屋根のリフォームについて質問をした際に「この場合は50万円ですね」「100万円くらいかもしれません」「150万円ほどかかるでしょう」と、聞くたびに金額が変わるようになっていったそうです。だんだんと不信感が募っていき、ほかに同じ思いをしていた入会者とともに集団訴訟に発展するまでに。
「不動産投資に関して全くの初心者だったので、購入への背中を押してもらったのは良かったのですが、さすがに大金を払ったのにこの対応は無いなと。残念ですね」とS先生は苦笑いしながら振り返ります。
まとめ
勤務医であれば、当直やバイトをするなどして収入アップを目指すのも一つの手でしょう。それでも違う道を選んだH先生とS先生に共通するのは「自分で考えたスキームで利益を生み出すことへの興味」にあると筆者は感じます。二人とも医療経験を積むなかで世の中の課題を鋭く見つけ、そこに需要を見出し、ビジネスとうまく結び付けています。
またH先生のように、副業で年収が増えて税金対策が必要になった場合、不動産投資という選択肢は一般的になりつつあるように感じます。またS先生の場合は大家業としての不動産投資ですが、悪質なコンサルタントには十分に注意していきたいですね。