こんにちは、美容医師で投資家の大石です。
前回の記事<今の日本のインフレの正体は?>では、今の日本のインフレの正体について、大まかに書かせていただきました。
今回は、仮にインフレの傾向になったとして、美容業界へはどういう影響があるのか?という事について考えていきたいと思います。
綺麗なインフレには、ならない?
前回の記事で書かせて頂いたように、今回の物価が上がっているのは、コロナで生産が止まった事、お金をばら撒いた事、各国が金利を上げた事で為替が円安になった事、これらが原因だとしました。
そうすると、今回はいわゆる景気が良くてインフレになっているというより、景気は変わらないもしくは悪くなっている(コロナで生産できていない)中で物価だけが上昇した、つまりスタグフレーションという、デフレで物価上昇が起こってしまったパターンに近いと思われます。
スタグフレーションって、どうなるの?
まずスタグフレーションになると、政策金利は上がります。金利を上げて行き過ぎたインフレになる事、国民の予想を超えた物価になってコントロールがつかなくなってしまう事がもっとも恐ろしい事なので、とりあえず金利を上げてインフレを予防します。
ただ、景気は悪いので、皆さん手元にあるお金は減っていきます。給料も増えないし、クビになる事もあるし、全然良い事はありません。倒産する企業も出てくるでしょう。
それでも物価が上がるので、当然困窮する人は増えていき、場合によっては生活保護を申請する人もそれなりの人数になると思います。
■スタグフレーションと、美容業界
スタグフレーションになると、美容業界はどうなるでしょうか?当然のことながら、縮小します。
お客さんも集まりません。お客さんがお金を持っていないので、仕方ありません。
それでも銀行の金利は上がっていって、借り入れの返済は厳しさを増すはずです。
■スタグフレーションが起こったら
スタグフレーションが起こったら、どうすれば良いのでしょうか?
まず基本的には、銀行の借入金をこれ以上増やさないのが重要です。キャッシュが足りないのであれば、それはもう倒産覚悟で借りるしかありませんが、結構厳しいと思います。金利が上がって、原価も上がって、キャッシュアウトは増えるのにも関わらず、売り上げが増えないので、経営はどうしても苦しくなります。
逆に言えば、在庫がなく、原価がない事業、つまり人件費主体のサービスがメインであれば、それは原価の上昇等が無いため、経営はそれほど苦しくならないでしょう。
ですので、美容業系で言うならば、まずは物販をやめてしまうのもアリだと思います。在庫が増えて、キャッシュが厳しくなる可能性の方が高いからです。
なるべく不良在庫を抱えないように、物販は抑制しつつ、需要が底堅いサービスを提供し、凌ぎ続けましょう。キャッシュに余裕がある場合、もしくは余裕が出てきた場合も、なるべく追加の返済はせず、手元に持っておきましょう。手元のキャッシュを厚くする事を、最優先してください。
手元のキャッシュを厚くするために、他にできる事は何でしょうか?
1つは、売掛金の回収速度をはやめる事です。
既にローンでサービス提供しているお客様からは、ローン返済の遅延が無いように、こまめに連絡もしくはメールを入れる。
新しくローンを組んで美容サービスを購入してもらうお客様からは、なるべくローンを組ませないか、頭金を多めにしてローンの金額を減らし、売掛金を減らす事でキャッシュの回収効率を高めましょう。
ただ、ここであまりにもローンを制限してしまうと、お客様が購入するサービス総額が減少してしまう事にも繋がりかねませんので、やり過ぎには注意です。
スタグフレーションは出店攻勢、人材獲得の大チャンス
スタグフレーションは、基本的に良い事が1つもありませんが、経営者の立場で考えると良い事が2つあります。
まず1つは、良い立地の店舗が空くという事です。
立地の良い店舗はなかなか空きが出ませんが、スタグフレーションではそのような立地に店舗を構えているような、割と大きな会社でさえ、店舗縮小を行わざるを得ない場合があります。
これは、チャンスです。
立地の良い店舗は、本当に重要です。後から変えられません。数年に1度しか、巡ってこないようなチャンスが、スタグフレーション下では訪れます。
ただ新規出店は相当キャッシュアウトしますので、銀行とよく相談して、考える必要があります。
次に2つ目は、良い人材が溢れるという事です。
スタグフレーションでは、良い人材が市場に出回ります。どこの会社も苦しいので、本当は手放したく無いような優秀な人材も、手放す必要に迫られる可能性があるのです。
これもまた、数年に1度のチャンス。
採用した人全員が残ってくれるとは限らないものの、優秀な人材を大量に確保できるチャンスではあります。
美容業界で、立地と人材は本当に重要な要素で、なかなか後から変更を効かせようと思っても難しいものです。
経営体力のある方は、スタグフレーションを新規出店と人材確保のチャンスと捉え、今のうちから虎視眈々と準備し、狙っていっても良いかもしれません。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。