最近、医師といえども日本という国の先行きの不透明感からか、それとも累進課税と社会保険料の重さからか、不動産投資というワードがかなり浸透してきたように思えます。
実際、SNSや書籍でも、医師と不動産投資のコンテンツは増えてきました。
僕自身、医師をしながら不動産投資を開始したのはもう3年前になります。3年やってみて、やっと見えてくる事も多々ありました。
不動産投資を開始する前、いきなり「物件買いたい病」に
物件を所有して3年、最初の物件を探し初めてからの期間も入れれば、4年という時間が流れました。
この4年の間、僕は「不動産投資をする理由」を見失いかけていた時が、2回ありました。
1回目は、4年前です。
最初の物件がうまく買えず、良いなと思っても勇気が出なかったり、忙しいからという言い訳で実際の行動に移せなかったりと、モヤモヤとしていました。
段々と面倒になって「そもそも不動産投資なんてやる必要あるのか?」などと、自分で自分を説得しはじめてしまうような事態に。
それでもかなりの時間、労力を投下していたので、気持ち的には「とりあえず不動産投資を開始したい!」という気持ちが強く、徐々に検討する物件の内容が揺らいできてしまったのです。
最初は鉄骨のまあまあな中古を探していて、今度は中古RCに行ったり、はたまた今度は築古の戸建てを見たり…完全に焦点が定まっていないというか、ブレブレでした。
僕が不動産投資をし始めた理由は、医師として働くという選択肢以外に「もう1つの収益源を作る」事でした。その理由は、収益源を分散させて、将来の経済的な不安を取り除きつつ、自由を得て、嫌な仕事を断れるくらいの力が欲しかったからです。
しかし、次第に「とにかく物件買いたい病」になって、購入の判断軸がブレブレのまま物件を探し続け、休日を潰すという日々を過ごしていました。
転機が訪れたのは、大学の友人の結婚式に行った時です。
友人達と久しぶりにあって、とても楽しい時間を過ごした事で
「別に不動産なんてなくたって、こういう時間が過ごせればそれで楽しいじゃないか」
という事を、再確認したのです。
そういった時間を過ごすための、時間と心の余裕、それをもたらすための「手段としての経済力」を、不動産を通じて得ようとしていたと、再確認しました。
ここまで頭が回れば、あとは簡単です。
とにかく物件を買う、というだけではなく「その目的を達成するのに適合する案件」でなければ、不動産投資をする意味がありません。
友人の結婚式に出る事で、失いかけていた「不動産投資の目的」を再確認、無事1つ目の物件にたどり着く事ができた、というわけですね。
不動産投資と規模拡大、家族との時間が削られていった
無事1つめの物件を購入し、2つめも購入、トントン拍子で規模を拡大していました。
しかし、2つ目の物件を購入したところで、次の物件が急に買えなくなってしまったのです。
僕はまた「不動産投資をする理由」を、見失いかけていました。
周りの知り合いの投資家は、順調に規模を拡大し、中には売却も絡めて資産規模を一気に拡大している人もいました。
そんな中、一歩も前に進む事ができていない自分に対して、嫌気が差してきてしまいます。
人は何かと、他人と比べたがる生き物です。それが人間というものなのでしょう。
そうしてまた「3つめを、とにかく買いたい」と、思いかけてしまいますが、ここは1回目の反省を生かし、キチンと適合する物件を待とう、と心に働きかける事ができました。
しかし…あまりにも買えなかったため、とにかく行動量を増やし、休日はほぼ全て潰しに潰し、物件を探し回っていました。
当然ながら、プライベートの時間は削られていきます。
その時、生まれたばかりの子供がいたのですが、奥さんと子供を家に置いて、数少ない休日は投資用不動産を探す日々。奥さんは文句も言わずにいてくれましたが、少しずつ会話の回数も減っていて、子供も僕に懐かなくなったりして、距離を感じるようになりました。
無論、その距離を作り出しているのは、僕自身です。
ここでまたふと、僕の「不動産投資をする理由」を、もう1度考えてみました。
将来の安定と、心の平穏、自由な時間。友人や家族と楽しく過ごす時間。これらを手に入れるために、始めるつもりだった不動産投資。
いつの間にか、手段に過ぎなかった不動産投資の優先度が高まるあまり、本来の目的を見失っていた事に気がつきました。
それから物件探しはほどほどにして、休日は家族と過ごすようになりました。
医師が「不動産投資をする理由」を、見失わないために
僕が思うに、医師のように「任務遂行能力と目的達成能力が高い人」ほど、不動産投資の事を考え始めると、それにガーッとのめり込んでしまう人が、多いように思えます。
それは逆に言えば、知識と経験を短時間で得て、短時間で結果を出すという事でもありますが、盲目的になって本来の目的を見失うリスクを同時に背負っているとも思います。
医師が「不動産投資をする理由」を見失わないためにも、不動産投資を通じて得体暮らし、生活感をイメージして、あくまで不動産投資が手段に過ぎないという事を、どこかにメモしておいて、定期的に確認するのがオススメです。
手段は目的になり得ません。家族のために始めた不動産投資で、家族が不幸担っていたら意味がありません。
そうならないためにも、不動産投資をする理由を、たまにで良いので再確認しましょう。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。
URL:https://bluestorage.co.jp/
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