何かと話題に事欠かないふるさと納税ですが、近年では人気の返礼品がある程度固まってきた感もあり、制度として定着してきた印象を受けます。この記事を読んでいる方の中にもすでにふるさと納税を経験した方は多いかもしれません。ふるさと納税の返礼品としては、和牛や果物などご当地の高級食材が目立つことから「こうした返礼品をもらうための制度」とイメージしている方もいるでしょう。
しかし実際にはそれ以外にも実に多彩な返礼品が用意されており、こうした高級食材はほんの一部にすぎません。そこで今回は、すでに制度として定着しつつあるふるさと納税について当メディアの読者層に多い年収1,000万円以上の医師(勤務医)におすすめの攻略法や返礼品を紹介します。高所得者には、高所得者ならではの楽しみ方があるのでぜひご参考にしてください。
1.ふるさと納税の仕組みを簡単におさらい
最初にふるさと納税を利用したことがない人に向けて、ふるさと納税の制度について簡単におさらいをしておきましょう。ふるさと納税とは、自治体に対する寄附の制度です。単に寄附をするだけだと利用者にメリットはありませんが、自治体はその寄附に対して返礼品を出すことができます。また自治体に寄附をした金額は2,000円を除いた金額を所得控除することが可能です。
節税の恩恵を受けながら自分の好きな自治体に納税し返礼品がもらえるため、納税額が同じでも返礼品の分だけ経済的なメリットが得られる点は大きな魅力といえるでしょう。納税者にとって非常にお得な制度のため、ふるさと納税は制度開始当初から高い人気を維持しています。
さらに利用者にとっては「普段買わないようなものをもらえる楽しみ」「自分の出身地や被災地など思い入れのある自治体に実質的な納税ができる」といった点も大きなメリットです。「ふるさと」という名称から「寄附先は自分自身の出身地でなければならない」という誤解をしている人もいますが、出身地に関係なく日本全国のどの自治体でも寄附することができます。
2.高所得者ほどお得?ふるさと納税の年間限度額
とてもオトク感のあるふるさと納税ですが所得に応じて年間の上限額があります。仮に年収500万円の人が「500万円の寄附をしたい」と思っても上限金額までしか寄附による控除は受けられません。ふるさと納税は、一般的に所得が高い人ほど年間限度額が大きくなる傾向のため、その分控除できる金額が大きくなり高所得者ほどオトク感も大きくなります。
以下は、総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」で公表されている所得や家族構成別のふるさと納税年間限度額一覧です。さらに細かい年収額で分類されていますがここではキリのよい金額だけ抜粋しました。
ふるさと納税を行う方本人の給与収入 | ふるさと納税を行う方の家族構成 | ||||||
独身又は共働き | 夫婦 | 共働き+子1人(高校生) | 共働き+子1人(大学生) | 夫婦+子1人(高校生) | 共働き+子2人(大学生と高校生) | 夫婦+子2人(大学生と高校生) | |
300万円 | 28,000 | 19,000 | 19,000 | 15,000 | 11,000 | 7,000 | – |
400万円 | 42,000 | 33,000 | 33,000 | 29,000 | 25,000 | 21,000 | 12,000 |
500万円 | 61,000 | 49,000 | 49,000 | 44,000 | 40,000 | 36,000 | 28,000 |
600万円 | 77,000 | 69,000 | 69,000 | 66,000 | 60,000 | 57,000 | 43,000 |
700万円 | 108,000 | 86,000 | 86,000 | 83,000 | 78,000 | 75,000 | 66,000 |
800万円 | 129,000 | 120,000 | 120,000 | 116,000 | 110,000 | 107,000 | 85,000 |
900万円 | 151,000 | 141,000 | 141,000 | 138,000 | 132,000 | 128,000 | 119,000 |
1000万円 | 176,000 | 166,000 | 166,000 | 163,000 | 157,000 | 153,000 | 144,000 |
1100万円 | 213,000 | 194,000 | 194,000 | 191,000 | 185,000 | 181,000 | 172,000 |
1200万円 | 242,000 | 239,000 | 232,000 | 229,000 | 229,000 | 219,000 | 206,000 |
1300万円 | 271,000 | 271,000 | 261,000 | 258,000 | 261,000 | 248,000 | 248,000 |
1400万円 | 355,000 | 355,000 | 343,000 | 339,000 | 343,000 | 277,000 | 277,000 |
1500万円 | 389,000 | 389,000 | 377,000 | 373,000 | 377,000 | 361,000 | 361,000 |
1600万円 | 424,000 | 424,000 | 412,000 | 408,000 | 412,000 | 396,000 | 396,000 |
1700万円 | 458,000 | 458,000 | 446,000 | 442,000 | 446,000 | 430,000 | 430,000 |
1800万円 | 493,000 | 493,000 | 481,000 | 477,000 | 481,000 | 465,000 | 465,000 |
1900万円 | 528,000 | 528,000 | 516,000 | 512,000 | 516,000 | 500,000 | 500,000 |
2000万円 | 564,000 | 564,000 | 552,000 | 548,000 | 552,000 | 536,000 | 536,000 |
例えば年収が500万円で夫婦共働き、子ども2人(大学生と高校生)という場合は、上限額は約3万6,000円といったように金額を調べることができます。一方同じ家族構成でも年収が1,000万円になると約15万3,000円まで寄附をすることが可能です。一般的に寄附上限額が増えるのは年収に比例するため、「ふるさと納税は高所得者ほど有利」ということがこの一覧表からも見て取れます。
※実際は、年収だけでなく世帯の扶養家族などでも変わります。
2-1.年収500万円(共働き・子ども一人の場合)
実際にありそうなモデルケースを想定してふるさと納税の上限金額と返礼品としてもらえる金額を簡単にシミュレーションしてみましょう。1つ目の想定条件は、年収が500万円で夫婦共働き子ども1人(高校生)のケースです。このケースで上記の一覧表で寄附上限額を確認すると約4万9,000円が上限金額となっています。分かりやすいよう字を赤くしました。
ふるさと納税の返礼品上限は、寄附額に対する3割以下のルールとして定められているので上限まで返礼品を受け取ったとすると以下のようになります。
4万9,000円×30%=1万4,700円
そのためこのケースでは、ふるさと納税で得られる返礼品の年間上限は約1万4,700円です。
2-2.年収2,000万円(共働き・子ども一人の場合)
次に年収が2,000万円の高所得者についてもシミュレーションしてみましょう。夫婦共働きで子ども1人(高校生)と仮定します。一覧表によると上限金額は約55万2,000円です。こちらも分かりやすいよう字を赤くしました。返礼品の3割ルールを適用すると以下のようになります。
55万2,000円×30%=16万5,600円
年収500万円の人と比べると年収2,000万円は4倍ですがふるさと納税の返礼品上限には約11.3倍の差がつきました。これを見ても高所得者こそふるさと納税の恩恵を享受するべきであることが分かります。
3.ふるさと納税に関わる寄付金控除の申請方法
高所得者ほどオトク感が大きくなるふるさと納税を自分もやってみようと考えている人に具体的な申請方法を解説します。実は、申請は簡単なので身構えることなくマスターしてください。
3-1.ふるさと納税ワンストップ特例制度
ふるさと納税の手続きを簡素化するために「ふるさと納税ワンストップ特例制度」という制度が導入されています。通常ふるさと納税による控除を受けるには、確定申告が必要です。しかしワンストップ特例制度を利用すると確定申告が不要になります。ただし年間でふるさと納税の寄附先が5自治体以内ということが条件となるため、注意しましょう。
確定申告とあまり縁のない給与所得者にとって確定申告が不要になることは大きいでしょう。この特例を適用するには、ふるさと納税をする際に「ふるさと納税ワンストップ特例制度の申請書」を提出します。この申請書は、ふるさと納税の情報サイト、ポータルサイトなどからダウンロードすることが可能です。
その書類を寄附先の自治体に身分証明書の写しと一緒に郵送します。提出期限は、ふるさと納税を行った翌年の1月10日までなので遅れないように注意してください。
3-2.確定申告
ふるさと納税でワンストップ特例を利用しない場合は、確定申告が必要です。ふるさと納税をすると寄附先の自治体から証明書類が届くため、確定申告の時期まで保管しておきます。ふるさと納税を行った翌年の3月15日までに確定申告を行うことが必要です。その際に自治体から受け取った証明書を添付します。これによりふるさと納税をした分が所得から控除されます。
4.ふるさと納税の人気返礼品といえば生鮮食料品ですが…
さまざまなメリットがある中で多くの利用者にとってのお目当ては、自治体からの返礼品でしょう。依然として高い人気を誇るのが和牛やブランド農産物、海産物などの生鮮食料品です。自分のお金では買わないような高級食材がもらえる自治体も多く、自治体同士で返礼品の内容を競い合っているような側面もあります。
しかし高所得の医師の方たちにとってこれらをメリットと感じるかは、人によって異なるのではないでしょうか。医師であればお歳暮などで高級食材をもらう機会は多いでしょうし、収入の高い人にとっては日常的な食べ物であってそれほど目新しさはないかもしれません。もちろん好物であったり興味があったりする場合は、こうした高級食材を返礼品に選んでふるさと納税をすることも選択肢の一つです。
しかし寄附金が高額になるとおのずと返礼品の量も多くなるため、消費期限の短い高級食材をたくさんもらっても「食べきれない」「冷凍庫や冷蔵庫に収まりきらない」といった可能性もあります。
5.年収1,000万円以上の人に人気の返礼品とは
年収1,000万円を超えているような人のふるさと納税では、あまり生鮮食料品にばかりフォーカスするのではなく旅行券や金券、お酒、ビールなどが人気のジャンルです。ふるさと納税の返礼品は、食料品など指定できる場合を除くと同じような時期に届くこともあるため、「大量の生鮮食料品が一斉に届いても食べきれない」というのが大きな理由の一つといえるでしょう。
ふるさと納税の比較サイト「ふるさと納税ガイド」の調査でもこの傾向は明白です。年収1,000万円以上の人に人気の返礼品は「旅行券・金券」で逆に不人気なのは「生鮮食料品」といった結果となっています。金券類やお酒であれば日持ちするため、一斉に届いたとしてもゆっくりと消費できることが大きいのかもしれません。
6.医師向けにおすすめの返礼品5選
医師に人気の返礼品として旅行券や金券を挙げましたがこれには注目しておきたい理由があります。2019年の制度改正によってふるさと納税の返礼率は3割までと定められました。しかし旅行券や金券類には、それを上回る高還元率のものが多く見られます。ルール違反のように見えますがこうした旅行券や金券はどこでも使えるものではなく使えるのは当該の市区町村内のみなのがポイントです。
それぞれの市区町村内だけで使えるため、返礼品(サービス)の調達コストが低くなり3割の還元でも実質的な価値は高くなります。コロナ禍によって旅行に出かけにくくなったのは、医師であっても同じです。収束に向かう流れで「ふるさと納税を利用して価値の高い旅行を楽しみたい」と考える人も増えています。
特に高所得者である医師は、寄附上限額が大きくなるため、高い還元率で豪華な旅行やコト消費が期待できるでしょう。実際に以下のような返礼品があります。これらは、一例ですが医師の方はぜひ参考にしてください。
6-1.ホテルニューアワジ 利用券(洲本温泉利用券、兵庫県洲本市)
兵庫県の淡路島にあるリゾートホテル「ホテルニューアワジ」の利用券です。50%を超える還元率なので実質的に半額程度での宿泊が可能です。寄附金額は30万円。
6-2.宮崎カントリークラブプレー券(宮崎県宮崎市)
世界的にも高い知名度を誇る名門クラブ「宮崎カントリークラブ」でのプレー券です。返礼率は50%を上回っておりゴルフ好きな人にとっては名門クラブでオトクにプレーができる返礼品でしょう。寄付金額は25万円。
6-3.島津薩摩切子「焼酎オンザロックグラス」ペア
鹿児島県の伝統工芸品である薩摩切子の技術を復元、そこから生まれた手作りの名品です。実際に購入すると高価な品であるため、ふるさと納税で名工の逸品を手にすることができます。寄附金額は30万円。
6-4.電動アシスト自転車 PAS With 26インチ(静岡県森町)
坂道の多い街で威力を発揮する電動アシスト自転車。モデルによっては価格が数十万円になるものもありますが、こういった商品こそふるさと納税のメリットをいかしたいところです。寄附金額40万円。
6-5.JTBふるさと納税旅行クーポン(15万円分、神奈川県鎌倉市)
寄附先の自治体に旅行ができるクーポンがもらえる旅行好きに最適の返礼品です。全国津々浦々の自治体が参加しているので行き先に困ることはないでしょう。コロナ後の旅行に向けてクーポンを先取りしておくのも有効です。寄附金額は50万円。
7.ふるさと納税で社会に貢献してみませんか?
ふるさと納税では「被災地の自治体に実質的な納税ができる」と述べました。しかしこれはふるさと納税が制度化されたときに想定されていた活用法の一つです。動機は、人によってさまざまですがふるさと納税を通じて以下のような社会貢献をすることもできます。
・ 災害の被災地を応援するために寄附先として被災地の自治体を選ぶ
・ 自分の出身地が人口減少や過疎化など慢性的な問題を抱えているため寄附して応援するなど
返礼品をお目当てに寄附をすることは、ふるさと納税の醍醐味です。しかしその一部をさまざまな社会貢献に回すことができることも所得が高い人の特権といえるのではないでしょうか。ふるさと納税を活用した社会貢献の一環として内閣府が推進しているさまざまな「地方創生プロジェクト」があります。このプロジェクトは、東京圏に人口が過度に集中してしまうことによる弊害を改善することが目的です。
持続可能な社会の実現を目指すSDGsの理念にも合致している取り組みとして注目されています。自分自身の出身地ではなくても「地方創生に一役買ってみたい」という人であればふるさと納税を利用してこうした取り組みに参加するのも面白いのではないでしょうか。
8.医師向けふるさと納税に関するQ&A
高所得者である医師にありがちなふるさと納税に関する疑問と答えをQ&A形式にまとめました。素朴な疑問をこちらで解決してください。
Q1:ふるさと納税ってどんな仕組み?
ふるさと納税は、全国にある自治体へ寄付を行いその寄附額が所得から控除される制度のことです。本来であれば住民票が所在している自治体だけが納税の対象になりますがふるさと納税を活用することで自分の好きな自治体に実質的な納税をすることが可能です。自治体にとっては、財政への支援になるため、その謝礼として返礼品を出しているケースが多くなっています。
その返礼品に魅力を感じた人からの寄附が殺到することもあるため、自治体にとっては魅力的な返礼品づくりが大きなテーマの一つです。ただし返礼品の還元率を急激に高くした大阪府泉佐野市は、地場産業との関わりが薄いとして国からふるさと納税の指定を外された事例もあります。同市は、その後裁判で復帰するなど予期せぬ展開が起きたこともありました。
紆余曲折はあるものの依然としてふるさと納税は、人気を維持しており今後も制度として定着していく可能性が高いでしょう。
Q2:高収入の方はふるさと納税を利用したほうがお得?
本記事では、高所得者ほどふるさと納税では有利になると述べてきました。その理由については、上限金額のところで解説した通りです。高収入の方ほど所得が多くなることが予測されます。ふるさと納税を利用したほうが返礼品をもらえる金額も大きくなるため、「やらないよりは得である」といえるでしょう。
やはり年間の寄付金上限金額が大きい方ほど返礼品の選択肢も広くなり魅力的なものも多くなります。返礼品には3割ルールといって寄附額に対して価格が3割までとの定めがあるものの地場産業に関連するものであれば実質的な還元率が3割を大きく上回っているものも多い傾向です。こうした高額返礼品を手にすることができるのは、上限金額が大きい高所得である医師の特権といえるでしょう。
Q3:おすすめのふるさと納税の返礼品は?
生鮮食料品が人気の返礼品として定番です。しかし高所得者の場合は、同じ時期に収穫される返礼品が一斉にたくさん届いても消費しきれなかったり冷凍保存できなかったりする問題が考えられます。そのため旅行クーポンやゴルフ場の利用券など「コト消費」に使える返礼品を選ぶことも選択肢の一つといえるでしょう。
旅行や宿泊のクーポンなどコロナ後に使える返礼品を選択しておけば高い還元率(つまり実質負担を少なく)で旅行を楽しむことも期待できます。