控除が適用されるにも関わらず、申告し忘れたり、経費のつけ方を間違えて税金を多く払い過ぎたりするなど、誰もが失敗しやすい「確定申告の落とし穴」。税金の支払いが少なければ税務署から指摘がありますが、払い過ぎた場合は何も指摘されず、スルーです。気づかないうちに「大失敗」しているかもしれません。
国税庁のホームページでは、確定申告でよくある間違いについて、Q&A形式で公開しています。多くの人がミスしやすい項目とはいったい何なのか? 国税庁が掲げる「確定申告で失敗しやすい12のケース」について解説します。
確定申告で「失敗」しやすい12のケースとは?
その1.国外所得の申告漏れ
日本に住んでいながら、海外の投資不動産で得られた利益や、海外金融機関に預貯金の利子がある場合、また、海外法人に出資したり、役員を務めていたりする場合は、その法人での収入・収益も申告する必要があります。たとえ所有不動産・金融機関口座・関連法人が所在する諸外国で所得申告済みであっても、日本国内において改めて申告することが必要です。
その2.副収入の申告漏れ
株式投資や不動産投資での収益はもちろん、インターネット・オークションに出品して得た利益、さらには所有している暗号資産(仮想通貨)を売却して生じた利益についても申告が必要です。
その3.「一時所得」の申告漏れ
生命保険契約で満期保険金や一時金を受け取った場合は、その金額を一時所得として申告しなければならない場合があります。契約内容にもよりますので、生命保険会社から送付された書類をもう一度確認しましょう。
また、競馬など公営競技で高額な払戻しを受けた場合も、一時所得の課税対象となりますので、忘れずに申告しましょう。
その4.「医療費控除」の計算誤り
高額療養費、高額介護合算療養費、出産育児一時金、また生命保険会社・損害保険会社からの入院給付金などで医療費が補填される場合は、支払った医療費からそれらの金額を差し引いた金額を「医療費控除」として申告することになっています。
また勘違いしている人が多いようですが、薬局で購入した商品であっても、日用品については医療費控除の対象になりません。領収証は分けて発行してもらいましょう。
その5.「寄附金控除」の適用漏れ
「ふるさと納税ワンストップ特例」は、ふるさと納税をした後に確定申告をしなくても寄附金控除が受けられる制度であり、主に、確定申告をする必要のない給与所得者のための申請制度です。確定申告義務がある職業の人が寄附金控除を受けるには、確定申告時にふるさと納税の控除金額を申告する必要があります。
その6.「地震保険料控除」の適用誤り
地震等損害保険契約以外の保険料については、「地震保険料控除」の適用はありません。以前、火災保険や損額保険料の一部が控除される「損害保険料控除」がありましたが、現在は廃止されており、それらを未だに「地震保険料控除」として申告してしまう人が多いようです。
その7.「寡婦控除(寡夫控除)」の適用漏れ
配偶者と離婚、または死別をしており、同居の子供がいる、または年間所得が500万円以下の男性・女性ともに寡婦控除(寡夫控除)が受けられます。しかし再婚したら、それ以降の控除は受けられません。
その8.「配偶者控除」及び「配偶者特別控除」の適用誤り
配偶者の所得が38万円以下だからと、それだけで「配偶者控除」の申告をしてしまう人が多いようです。配偶者控除のもう1つの適用条件「世帯の合計所得金額が1,000万円を超えていないこと」も、所得条件とともにクリアされていないと控除されません。いま一度、世帯所得金額を確認してみましょう。
また、配偶者控除を受ける場合は、「配偶者特別控除」を併せて受けることはできません。
その9.「基礎控除」の記載漏れ
確定申告をする人すべてが受けられるのが「基礎控除」ですが、意外なことに申告し忘れている方が多いようです。控除額は一律38万円です。せっかくなので申告しましょう。
その10.「住宅ローン控除」の適用誤り
入居した年と、その年の前後2年以内でマイホームを売却した年度に「譲渡所得の課税の特例等の特別控除(3,000万円の特別控除等)」を受けた場合は、住宅借入金等特別控除(=住宅ローン控除)を受けることはできません。
また、両親等から資金援助を受けてマイホームを購入した際に「住宅取得等資金の贈与の特例」を受けている場合は、住宅ローン控除額の計算において、その特例を受けた金額を住宅の購入金額から差し引かなければなりません。
その11.「復興特別所得税額」の記載漏れ
2013年分から2037年分までの間、東日本大震災からの復興を図るための施策に必要な財源を確保するため、すべての所得税納税者に「復興特別所得税」が課せられています。復興特別所得税の税額は、基準所得税の2.1%です。税金の還付を受ける人(申告の結果、源泉徴収金の一部金等が戻ってくる人)も、復興特別所得税欄への記載が必要です。
その12.予定納税額の記載漏れ
前年分の所得金額や税額などを基に計算した予定納税基準額が15万円以上の場合、その年の所得税等の一部をあらかじめ納付する制度を「予定納税」といいます。予定納税が必要な人には6月中旬に税務署から通知書が送付されます。通知を受けた人は、この通知書に記載された第1期分の金額をあらかじめ納税する必要があり、確定申告書にもその予定納税額を記載する必要があります。
修正申告の方法は?
確定申告の修正手続を行う場合、確定申告の期限前なのか期限後なのかで手続方法に違いがあります。確定申告の期限前に修正手続を行う場合は「訂正申告」となり、修正申告書を作成して所轄税務署長に提出します。
たとえば申告期限前に、最初に提出した申告書に誤りがあったと気づき、改めて修正した申告書を送りましたが、また間違いに気づいてもう一度送るなど、何度も申告書を送り続けた場合はどうなるのでしょうか。このようなケースにおいて、税務署では最後に提出された申告書を採用するルールになっています。つまり申告期限前なら、訂正申告をしなくても、独自に修正した申告書を送り直せばすむのです。とはいえ、「控除証明書」や「医療費の領収書」などの添付書類をすでに送ってしまっています。その場合、それらの書類を添付した申告書控えのコピーを一緒に送れば、それらの添付書類は最新の申告書類に移し替えられます。
次に、確定申告の期限を過ぎてから修正手続を行う場合です。税金を少なく申告してしまった場合は修正申告を、逆に多く申告し過ぎた場合は「更正の請求」を行います。更正の請求によって税務署が妥当と認めれば、税金の還付を受けることができます。更正の請求の手続きは訂正申告とは異なり、既定の「所得税及び復興特別所得税の更正の請求書」に必要事項を記入して提出する必要があります。記入内容は確定申告書とほとんど同じ。新たに1年分の確定申告書を作り直すようなイメージです。
更正の請求が行える期限は、本来の確定申告期限(2018年度の確定申告であれば、2019年3月15日)から5年以内となっています。数年前のものでも、まだ間に合うものがあるかもしれませんよ。