僕の感覚的な話ですが、うまくいっている自由診療領域の院長は、営業マンとして優秀な方が多いと感じています。
人柄としては、カラッとしていて快活。見た目としては、笑顔が眩しい、髪の毛は短くカットされていて、適度に運動しているであろう、鍛えられた肉体をお持ちの先生。そんな感じのイメージです。
なぜ、うまくいっているクリニックの院長は、営業マンとして優秀なのか?考えてみました。
やっぱり「先生がそう言うのなら」は、ある
やはり患者さんからすれば、医師つまり院長の発言は、それだけで信頼されています。信頼度が高い情報源だと、少なくとも思っている患者さんは多いです。
同じような内容を、受付や看護師が言うのと、医師が言うのとでは、やはり納得感が違います。看護師が言ってダメでも、医師が言うと「まあ、先生がそうおっしゃるのなら」と思って納得してくれる患者さんは、多いでしょう。
ここで難しいのは、信頼関係の構築です。
逆に言えば、医師というだけである程度信頼を寄せてくれている患者さんに対して、その信頼を裏切るような行為は、絶対にダメです。ご法度です。
寄せられる信頼の期待値が高いからと言って、それを悪用して、小手先の営業テクニックだけでやっているようでは、長くは持ちません。
重要なのは、信頼関係の構築と営業力をハイブリッドで持ち合わせるという事です。
信頼関係だけあって、営業力が無い場合、おそらく患者さんは離れて行きませんが、1人あたりの単価が低いままになってしまうでしょう。
信頼関係がなく、営業力だけあった場合、最初は良いかもしれませんが、次第に患者さんが離れていき、ネットで「半ば無理矢理に営業された」などという悪評が蓄積、新規の集客さえも難しくなってしまうという状況に陥ってしまうでしょう。
信頼関係があって、営業力がある場合、患者さんは離れていかず、1人あたりの単価も高く設定でき、クリニック全体として繁栄するでしょう。
ではまず、どのようにして営業に使える信頼関係を構築していくのでしょうか?
医師の営業力、信頼関係の構築
患者さんは、何かしらの問題を抱えています。
その問題を解決してもらうために、医師の元にやってきているわけです。
ただ、当然できる事とできない事、予想される結果のデータなど、患者さんの全ての要望に応える事は、当然できません。
できない事も「できます」と言って関係を構築し始めても、後半で必ずボロが出ます。
できない事はできない、データ的に確率はこう、そういった客観的な事実を交えて、わかりやすく説明する。これは医師の振る舞いとしては基本です。これだけでは患者さんと特別な信頼関係を築けるレベル、つまり他の医師との差別化につながるような内容では、当然ありません。
では、どうやって追加で信頼関係を得るのか?
それは「話をきっちりと聞いてあげて、気持ちを吐き出してもらう」事です。
抱えている問題は一体何なのか、いつからあって、過去にどういう思いをして過ごしてきたのか。今の生活ではその問題によって、どういった困った事があって、それについてどう思うのか、全て話してもらいます。
僕が思うに「医師に話をしっかり聞いてもらった」という事の、患者満足度は、かなり高いと思っています。
それくらい、今の医療現場では医師が忙しいのでしょう。なかなか1人の患者さんに使える時間は、限られてしまっています。
そんな環境に慣れてしまっているからか、医師は「話をずーっと聞いてあげる」という姿勢が、足りない人が多いと思います。
医療はサービス業です。サービスを提供する側として、話をとにかく聞く。これだけでサービスに対する信頼度は、グッと高まります。
モテる男性は、女性の話をしっかりと聞いてあげますよね。それと同じで、患者さんからモテる医師も、患者さんの話をしっかりと聞いてあげます。
途中で遮ったり、否定したり、意見を加えたりは一切しない。
「それは大変でしたね。」
といった、普通の同情を加える事は、最も簡単で誰にでもでき、かつ効果が望めるトーク術です。
他には例えば、患者さんが
「家族の中で私だけが一重で、本当にそれがコンプレックスで、家族写真とか撮りたくなかったんですよ、見比べられてしまうから。」
といった発言に対して
「ご家族の中で、自分だけ一重だった事がコンプレックスだったのですね」
という、単なる繰り返しの確認。
これだけで十分です。気の利いた一言なんて、不要です。
話をしたい患者さんに、気持ちよく話してもらう。
そのためには、こちら側も適度に合いの手を打って「あなたの話を聞いていますよ」という事を、話し手に対して定期的に伝える。
これだけで十分です。
この信頼関係構築テクニックも、ある意味では「営業力」と言えます。
いかがでしたでしょうか?医師に必要な営業力、前半はこれにて終了です。
小手先の営業テクニックに関しては、後半に続きますので、ぜひご覧下さい。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。