こんにちは、医師で不動産投資家の大石です。前回の記事<医師×不動産投資、法人設立で節税するって?>では、法人設立で節税する話を書きました。なんとなく「経費」っていう言葉の響きが、良いですよね(笑)
さて今回は
「法人設立せずに個人所有でも、不動産投資で節税ってできないのか?」
という声にお答えしたいと思います。
減価償却について理解しよう
まずその前に、減価償却について、簡単に理解しておく必要があります。
減価償却とは、簡単に言うと
「時間経過で価値を失うものを、時間あたりで経費にしていく」
という考え方です。
例えば、新車は6年で減価償却し、中古車は4年で減価償却すると決まっております。
1200万円の車があったとして、新車であれば年間200万円を減価償却として経費にして、中古車であれば年間300万円を経費にするというわけです。
減価償却が終わったあとは、簿価上は価値がゼロになっています。
しかし実際には、例えば1200万円で買った新車も7年後にゼロにはなりませんよね。
例えば300万円で売れたとします。
そうすると、1200万円で買って300万円で売ったわけですから、900万円損をしているように見えますが、簿価上価値がゼロのものを300万円で売ったわけですので、300万円の利益が出たと考えて、300万円の利益に対しては課税されます。
仮に税率が30%だったとすると、新車の1200万円の車は年間200万円の減価償却があったため、200万円×30%=60万円が毎年浮いていて、それが6年間ですから、年間360万円の節税効果があったという事になります。
これは、1200万円を払った原資である1200万円そのものに対する30%の課税、360万円と一致します。
本来儲かった1200万円を、360万円の税金を支払って、手元に840万円残しておくか、1200万円の車を購入し減価償却で段階的に経費にする事で、段階的に「本来支払う360万円」を免れて、車に乗るか、という事柄の比較になります。
しかし売却時の300万円に、30%、つまり90万円の課税がかかります。手元に残るのは210万円です。
1200万円儲かって、30%の課税で360万円を支払い、840万円手元に残すか。
1200万円儲かって、1200万円の車を購入し、6年間車を乗って楽しんで、60万円×6年=360万円の節税効果を享受して、手元に210万円残すか。
どちらを選ぶのか、という話になります。
悩ましいですよね。
このように、減価償却と税金の話は、数字で一概にどちらが有利かを完全に決定する事はできません。
この場合なら、手元にお金を残したいなら前者を、車が本当に必要であれば後者を選べば、良いのかなって思いませんか。
実際の数字を追う事も大事ですが、トータルの使用感も含めて、総合的に比較するべきなのが、この減価償却と税金の概念です。
不動産投資における減価償却
ちょっと話が複雑になり過ぎましたので、不動産と減価償却の話に戻します。
不動産にも、建物部分は時間経過で価値を失うので、減価償却が適応されます。年数については
RC=47年
鉄骨=34年
木造=22年
軽量鉄骨=17〜19年
と、決まっています。
流石に、建物は車に比べると長く設定されていますね。この年数を耐用年数と呼びます。
例えば、築17年のRCであれば、耐用年数が47年なので、残存年数が30年ですから、建物部分6000万円、土地3000万円の合計9000万円で購入したとして、年間6000万円/30=200万円の減価償却が、30年可能というわけですね。
逆に、耐用年数が切れた物件は、木造なら4年、鉄骨なら6年で償却できます。
例えば築25年の木造、建物が2000万円、土地が1500万円の合計3500万円ならば、4年で2000万円を減価償却するので年間500万円が、償却できます。
このように、トータル金額が少なくても、耐用年数が切れた築古不動産は短期で一気に償却できるため、個人所有で個人の所得にぶつける事で、節税効果が築浅不動産に比べて、出やすいと言えます。
医師×不動産投資、個人所有で節税する方法
具体的に計算してみましょう。
医師、税率40%(ここでは簡便のために、一律課税)が、築古物件を4000万円(建物2400万円、土地1600万円)、利回り10%(年間家賃400万円)を、現金一括で購入したとします。
減価償却は
2400万円/4=600万円/年
です。
これを償却が終わって6年目、3000万円で売却したとしましょう。
数字だけ見ると、4000万円で購入していますから、1000万円損したように見えますよね。
実際はどうなのでしょうか?
まず、節税効果分。年間600万円の減価償却があり、ここに本来かかる税率40%が控除されているので、年間240万円が節税されています。
これが4年間で、960万円です。
さらに、家賃が年間400万円ですから、5年保有して家賃が2000万円、入ってきます。40%課税されるとして、手元に残るのは1200万円です。
さらに、償却後は簿価上建物価値がゼロなので、土地の1600万円分の価値しか残っていません。それを3000万円で売却したので、差額の1400万円が利益として計算されます。
ただし、この時の1400万円の利益は、長期譲渡扱いになるので、税率が20%になります。ここがミソです。
税金は280万円のみ支払います。手元には3000万円から280万円の税金を差し引いて、2720万円が残ります。
節税効果が960万円、手元に残った家賃が1200万円、売却後の手残りが2720万円です。総合計で、手元には4880万円あります。
この数字は税引後の値です。手元にあった4000万円が、4880万円になりました。880万円はトータルのプラス分です。
売買の手数料、固定資産税等もかかりますので、それらが物件価格の5%程度として、350万円ほど差し引いても、550万円ほどはプラス分として手元に残り、合計4550万円くらいにはなります。
5年で550万円ですので、年間約110万円くらいは、この不動産投資によってトータルでプラスになっているという事になります。
いかがでしょうか。
お分かりいただけたと思いますが、これらは
● 物件の築年数
● 購入価格
● 建物:土地の比率(多くの場合、固定資産税評価額で按分)
● 利回り
● 売却価格
● 個人の所得税率
という要素が複雑に絡み合っています。
特に売却価格は、未来の値なので完全な予想はできません。
しかしこの数字は、決して非現実的な数字ではなく、かなり現実的な数字だと思います。
これくらいの数字が出る前提で、まずは税理士含めた不動産関連のプロに話をしてみるのがオススメです。
当然ですが、年収が高ければ高いほど、同じ減価償却でも節税効果が大きくなります。
自分の年収だとトータルでどれくらいの得になりそうなのか、計算してもらうのが良いでしょう。
また不動産初心者の先生の場合、1棟の価格帯は怖いという先生もいらっしゃると思います。その場合、中古の区分で減価償却を狙っていくのも、良いでしょう。その辺りも含め、まずはプロに相談ですね。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。
URL:https://bluestorage.co.jp/
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