資産運用では、リスク分散する観点から資金のすべてを1つの投資先に集中させることは推進されません。リスクの度合いによって投資先を分けその内訳を考慮しながら組み合わせを構築していくのが基本です。このように投資先を組み合わせる内訳のことをポートフォリオといいます。ポートフォリオは、収入や資産運用の目的、年齢などによって最適な内訳が異なるのが特徴です。
特に年齢が若い人は資産を運用できる時間が長く現役世代として本業の収入も長期間期待できるため、ポートフォリオの構築においても有利な立場にあります。30代の人たちは、収入面でも運用に回せるお金が多くなる一方で運用の時間が十分にある傾向のため、最も有利な位置にあるといってもよいでしょう。
30代の人たちにとって最適なポートフォリオとはどんなものでしょうか。今回は、30代の人たちの視点でおすすめのポートフォリオを紹介します。
30代の資産運用ポートフォリオの基本的な考え方
30代の人たちが資産運用の際に有利といわれるのは、時間的価値があるからです。時間的価値とは、運用によって複利効果を活かせる時間が長いだけでなく万が一運用に失敗して資産を毀損した場合でも本業の収入でリカバー能力もあるため、「リスクの高い投資をするだけの余地がある」ということ。リスクを取ることができるため、利回りの高い運用方法も選択肢に入れることができます。
ただしここでいう「リスクを取る」というのは、株やFXの短期売買など投機性の高い投資ではありません。投機性の高い投資をやってはいけないことではありませんがあくまでもポートフォリオの一部として仮にその投資分の全額を失っても許容できる範囲にしておくことが賢明です。一般的な30代におすすめのポートフォリオには以下のようなものがあります。
* 株式型のETFや投資信託などをリスク資産として積極的に組み込む
* その他には不動産などミドルリスクの資産も組み込む
* 国債など利回りが低いもののローリスクな資産を少し組み込む
30代が「まだまだ攻める年代」である理由
30代は時間的価値があるだけでなく「まだ攻めることができる年代」です。その立場を十分に利用することを念頭においておきましょう。資産運用では、運用益も投資に回すことで雪だるま式に資産を増やす複利効果が大きな意味を持ちます。複利効果は、時間が経つほど大きくなるため、時間的価値があることはそれだけで資産を増やすチャンスに恵まれていることになるのです。
資産運用の世界に「72の法則」と呼ばれる計算方法があります。72を運用利回り(%)で割ると資産が倍になるまでの年数がわかる非常にシンプルな計算式です。例えば年利4%で運用している場合、「72÷4=18」となるため、18年で資産が倍になります。30代の人にとっての18年後は、まだまだ現役世代となる可能性が高いです。
つまり現役世代のうちに資産を倍増させるチャンス(つまり時間的価値)があるといえます。一方で30代は、結婚や子どもの教育資金、マイホーム購入などまとまったお金が出ていく人も少なくありません。そのため世帯によっては運用に回せる金額に制約があるケースもあるでしょう。だからこそ複利効果の時間的価値を味方にしながら少しでも早く運用を始めて長い運用期間を確保することが賢明です。
30代はまだ攻めのスタンスを取ることができるとはいっても全資産をリスク資産で運用することはやめましょう。一般的に100から年齢を引いた数値がリスク資産に投資をしてもよい比率といわれています。例えば35歳であれば「100-35=65」となるため、リスク資産の比率は最大でも65%が目安です。
30代のポートフォリオで検討したい投資商品
「リスク資産」には、どんなものがあるのでしょうか。一般的には、現物株や株式型の投資信託、ETF、REIT、米国のETFなどが該当します。現物株は、主に大型株のことを指し短期的に株価の変動益を狙うのではなく配当収入を得ながら長期的な株価上昇を狙うのが基本です。その他には、FXの高金利通貨スワップも考えられます。
しかしFXの場合は、レバレッジを高く設定することもできるため、短期投資ではなくてもリスクが高くなりかねません。あくまでも上記のリスク資産よりもハイリスクな点を念頭に置きポートフォリオの一部として検討してください。こうしたリスク資産は、原則として余剰資金で運用することが原則です。資産の中には、教育資金など今すぐは必要ないものの将来の使い道が決まっているお金があります。
こういった資金は、運用で失敗できないため、国債などローリスク型の運用がおすすめです。
30代からの資産運用で実践したい「勝ちパターン」
リスク資産をポートフォリオの中で多めに組み込むことができることは、30代など若い人の特権です。しかしこれらのリスク資産はいずれも価格が変動するため、どうしてもそのリスクと向き合うことになります。価格変動リスクをうまく抑え時間的価値を味方につける方法として「ドルコスト平均法」を紹介します。
ドルコスト平均法とは、毎月など決まった周期で一定額ずつ投資をする手法のことです。例えばある株式型のETFを長期的に積立投資していくとしましょう。株式型なのでETFを構成している株式の株価変動によってETFの価格も変動します。しかしこれを一定額ずつ買い進めることによって「価格が安いときには多く買い高いときには少なく買う」といったことを続けていくことが可能です。
これにより取得額が平均化かつ長期間になるほど価格変動リスクを低減することができます。投資家は、ポートフォリオの組成によって投資先の分散をするだけでなく投資のタイミングを分散することにより時間軸のリスク分散が実現。まさに時間的価値を味方につける手法のため、ドルコスト平均法がすべての投資家にとって最強の「勝ちパターン」といわれている理由です。
30代は年齢的に若いことからまだまだ投資に回せるお金は少ない人もいるかもしれません。しかし毎月数万円といったように一定額であれば投資に回すことができる方は多いのではないでしょうか。コツコツと積立投資をしていくことで自然にドルコスト平均法が実践されキャピタルリスク(価格変動リスク)を抑えることが可能です。
さらにもう1つ、30代にとって強い味方となるのが税制面での優遇制度です。「つみたてNISA」と「iDeco」については名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。いずれも一定範囲までの運用益が非課税となる有利な制度で積立投資をする方はぜひ利用したいところです。
・ つみたてNISA
指定の投資信託に対して積立投資をした場合、そこから得られた分配金や譲渡益といった運用益について毎年40万円の新規投資額まで最長20年間にわたって非課税になる制度です。30歳から始めたとしても50歳まで適用でき、最大800万円分の投資に対する利益が非課税となる可能性があるため、利用しない手はありません。
・ iDeco(イデコ)
老後のために積立投資をするのに適した制度で公的年金に加えて自分で掛ける年金(確定拠出年金といいます)の掛金が所得控除扱いになり運用益も非課税になるという優遇制度です。60歳まで原則として引き出すことができないため、老後資金の構築に特化した制度と位置付けられています。税金として差し引かれる分も含めて老後資金として資産形成ができる有利な制度です。
ポートフォリオに関するよくある質問
Q.そもそもポートフォリオとは何ですか?
金融商品の組み合わせのことをいいます。リスクを分散する観点から投資先を分け、その内訳を考えながら組み合わせることが大切です。
Q.なぜ30代の方々が資産運用に有利なの?
リスクの高い投資に万が一失敗しても、本業の収入でリカバーする能力がある「時間的価値」があるから。まだまだ攻めることができる年代で、時間が経つほど複利効果が大きくなるため、資産を増やすチャンスがあります。ただし、全資産を運用するのは控えましょう。
Q.30代におすすめしたいポートフォリオとは?
* 現物株や株式型の投資信託
* ETF、REIT、米国のETF
* 国債
* つみたてNISA
* iDeco(イデコ)など