プライベートバンク。
中途半端なお金持ちではなく、圧倒的な資産家にのみ開かれた、その資産を高い利率で運用してくれる存在。謎のベールに包まれ、正体は謎のままである。
プライベートバンクに対するイメージって、そんな感じではないでしょうか?実際、僕もそうでした。
しかしながら、最近は「プライベートバンクで働いていた人」の本も多数出ており、プライベートバンクとは一体何なのか、その本を複数読む事で見えてくる事も多いです。
先生方はお忙しく、時間があまりないでしょうから、今回は僕の読んだ書籍の情報をサクッと1つにまとめて、ご紹介致します。
プライベートバンクは、高利率の魔法の地ではない
僕はずっと、プライベートバンクというものを
お金持ちにだけ許された、特別に高い利率で資産を運用してくれる組織
だと、思っていました。しかし実際は、そうでもないようです。
例えば平均利率3%の、一般的な商品があったとします。プライベートバンクだとこれを10%とかで運用しますよ、みたいな内容かと思っていたのですが、どうやらこれは単純にレバレッジをかけているだけのようです。
具体的には、例えば10億円あったとして、本来ならばこの3%は3000万円ですが、そうではなくこの10億円を担保にして40億円を借りて、その40億円で3%の運用を行い1億2000万円の利益を上げて、手数料として2000万円を差し引いて、1億円を運用益として計上する、といった具合です。
数字だけ見れば、確かに10億円を元手に1億円が運用益として計上されているわけなので、利率10%というのは間違ってはいませんが…これは魔法の方法ではないですよね。
なぜならば、レバレッジをかけて利率を高めているという事は、儲かっている時は良いけれども、逆に儲からない時はその倍率分損失が拡大するという事です。
単純にリスクをとっている分、儲かっているという事で、リスクに晒されているのはプライベートバンクに預けている人のお金です。プライベートバンク利用者からすれば、実はリスクリターンの比率は、一般的な商品の3%と何ら変わりがないわけです。
むしろ高い手数料を抜かれている分だけ、損だと言えるかもしれません。
それでもプライベートバンクが地位を保ち続けているのは事実。
一体、プライベートバンクの価値とは一体何なのでしょうか?
プライベートバンクの真の価値は?
それでも多くの資産家がプライベートバンクを利用するのは、一体なぜなのでしょうか?どうやらプライベートバンクの真の価値は「タックスプランニング」にありそうです。簡単に言ってしまえば、税金対策というやつですね。
日本の法律内での税金対策は、たかが知れていますが、国をまたいで「国家間の税制の違い」を利用した、大掛かりなタックスプランニングは、確かに一般事業者では中々難しいと思います。
仮に一般事業者ができたとしても、信用性がないわけですね。プライベートバンクは「信用性が保たれている国家間のタックスプランニングができる」という、唯一の立場として確立しているから、価値があると言えそうです。
言われてみれば、そのタックスプランニングがあるかどうかで、納税額が数億円も数十億円も変わってくるような大資産家であれば、確かに高いフィーを支払ってでも、その税金を何とかできないかと考えるのは、合理的ではありますよね。
まあ、本来ならば納めなければいけない税金ですので、庶民のために納めて欲しいとは思いますが…。
プライベートバンクを利用するまでもない人の、資産運用
流石にプライベートバンクを利用する先生ばかりでは、無いと思います。
むしろ相続や税金などが絡んで初めて発揮される部分だと思うので、ウェブサイトで当記事を見ているような若い先生には、当てはまらないという方の方が多いでしょう。
プライベートバンクを利用するまでもない人は、一体どのように資産運用をしていけば良いのでしょうか?
まず最も簡単なのが、インデックスファンドを定期的に購入して、寝ているだけというものです。
素人が下手に売買を繰り返したりするよりも、買って寝ているだけで決して売買をしない。その手法が最も資産を過去に増やした、という事は統計的にデータが取れており、有名な事実です。
人はつい、魔法の方法を探してしまいますが、成功への道は地道でつまらない、大体相場はそんなもんですよね。
残る手法として、個人的にはオススメなのが不動産投資なのですが、こちらも基本は借り入れをしてその分利益を高くあげる、レバレッジを効かせた手法になります。
ただ手数料を誰かに取られるわけではなく、基本は手数料そのものも自分の懐に入るのと、自分の努力の介在余地が大きい(高い家賃で貸す努力をすれば高いリターンを得られる可能性が高い)ので、やりがいもあります。
どの手法が良いのかは、年齢や資金力、目標などにもよって来ますが…わからないという方は、1度不動産のプロに相談してみるのも、良いかも知れませんよ。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。