総務省統計局の2017年2月1日時点の人口データによると、日本の総人口は約22万人減っている中、65歳以上のいわゆる高齢者の人口は約62万3000人増えています。
比率では約27.4%、つまり4人に1人以上が65歳以上となる日本は、世界最先端の高齢化社会であるといえます。
高齢化社会での需要を考えて、高齢者向けの住宅で不動産投資を検討される方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、一般的な一戸建てやマンションとの違いや、高齢者向け住宅のメリット・デメリットをまとめました。
近年の注目はサービス付き高齢者向け住宅
一口に高齢者向けの施設といっても色々ありますが、最近特に注目されているのは、「
今回は、サ高住に絞っていきたいと思います。
サ高住とは、2011年に「高齢者住まい法」が改正されたことにより、高齢者円滑入居賃貸住宅、高齢者専用賃貸住宅、高齢者向け優良賃貸住宅等が廃止されて一本化した高齢者向け住宅のことです。
バリアフリー構造で、自由に利用できる共同設備があり、生活拠点となる部屋は完全に個室となっています。
外出する際も、経営者によりますが基本的には特別な許可を取る必要はありません。
老人ホームやデイサービスを利用する必要のない比較的健康で自立できる、あるいは軽度の支援のみで良いという方向けの住宅です。
なお、サ高住で必須とされているサービスは「安否確認」と「生活相談」で、他の介護サービスを受ける際は、別途有料で申し込む必要があります。
サ高住は政府が積極的に拡大を図っている制度
それでは、サ高住を経営する側としてのメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
ひとつずつ見ていきましょう。
比較的健康な高齢者を対象とした住宅は、海外と比べると不足しているため、政府はサ高住の拡大に積極的な姿勢を見せています。
そのため、一定の条件を満たせば建設費の補助や融資制度の利用ができます。
通常、高齢者向けの施設はバリアフリー等の設備が必要な分、建築費が高額になりがちですが、補助を受ければ賃貸マンションを建設するより初期コストを減らすことができます。
老人ホームやデイサービス等と比較しても、社会福祉法人や介護事業者だけではなく、一般の不動産投資家でも運営が可能で参入しやすい点もメリットのひとつです。
また、通常の賃貸では入居が望みにくい立地でも、サ高住であれば高い入居率が望める可能性があるといわれています。
補助金を受けるための条件がデメリットになりうる
メリットが大きいサ高住ですが、デメリットはないのか確認していきます。
補助が受けられるのはメリットではありますが、賃料設定に縛りがある点はデメリットといます。
また、サ高住の住居面積は、特定の場合を除き25㎡以上であることが求められています。
一方、住宅型老人ホームの場合は1室あたりに求められている住居面積は13㎡です。
建物が同じサイズであればサ高住と比較して多くの入居者が見込める分、住居型老人ホームの方が収益を得られる可能性はあります。
既存のサ高住の中には、駅からもバス停からも遠い立地となっているものがあります。
一般的な賃貸住宅と比べて多少立地が悪くても入居者が見込めるとはいえ、利用するのは健康である方が多いですし、家族が会いに来るためにもある程度の利便性は必要です。
サ高住の損益分岐点は入居率70%といわれていますが、東京や大阪等の都市部以外では平均で70%に達していない地域もあります。
政府は2025年までに高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を約4%に、高齢者生活支援施設を併設するサービス付き高齢者向け住宅の割合を約90%にする目標を立てています。
多少デメリットがあるとはいえ、人口が減る中でも高齢者向けの住宅は高まっており、マンションやアパート経営が大半のイメージを占める不動産投資の新しい対象として、検討してみるのも一考です。