現在医師をされている方であれば、我が子にも同じように医師になってほしいと思う方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。子どもを医学部に進学させる場合、多くの費用が必要です。選択肢によってかかる費用が大きく異なるため、それぞれいくら教育費がかかるのか把握しておくことが大切です。今回は、幼稚園から大学までのパターン別の教育費、学校外でかかる費用などを紹介します。
(※各調査の数値は2023年5月時点で公表されているものを記載しています)
子どもを医者にするためにはいくらかかる?
【最安コース】幼稚園から高校までオール公立、国立医学部、自宅から通学の場合
幼稚園から大学まですべて国公立学校に通った場合に必要な教育費を見ていきましょう。
幼稚園から高校まですべて公立学校に通った場合、子ども1人当たりの学習費総額は、幼稚園は約47万円、小学校は約211万円、中学校は約162万円、高等学校(全日制)は約154万円となっています。15年間の合計は約574万円です。なお、ここでいう学習費総額とは学校教育費、学校給⾷費、学校外活動費合わせての費用を意味します。
その後、みごと国立大学の医学部に合格したとします。国立大学の入学金と授業料は国が標準額を定めており、入学金は28万2,000円、年間授業料は53万5,800円です。医学部だと6年間在学することになりますので、合計は約350万円となります。
(※文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」、文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」をもとに独自に算出)
これらをすべて合計すると、幼稚園から大学までにかかる教育費用は約924万円となりました。後述するオール私立のケースと比較しても大幅に費用を抑えて医者を目指すことができますが、かなりレアなケースでしょう。
なお、実際の調査によると国立大学における子ども1人当たりの入学費用は約67万2,000円、1年間の在学費用は約103万5,000円という結果が出ています。ここでいう入学費用は受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金の合計です。また、在学費用には授業料に加えて通学費や教材費なども含まれているため、より現実に近い金額だと考えられます。この場合、幼稚園から大学までの総額は約1,262万円となります。
【高額コース】幼稚園から高校までオール私立、私立医学部、下宿の場合
次に、幼稚園から大学まですべて私立学校に通った場合に必要な教育費を見ていきます。
私立の場合、子ども1人当たりの学習費総額は、幼稚園は約92万円、小学校は約1,000万円、中学校は約430万円、高等学校(全日制)は約316万円となっています。15年間の合計は約1,838万円です。
私立大学医学部の場合、6年間の総費用が最も安くて約1,850万円、最も高いところで約4,736万円というように、大学によって大きな差があります。2,000万円から4,000万円の間は見ておいたほうがいいでしょう。
私立大学医学部の学費を平均の約3,400万円で考えた場合、幼稚園から大学までにかかる教育費用は約5,238万円です。【最安コース】のオール公立の場合と比較すると5~6倍の差があることになります。
これだけでもかなりの金額ですが、下宿をする場合はさらに上乗せされていきます。下宿を始めるための費用(アパートの敷金や家財道具の購入費など)の平均は約39万円、仕送り額は年間平均約96万円(月額約8万円)となっており、6年間の総額は615万円が平均的なようです。
(※文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」、文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」をもとに独自に算出)
学校外の教育費の相場は?
予備校や受験費用でトータルの教育費は大きく左右される
大学進学にかかる費用は学校の入学金や授業料だけではありません。小・中学生からの塾代や家庭教師代、高校生になれば医学部受験の進学塾や予備校の費用など上限はありません。私立であれば複数の学校を受験することになるでしょう。遠方の大学を受験する場合は新幹線や飛行機などの交通費、ホテル代なども必要です。
予備校は集団か個別か、国立か私立かなどコースによって学費に大きな差がありますが、総合予備校だと50~300万円、医学部専門予備校だと100~600万円が相場のようです。ただし、これらはあくまで基本的な授業料であり、夏期講習・冬期講習やオプション講座を受ける場合には別途料金がかかります。
※参考:医学部予備校ガイド</a >
受験費用については理系私立大学の受験費用(受験料、交通費、宿泊費、入学しなかった学校への納付金)は理系で約42.2万円というデータが出ています。私立大学の受験方式は共通テスト利用方式と一般方式があり、共通テスト利用方式の受験料は3万5,000~5万円、一般方式は6万円の学校が多くなっているもの一つの目安です。
※文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」をもとに独自に算出
※参考:医学部進学予備校メビオ</a >
ここまでの数字はすべて子ども1人当たりにかかる費用です。子どもが2人、3人と増えれば、当然その分教育費も比例して高くなっていきます。
医学部進学に向けて教育費の準備は余裕をもって行おう
子どもを医学部に進学させるためにはたくさんのお金が必要なことが分かりました。経済的な理由で学費を支払うことが困難な場合、日本学生支援機構をはじめ地方自治体や民間、大学などが用意している奨学金制度を活用できる場合もあります。他の制度との併用可否や、利息の有無、卒業後の進路選択の制限など条件は様々ですので、事前にしっかり確認しておくことが大切です。
また、将来のために今のうちから資産形成・資産運用などで資金を確保しておくことも重要です。手段としては、収入から貯蓄する積立貯金や定期預金、子どもの教育資金の準備を目的とした学資保険、投資信託などがあります。効率良く教育費を貯める方法として有効ですのでチェックしておきましょう。
子どもが独立した後の老後資金も忘れてはいけません。「老後2000万円問題」が一時期話題になったように、老後を年金だけで過ごすことはもはや難しいとされています。将来に必要な資金がいくらなのかしっかりシミュレーションを行い、少額から手軽に始められるつみたてNISAやiDeCoなどを活用して老後に備えておくことをおすすめします。