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    厚生労働省はまるで「強制労働省」? 医系技官経験者に聞く | 勤務医ドットコム

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    厚生労働省はまるで「強制労働省」? 医系技官経験者に聞く

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    厚生労働省には「医系技官」と呼ばれる医師免許を必要とするポジションが存在します。採用試験は年2回、6月と11月に実施されますが、卒後年数や年齢の制限はなく、医師免許を保有していれば誰にでもチャンスのある仕事です。とはいえ、その実態はあまり知られていないのも事実。

    今回は、過去に医系技官として勤務経験のある先生にお話を伺いました。ご協力いただいたのは、大学病院に10年間勤務したのち、厚生労働省医系技官として1年間従事し、その後フリーランスを経て現在はクリニックを開業されている渡邊譲先生です。

    ――渡邊先生は医系技官として厚生労働省で勤務した経験をお持ちですね。

    渡邊先生:厚生労働省の3分の1は正規従業員なのですが、3分の1は外部からの出向者で構成されています。大学病院に「人材を派遣してほしい」という依頼が来て、それに応える形で厚生労働省に行くことが多いですね。反対に、厚生労働省から大学に職員が来るケースもあります。

    「出向してほしい」という打診があった場合でも、断ることはもちろん可能です。僕の場合は、ほかの医師が次々に断ったのでこちらに話が来たという感じですね。厚生労働省で働いたらどうなるかという興味があって、受けることにしました。

    ――実際に働いてみていかがでしたか? たとえば、給料はいかがでしょうか?

    渡邊先生:出向を命じられた人は、給料が爆下がりするというのでビビりながらやってきます(笑)。僕の場合は、給与が大学病院時代の3分の1くらいまで下がりました。額面で30万円くらいですね。当時、大学院に通っていたこともあって生活が苦しくて、業務用スーパーを活用して食費を切り詰めていました。

    肩書きは国家公務員なので、9時〜17時で働けばいいのかと思っていたのですが、全然そんなことはなかったですね。むしろ、過酷な勤務状況でした……。規則では18時になったら勤務が終わりなので「省の建物から出ましょう」という意味で、部屋の電気が一斉に消えるんです。でも、当然業務はまだまだ残っています。ということで、15分後にまた電気がついて、夜の業務再開(笑)。みんな、すぐに黙って働き始めます。それが毎日のことなのに、働き方改革についての会議をまじめにしているのを見て、すごい職場だなと思いました。​

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    一緒に働いている人と連絡が取れなくなることも。勤務時間の長さで心にも大きな負荷がかかり……。

    ――印象に残っているエピソードを教えてください。

    渡邊先生:先ほどお話しした「20時に一応、ポーズとして電気を消す」時には、「これじゃ厚生労働省じゃなくて、強制労働省だよ……」とみんなで言い合っていました。ちなみに、経済産業省も残業がすごく多くて、あちらは「経済残業省」と言われているみたいでしたね(笑)。

    確かに勤務は過酷でした。日付が変わる前、24時より前に帰れることはほとんどありません。だから毎日、タクシーで帰宅することになります。庁舎を出ると、「静岡くらいまで遠いところに帰る人はここ」「千葉の船橋くらいの距離の人はここ」など、行き先の方面ごとに分かれてタクシーが並んでいます。なぜか、列を間違えると運転手さんに怒られる(笑)。毎日、遠距離のお客さんが乗せられるので、「厚生労働省専門」で働いているタクシードライバーさんもいたみたいです。

    ――それくらい厳しい職場なら、働く人は大変ですね。

    渡邊先生:そうなんです。1年もすると、3分の1くらいの人がいなくなっています。前日までメールでやりとりしていた人から返信が来なくなるということがよくありました。退職したのか、それとも休職しているのかもよくわからないんです。退職する人もいれば、職場に来られなくなるケースもあるんでしょうけど、本人と連絡がつかなくなるので……。デスクに電話をしてみると、ほかの人が出て「〇〇さんは最近、来ていないんですよ」と言われて困るということがよくありました。

    僕の前に大学から出向した先輩はうつ病になってしまって、職場を変えてもらったと聞きました。単に勤務時間が長いだけではなくて、ストレスフルな職場であることは間違いありませんね。

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    給料が安くても「国のために」と働く、志の高い人も

    ――医系技官には出向者の他にも、ずっと厚労省で勤務されている方もいらっしゃると思いますが、正規の職員の方についてはいかがですか?

    渡邊先生:もともといる、いわゆるプロパーの厚労省職員の方たちは志がものすごく高いです。給料は低くても「国のために」という思いで働いている人がたくさんいて、「本当にすごいなあ」と思って見ていました。

    私は大学病院からの出向でしたが、やりがいの面でいえば、医療に関する法律をつくったり、制度を整えたりという部分を担っていたのでやりがいを感じましたし、医療の成り立ちについて学ぶことができ勉強になりました。当時、僕は医療広告を担当していたんですが、医療に関する知識のない人が騙されないために薬機法で制限をきっちりかけるための仕組みづくりを行っていました。例えば、「安い」とか「安全」という表現はNGだとかです。

    厚生労働省で働いたおかげでそういう知識が身につきました。現在は開業してクリニックを経営しているのですが、いざ自分が広告を出したり、文章をつくったりする時にとても役に立っています。「ここまではOKだけど、これ以上はダメ」というのがわかったうえで、どこに抜け道があるのかも知り尽くしているので、医系技官時代の経験が生かされていますね。

    ――渡邊先生、本日は貴重なお話をありがとうございました。

    取材協力:渡邊譲
    健康長寿ゆずるクリニック 院長
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