“対面診療よりも報酬点数が低いオンライン診療は儲からない”という定説を覆し、オンライン診療プラットフォームで大成功をおさめた「イシャチョク®」。
今回、勤務医ドットコムではイシャチョク®︎を手がけた鈴木幹啓医師に、独占インタビューを実施。前編に引き続き、貴重なお話を伺いました。
オンライン診療では「予約なし」のほうが効率的
――“医師の手が空いたときにプラスアルファでオンライン診療を行うことで、医師側のデメリットを減らせる”という、逆転の発想から生まれたのが「イシャチョク®︎」だったのですね。</span >
鈴木先生:そもそも診療報酬の減少は、対面診療の患者さんがオンライン診療に移行するから起こるのです。そうではなく、かかりつけの患者さんには従来と同様に対面診療を行い、オンライン診療で新規の患者さんを診れば、診療報酬は減るどころかプラスアルファで収益となります。
そこから私は、医師が、“手が空いたときにパソコンさえ開けばいつでもオンライン診療ができる仕組み”を考えていきました。まず、「今すぐ診てもらいたい患者」と「手の空いている医師」を繋げるための「仮想待合室」というプラットフォームをつくりました。
仮想待合室では診療科ごとに患者さんが待機しており、そのとき手が空いている医師が順に診察を行っていきます。
医師には患者さんが仮想待合室に入ったタイミングで、メールで通知が届きます。そのときに対面診療をしていれば、医師はオンラインで対応する必要はありません。あくまで手が空いているときだけ、診ていただければいいのです。
(イシャチョクHPより引用)</span >
――イシャチョク®️は「予約なし」のシステムですが、予約なしにしたのはなぜでしょうか</span >
鈴木先生:はい。あえて「予約なし」で、患者さんに待ってもらうシステムにしたのにも理由があります。医師の方ならご存知かと思いますが、外来が診察時間内に終わらなかったり、緊急手術が入ったり、カンファレンスが長引いたりと、現場で働く医師の予定は予測ができません。たとえば「火曜日の17時に」とオンライン診療の予約を入れたとしても、対応できないことが多々あるのです。「予約なし」であれば医師の方も気軽に登録ができますし、登録数が多い方が効率的に診察を行えます。</u >
また、オンライン診療は時間的な効率がよいことも特徴です。対面の場合、診療室に入ってからも荷物を置いて、椅子に座って、必要であれば衣服を脱いで、問診票を見ながらお話を伺って診察していきます。診断を出すまでに、平均して10分以上かかるので、対面診療では待ち時間を減らすために予約システムを利用した方が効率的です。
しかし、オンライン診療を希望する患者さんは、ある程度自分がどのような状態で、何の薬が欲しいかが分かっている場合が多く、診療自体も2~3分で終わることが大半です。ですので、予約なしでも患者さんを長い時間待たせずに診察することが可能なのです。
このようにして、時代の要請に応じてオンライン診療を普及させることができ、「なるべく病院に行きたくない」「今すぐ診てもらいたい」という患者さんのニーズも叶えられ、しかも医師の収益が増えるという、みんなにメリットのある「イシャチョク®」をローンチするに至ったのです。
登録している医師は、フリーランス、勤務医、海外在住とさまざま
――イシャチョク®︎に登録している医師は、どのような方がいらっしゃいますか?</span >
鈴木先生:登録されている医師はフリーランス医師に限りません。普段は他のクリニックに勤務医として所属している方も、業務委託という形で契約していただければ、オンライン診療を行うときは私のクリニックに所属する医師として診察していただけます。
さらに、日本在住でなくてもかまいません。たとえば、家族の都合や留学等で海外に滞在している医師で、「臨床のスキルを落としたくない」「海外でも医師として働き続けたい」といった理由で、アメリカのボストンやその他の地域からオンライン診療を行ってくださる医師もいます。
「日中は病院に通えない」というニーズをもつ患者さんもいらっしゃいます。そういった方々に登録していただければ、24時間対応が可能となるので、大歓迎です。
開業医と勤務医の収入格差を解消したい
――今後の展望をお聞かせください。</span >
鈴木先生:オンライン診療の可能性を広げていきたいと考えています。たとえば、20秒ほどの動画を撮ることで、非接触でもパソコンやスマホを通して血圧、心拍数、酸素飽和度、呼吸数などが測れるような技術を海外企業と提携し、すでに開発を始めています。
また、引退した医師や、産休・育休中の医師にも登録していただければ、これまで扱っていなかったAGA、ED、ピルの処方など、診療の幅も増やしていけるでしょう。
これは私のクリニックだけでなく、すべてのクリニックで行えることです。「勤務医の手が空いたときにオンライン診療を行う」というシステムが普及すれば、開業医と勤務医の収入格差の解決にもつながります。</u >
世界的に見て、日本の医療制度は整っており、医療の質も高いといえます。対照的に医療のDX化に関しては海外に一歩遅れていますが、そのような問題も解決できるはずです。
まとめ
鈴木先生:今後、オンライン診療は増えていくでしょう。これまでオンライン診療は初診・再診を含めて上限が定められていましたが、その上限もなくなり、2022年のオンライン診療ガイドラインでは、受診歴のない患者に対しても初診からオンライン診療が可能となりました。
自分だけが儲かればいいという考えでは、このサービスは思いつかなかったでしょう。一見、誰かにとってデメリットとなるような制度やシステムでも、見方を変えればビジネスのチャンスになると私は考えています。
「イシャチョク®」について
「イシャチョク®」は、豊富な医療コンテンツをお届けするメディカルプラットフォームです。病院(クリニック)情報の検索機能や、オンライン診療システムの提供、医師インタビュー記事の掲載などを行っています。会員登録をしていただくことで、クリニック経営、医師ブランディングに役立つ豊富なコンテンツをご利用いただけます。
・クリニック情報を発信したい
・オンライン診療システムを導入したい
・自分が取り組んでいる医療を世の中に広めたい
など、豊富な医療コンテンツで病院やクリニックをサポートします。
鈴木幹啓先生プロフィール
株式会社オンラインドクター.com代表取締役社長CEO、日本小児科学会認定小児科専門医。
2001年自治医科大学卒業後、三重大学小児科入局。国立病院機構三重中央医療センターや国立病院機構三重病院、山田赤十字病院にて僻地での小児科診療や小児救急に携わったのち、2010年に和歌山県新宮市で「すずきこどもクリニック」を開業。人口およそ3万人の市で年間4万8000人もの患者が来院する「日本一忙しい小児科医」として一躍有名に。2020年、株式会社オンラインドクター.comを設立。医療機関・薬局・保険と患者をオンラインでつなぐプラットフォームを運営、BtoCウェルネスメディアを同時展開。