稼げば稼ぐほど税負担が重くなる累進課税は、多くの勤務医・フリーランス医師にとって大きな悩みのタネかと思います。ふるさと納税や住宅ローン減税など、“王道”と呼ばれる節税をすでに実行されている方も多いでしょう。
今回は、税理士である筆者が、多くの医師をアドバイスしてきた経験をもとに、「医師におすすめの節税対策」や「医師だからこそできる節税ワザ」、そして「やってはいけない節税対策」について、解説していきます。
※個人情報保護のため、事例は趣旨を曲げない範囲での脚色・改変を加えています。
目次
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【医師におすすめの節税対策】車は経費に計上できる?
セダンなら経費として認められることが多い
節税対策といえば、経費に計上できるものを増やすことを考える方も多いと思います。しかし、「経費に計上できるか」の判断はとても難しいものです。
たとえば、一般的には経費では落とせないと思われがちな「車」ですが、場合によっては経費として計上し、節税対策にできることがあります。医師が車を購入した場合、その費用を経費に入れるかどうか自体は自由だとされているのです。ただし、税務署が経費として認めるのかはその時々の判断となりますので、「必ず経費として認められる」とは断言できません。
とはいえ、一般的に4ドアタイプのセダンのような車であれば経費として認められることが多いのではないかと思います。
【医師だからこそできる節税ワザ】スポーツカー、クルーザー、高級時計が経費として認められる可能性も
SNSでアピールするなど、ブランディング次第ではアリ
それでは、購入した車がスポーツカーの場合はどうなのでしょうか?
この場合は、「その車が会社の経費として適切なのか」という判断が行われます。たとえば、SNSを頻繁に使用している医師が、高級なスポーツカーに乗っていることを「成功しているというブランディング」としてアピールし、そのことが間接的に売上に貢献できていると判断できる場合、経費として認められることもあります。
正当な理由があれば、クルーザーの維持費も経費にできる
車以外では、クルーザーなどもそうです。たとえば、「法人化している医師が、取引先の接待やスタッフへの慰労を目的に、花火大会の見物に招待する」というシチュエーションを想定してみてください。“陸から見ようとすると混雑して十分に鑑賞することができないけれど、船を利用して海から見ることにより特等席で見ることができた”といったように、クルーザーがあることで招待客の満足感が大きいということであれば、経費として計上できることがあります。クルーザーの場合、購入費に加えて保管料や保険代、燃料費など維持費がかかりますが、クルーザーを保有することが医師としての売上に貢献していると判断できるのであれば、この維持費も経費として計上することができます。
「業務に必要があること」が明らかでない場合は諦めよう
しかしSNSやHPで集客を行っていないなど、「成功しているというブランディング」をアピールしていない医師の場合、スポーツカーやクルーザー、高級時計などを経費とすることには説明ができません。高級時計を「仕事中につけているから」という理由だけでは売上に貢献している経費だという説明がつかず、「仕事中に身に付ける時計が何百万円もする高級なものである必要はない」と税務署から判断されてしまう可能性が高いといえます。
【やってはいけない節税対策】自宅にある財産を申告しないで管理することはNG!?
「税金を払いたくないから、相続財産を過少に申告する」は絶対に避けよう
大きな財産を築けた場合でも、注意しなければならないことがあります。とくに資産家の方が亡くなってしまった場合に注意が必要です。本人が亡くなってしまった後では、正確な財産の総額が分からなくなってしまいますから、生前に財産の総額と保管場所の確認をしておくことも重要です。家族が把握していなかった財産が後から出てきた場合、「財産計上漏れ」になってしまうため、注意が必要です。
一例として、私が担当したケースをご紹介します。
とある資産家が亡くなった後、相続税の申告1~2年後に資産家自宅に、突然税務署の調査が入ったことがありました。その際、家中のあらゆるところから現金が出てきたそうです。自宅で現金を管理すること自体はもちろん問題はないのですが、それが「税務署に申告していない」財産であれば、話は別です。その資産家の自宅では札束が様々な場所に隠されており、申告漏れのあった財産の総額は2~3000万円ほど。さらには金塊も出てきたということです。このように税務署の調査で隠していた財産がある場合やかくしてはいないが本来、税務署が想定する相続財産を計上していないと思われる場合には、税務調査の確率が高くなり、仮に税務調査で調査官に指摘されてしまうと、そのすべてを財産として計上しなければならなくなります。
財産はしっかり申告を!
税務署はその人にどのくらいの財産があったかということを、収入からある程度把握しています。申告されている財産が、予測している財産額と見合わないと判断された場合、「自宅に現金か何かの形で隠し持っているのでは?」と調査の対象になってしまうのです。「多額の税金を納めたくない」「正確な財産計上をすることを面倒だから放っておいた」など考えるのではなく、適切に管理をすることをおすすめします。
財産を意図的に隠していたと判断される場合、重い追徴課税が課されてしまいます。単純にイメージが悪いことはもちろんですが、追徴課税は発覚してからただ遡って納めればいいというわけではありません。たとえ申告が遅れてしまったとしても、税務署の調査が入る前に納めたほうが、より追徴課税の額を低く抑えることができます。
まとめ
医師におすすめの、スタンダードな節税対策のほか、医師だからこそ可能な節税ワザ、そして絶対に避けるべきパターンを解説しました。参考になれば幸いです。