クリニックって、潰れる時はどうやって潰れるのか?
考えたことはありませんでしょうか。
今回は、僕が見聞きした中で、個人が特定できない範囲で、簡単に紹介しようと思います。
これから開業を考えている先生はもちろん、既に開業されている先生や、研修医の方も参考になると思います。
それではどうぞ。
大繁盛のウハクリが、雪崩のように潰れた理由
大繁盛だったウハウハクリニック(ウハクリ)も、雪崩のように潰れたという話を聞きました。
まず、かなり売上も利益も伸びてきて、院長はかなり調子に乗っていたようです。金遣いも荒くなり、その金に人が群がってきて、まるで自分が偉くなったような気がして、態度も横柄になっていきました。
それは当然、日常診療も出てきます。患者さんはまだ大丈夫ですが、スタッフに対しての当たりが強くなったり、まだ患者さんがいるのに仕事が終わると先に帰ってしまったり、予約の時間に遅れてきたり…やりたい放題だったようです。
結果、スタッフの心は完全に離れていき、離職が増加。残されたスタッフも、スタッフ1人あたりの仕事量が増え、ストレスを抱えて数人が休職。急いで紹介会社から人材補填をさせるも、色々なところから集められた即席の人材で、既存のスタッフからの研修や知見の共有もなく、混乱。
現場のクオリティが下がって、患者さんも少しずつ離れていったようです。
これだけだと、まだ潰れるまでには至らないのでは?と思いますよね。
ここで、拍車をかけたのが税金です。
一気に膨らんだ売上に対して、ガツンと税金がかかります。しかし現状は売上も低迷し、スタッフの統制が全く取れておらず、辞めては入れ辞めて入れ、人材紹介会社に支払う紹介料が膨大になり、結果税金の支払いが困難に。
税金の支払いというタイムラグと、スタッフの離職。この2つが原因ですが、この2つを招いたのは、院長の慢心です。
税金の支払いをきっちり理解し、その分のプール金を貯めておいて、業務が増えて大変なスタッフのマネジメントもこまめに行って、適宜人材を補充して育成し、うまく拡大していれば、今もなおウハクリとして存在していたかもしれません。
開業してお金が儲かったからといって、天狗にはなっていけない。自制心が大事だという事がわかる事例でした。
開業5ヶ月で、クリニックが潰れた理由
よし、これで晴れて開業医だ!
開業という大きな決断をし、開業準備に奔走、あーでもないこーでもないと言いながら、毎晩遅くまで準備に取り掛かり、やっとの思いで開業。
しかし、たった5ヶ月で潰れてしまった…。
そんな事例があります。
これの原因は、たった1つ。資金繰りです。いわゆる焦げ付きですね。
このケースの原因として
1.想定していたより全然、集客がうまく行かなかった
2.想定していたよりも、手元から出ていくお金が多かった
の、概ねどちらかになると、思っている方は、危険です。
今回のケースは、話によればそれほど集客がうまくいっていないわけでもなく、ソコソコ患者さんも来ていたようです。
特別、大きな追加の出費も無かったようです。ただ開業にあたって、少し発生した追加費用がありましたが、これに関してはそんな大した金額ではなかったので、開業された先生のポケットマネーで補填しておりました。
これの何が問題だったのでしょうか?
答えは単純明快で、銀行から借りておくお金を減らし過ぎました。借金するのをケチったという事です。
まず大前提として、銀行はお金に困ってから借りに行くと、当然のことながら貸してくれません。貸しても帰ってこないからです。
銀行からお金を借りる場合は、基本的にはお金に余裕がある時に限ります。
しかしながらこの先生は、銀行に支払う金利をかなり嫌っており、なるべく借金の金額を抑えた状態で、今までの貯金で可能な限り賄おうとしました。
すると口座にあるお金は、結構ギリになってしまったわけです。その上、開業時の追加発生費用を後からさらに補填で出して、結構なギリギリの資金繰りでスタートしました。
そこからスタッフを雇用して給料を出して、そのスタッフを雇用するために使った人材紹介会社のフィーが思ったより高くつきましたがそれも当然しっかり払うと、開業して少しして、全く口座にお金がないことに気がつきます。
あとは診療報酬がすぐに入れば問題ないだろうと考えていましたが、診療報酬は実際に診察した日から入金されるまではタイムラグがあることを加味しておらず、結局入金が焦げつき始め、すぐにスタッフの給料が払えなくなり、トラブル化。診察どころではなくなってしまい、当然ながらそのまま患者さんも増えることなく…あえなく5ヶ月で廃業したそうです。
開業とは経営であり、経営とは資金繰りです。すなわち、開業とは資金繰りと言っても過言ではありません。医業に力を入れるのは当然でしょうが、経営者としての仕事を怠ることは、開業するなら許されることではないという事ですね…。
特に、保険診療の場合の入金タイムラグは、計算して多めにお金を借りておかないと、今回のような事になってしまいます。なるべく多めにお金は借りて、金利は安全費用だと思って、しっかり払いましょう。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。