医師のキャリアは、ここ数年で激変したように思います。
専門医制度が新しくなった事はもちろん、女性医師の増加や、都市部への医師集中、自由診療への門戸が広く開かれ、そんな時に新型コロナウィルスがやってきました。
日本の人口減少に伴う患者数の減少予測も、そう遠くない未来にやってきて、そうなると日本国内における医師の人材需要も低減していく。そんな予測もあります。
さらに言えば、日本の財政から累進課税の強化を進め、高所得者である医師は事実的な増税を受け入れざるを得ません。
まさに日本の医師にとって、激動の時代がやってきています。
このような状況下で、若手の医師や医学生が、先人達が進んできたキャリアパスを自分も同じように歩む事に、疑問を呈する事はごく自然です。
そこで「今僕が医学生・若手医師なら、どのようなキャリアを歩むのか」を、考えてみました。
今の医学生は、選択肢が少ない
まず大前提として、今の医学生に与えられているキャリアの選択肢は、狭いです。具体的には
1.海外で医師として活動する
2.日本で医師として、開業する
3.日本で医師として、別の方法を何か探す
という3つの選択肢しか、実際はありません。
勤務医を続ける、というありきたりな選択肢については、今後は需給が崩れるのと、累進課税の強化も合間って、経済的には確実にジリ貧になっていくと思うため、ナシとしました。
海外で医師として活動するならば、学生時代から活動する
1つめの「海外で医師として活動する」という選択肢を取るならば、学生時代にある程度のところまで進めておく必要があると思います。
というより、医学生時代に無理なら、多分無理です。
よく海外というと、医師として専門医を取得してから留学、みたいなパターンが昔は王道でした。
しかしながら、それではあまりに時間がかかりすぎるのと、その頃には日本は国際社会でかなりプレゼンスが落ちている(今も十分落ちていますが)と思われるので、実現可能性が昔と比べると段違いで難しいと思います。経済的にも、海外の留学生活を支える経済基盤をそれまでに作っておくのは、困難です。
学生時代は時間もあり、かつ各大学の教授と近い場所にいるわけです。それなりの大学の教授であれば、海外とのパイプはお持ちでいらっしゃると思いますから、海外を目指すなら学生時代からある程度プログラムを進めておくのが、圧倒的に効率的です。
逆に、学生時代のアクションが足りないのであれば、個人的には海外はもうその場で諦めてキャリアをピボットさせる、くらいの気持ちで良いと思います。
若手医師の開業、30代までに
日本で医師として活動する上で「開業」という2文字は、常に頭の中にあると思います。昨今は、20代で開業する先生も増えてきて、開業に対するイメージがガラッと変わった気がします。
昔は専門医を取得、キャリアの限界がある程度見えた上で、まあ開業するか、くらいが選択肢でした。
しかし今は、専門医の有無も問わず、自由診療と組み合わせ、Webマーケティング技術などと組み合わせて集客する、若い開業医の先生が増えてきています。
おそらくこれは大きなトレンドで、しばらく流れは止まらないでしょう。
開業しながら専門プログラムを進めたり、何人かで共同開業したり、かなり小さい面積でミニマム開業をしたりと、開業という行動が若手医師の中ではかなりフランクな手段になっていると、最近は感じております。
そう思うと、専門医を取得してからのんびりと、なんてやっていると、おそらく新興勢力に勝てません。開業医も競争にさらされる時代が来ますから、早めに開業してノウハウを吸収しながら成長していく、というキャリアパスが有利になると思います。
そうなると、やはり30代、可能なら前半で開業するキャリアパスが、良いのではないでしょうか。
新しい医師のキャリアは「専門プログラム×バイト×α」で作る
もう1つの選択肢としては、専門プログラムで専門医は取得を目指しつつ、休日は寝当直のバイトなどを入れまくって、寝当直の時間中に+αを見つけて実行する事です。具体的には、やはりパソコンでできる仕事でしょう。
そうしてノウハウや知識、お金、取引先を蓄積していって、自分のビジネスとして個人事業を開始。経費をある程度盛り込みながら、ある程度のタイミングで法人化。
それを専門プログラム取得まで、つまり30歳前後くらいまでに完成させて、専門医取得後は「専門医+法人」で、自由に舵取りをしながら歩んでいく。これも新しいキャリアパスとしてはアリだと思います。
そこから開業して、個人事業で開業医をやりつつ、たまにフリーでバイトをして給与所得も得つつ、法人の代表もして、使い分けていく、みたいなのも良いですね。
動くなら早く動け、そうでなければ動くな
昨今、医師のキャリアパスは前倒しが進んでいると思います。
それくらい変化が大きく、その変化に対応できるのが若者であるので、若手が大きく動くという結果が残っている、という事でしょう。
一番ダメなのは、中途半端な事だと思います。
海外を30代から目指すとか、40代から開業するとか、そういった昔の時間感覚でいると、確実に時代の波に飲まれるでしょう。
動くなら早く。チャンスを逃したなら飛び込まない。
それくらい、不退転の覚悟を持って、努力を重ねて準備をし、不可逆的なキャリアの選択に勇気を持って飛び込む。今の医学生、これからの若手医師に求められている事ではないでしょうか。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。