いきなりですが、皆さんの周りには研修医、もしくは研修医が終わった後くらいの若手医師は、いらっしゃいますか?
そして、その若手医師と一緒に仕事をしてみて、どう感じるでしょうか?
先に断っておきますと、今回は「最近の若いのはけしからん!」みたいな内容を書くつもりはありません。
少し話はそれますが、古代遺跡に残された文字列にも、どうやらそういった内容の文章があった、というようなニュースをどこかで見ました。おそらくこの「最近の若いのはけしからん!」というフレーズは、大昔から言われているのではないでしょうか。
その理由としては、やはり世の中は常に変化していて、その変化を鋭敏に察知して適応しようとする力が若者にはあるので、世代間で価値観の差や考え方の乖離が生まれるのは、ある意味当たり前なので、「最近の若いのはけしからん!」というフレーズが古代から存在するのも、当たり前なのかもしれません。
さて、今回は僕が感じた「最近の若い先生の傾向」と、その理由について、僕の主観で考察してみました。
最近の若手医師の傾向
僕が感じる、最近の若手医師の傾向については
・プライベートを削ってまで頑張りたく無い
・でも外からの評価は気になるし、評価はされたい
という感じかな〜、と勝手に感じ取っています。
どうでしょうか?そんな感じ、ありませんでしょうか。
仕事はやるし、クオリティもそんなに低く無いけど、それほどガツガツしていなくて、仕事に命をかけている感じではない。当然、プライベートや時間外で勉強したり練習する、みたいな事は割と避けたい。
それでいて、外からの評価は割と気になっているように感じます。いわゆる「できないヤツ」みたいに思われるのを結構恐れていて、失敗や勉強不足でわからない事に対面すると、萎縮して動かなくなってしまうような感じです。
僕もあんまり勉強熱心だったわけではないので、質問されてわからない事は当然あるのですが、そこに関しては「すみません!わかりません!」と若手らしく元気に応えて上司の「ばかやろー!」を頂く、というのが一連の流れだと認識しておりました(笑)これも上下関係がある世界での日本的なコミュニケーションの1つかなと思っていましたが、最近の若手医師はどうやらそれは苦手、あまりやって欲しくないように見受けられます。
ただ当然ながら、中には勉強熱心でガッツがある若手医師もいて、当然のことながら彼らは仕事でのアウトプットの質も量もあるので、評価される一方で、そうでない若手医師も「高く評価されなくても良いから低く評価されたく無い」みたいな、言ってしまえば「落ちこぼれ恐怖症」みたいな印象を受ける若手が、結構多いです。
冒頭で申しましたように、これについて「最近の若者はけしからん!」と言うつもりはありません。ではこれが事実だとして、若手医師とはどう接したら良いのでしょうか?
最近の若手医師との接し方
最近の若手医師と接する際、気をつけているのは
1.いわゆる昭和式の叱責は行わない
2.「自分はダメなんだ」と思わせない
3.ネガティブな理由でモチベーションを沸かせる
の3つです。
まず、最も嫌われる昭和の叱責をせず、自分がダメだと思わせる事を避けます。
これをやってしまうと、すぐいなくなってしまう傾向があります。
じゃあどうやってモチベーションを沸かせるかですが、個人的にはもうネガティブな理由で無理にでも沸かせる方法を採用しています。
「これを知らないと、医師として訴えられるかもよ、知らないじゃ済まされない」
「これくらいできないと、飯食えなくなるよ」
みたいな感じです。
正直、これは長くは続かなくて、このネガティブな理由でも良いからとにかく練習や勉強のモチベーションを沸かせて、とにかくやらせる。やっていくウチにそれ自体が楽しくなって、いずれ習慣化すると思うので、そうしたらあとはモチベーションなんてなくてもできるようになります。
熱意とかポジティブな面のモチベーションは、響かない傾向が高いので、起爆剤としてネガティブなモチベーションを植え付けて、後は勝手に燃え上がっていくのを待つ感じですね。
これが良いのかはわかりませんが、今のところ功を奏している感じがします。
最近の若手医師がこうなった理由
さて、一体この若手医師の傾向は、どういった理由があってこうなっているのでしょうか。
よくある意見が「ゆとり世代だから」という意見がありますが、これだけだとちょっと説明がつかない気もします。
あくまで「医者になる人」に、強く見られる傾向だと思うから(同年代の看護師さんとかはそうでもない)です。
僕が思うに、これは「医学部入学が難しくなったから」だと思います。
本来なら東大に行くような子が、地方の医学部に入る時代です。
都心部でエリート教育を受けて、中高一貫校から前倒し教育を受け、高校入学時にはほぼ高校生の勉強内容を勉強し終わって、塾に言われた通り3年間を受験対策に費やして、入学してくるような子が多いですよね。
得てして彼らは入学してから「今まで塾の言われた通りにやっていただけだから、どうやって勉強すれば良いかわからない」みたいに言ってくるので、僕も医学部に入学してから驚いた記憶があります。
医学部が高難易度化してしまったのは、日本のデフレと社会構造の問題なので致し方ありませんし、彼らの選択は合理的です。
しかし、やはり少子化で「少ない子供に大量のリソースを割く」みたいな手法で育った子が多く医学部に入るので、あまり叱られ慣れてないし、失敗しないよう守られてきたし、殴り合いの喧嘩もして事ないし、一言で言えば「温室育ち」が研修医になる確率が、高まったのかもしれません。
僕が地方の、中でも気性が荒くて関わるなみたいに避けられがちな地域の出身ですので、そう思うだけかもしれませんが…。
僕個人の意見としては、それが理由だとするならば、色々と辻褄が合うなーと、勝手に思っています。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。