高所得者を中心とした増税や働き方改革などめまぐるしく変化する現代において、収入について考える機会が増えた勤務医の方も多いのではないでしょうか。とはいえ、忙しい毎日の中で、そのために割ける時間も限られていることだと思います。今回は、勤務医が今からできる資産形成と税金対策から不動産会社の見極め方まで、共にドクターを専門とする、税理士法人代表と不動産会社代表に語り合っていただきました。
消費税が上がるタイミングで、所得税も上がっている
――10月には消費税が10%になり、改めて税金対策を意識される方も多いと思います。セミナーなどでお会いする医師の方の変化も感じられますか?
秋葉 医師の方は知識欲の高い方が多いと思います。ただ、忙しく働きながら医療についての勉強も日々継続されていて、自分のことを考えられるようになるのは40才くらいからとおっしゃられる医師の方が多い印象です。当社のセミナーの参加医師の平均でも40才前後の方が多くて、「税金対策は気になっていたけど、忙しくて詳しく調べる余裕がなかった」とおっしゃられるが多いですね。
笠浪 ただ、増税は収入に大きく響くんですよ。収入に関係なく課せられる消費税だけでは高所得層を優遇していると言われてしまうので、政府は消費税を上げるタイミングで所得税も上げるんです。特に中所得層からの手取りが非常に減っているんですね。なので、どうすれば税金を少なくできるのかという意識は、ここ数年は高いですよね。
秋葉 知らず知らずの内に手取りが減っている現状ですから、確定申告の時期に改めて税金計算してびっくりするでしょうね。年収が高ければ高いほど驚くと思います。
――笠浪先生はドクター専門の税理士ということですが、お客様はどのような方が多いのでしょうか。
笠浪 どちらかというと、開業されている方のサポートがメインになります。お医者様も2種類に分かれまして、ひとつは大学病院やクリニックなどで勤務してらっしゃる勤務医の方、もうひとつは開業して事業としてやってらっしゃる開業医の方ですね。どちらなのかによって税金対策は全然違いまして、勤務医の方ですと税理士をつけることもなく、ご自身で国税庁のページを見ながら確定申告を作ってる方がほとんどです。中には不動産投資などを始められて、税理士に依頼されるケースはあります。
――勤務医の方でも税金対策のためにできることはありますか?
笠浪 勤務医の方はサラリーマンの方と同じ給与所得者なので、なかなか大きな対策というのはないのが実情です。その中でも誰でもリスクなくできるのは、控除関係ですね。寄付金やふるさと納税は取り組みやすい対策になります。ふるさと納税は、高所得者の方ほどメリットがあります。リスクをとって、ということだと不動産投資をされたり、何か事業を始めるという方法もあります。とはいえ、例えば事業でお店を始めようと思っても、仕入れをしたり人を雇って管理をする時間があるかというと難しいでしょうね。
秋葉 結局、給与所得者であるかぎり一般の職業でも医師でも同じで、できることが限られているというのが現状ですよね。
笠浪 そうですね。手取りを増やそうと思ったら、投資をして収入を増やすか、自分から引かれる税金を減らすかしかない。そこでドクターもいろいろ考えてFXや仮想通貨、株などの投資を始めようとしますが、経験がない方が急に投資をしてもすぐにうまくいくわけもなく、だいたい手持ちのお金を減らされるケースのほうが多いんです。そうすると今度は税金を減らそうという方向に動きますが、税法上、例えば株で損しても給与と相殺ができないんですね。これはFXも同じで「雑所得」ということで相殺はできません。今、これが認められているのは不動産と事業に限定されているんです。
秋葉 だから正直、僕は不動産を除いた税金対策ってほぼないと思っていて。ただでさえ忙しい勤務医の方がいきなり事業を始めるのもなかなか難しいでしょうし。何か行動に出るとしたら、比較的入りやすく、リスクリターンのバランスがいいという意味でも不動産が適しているんじゃないかなと思います。もちろん僕もやっています。
笠浪 たしかに、不動産はいちばん手をつけやすい税金対策になるのかなと思います。先ほども話したように、税制上の制度が非常に充実していますから。というのも、FXや仮想通貨には、まだ税法が追いついていないんです。そういうものを想定してないから、対応できていない。でも、家を貸すという行為は昔から行われていることなので、税法的にもいろいろと特例があるんです。
ドクターはカモ!? 不動産会社の見極め方
――ただ、不動産投資に関していいイメージを持っていない方も多いように思います。
笠浪 なぜ不動産を躊躇するのかというと、やはりすべてが優良な不動産会社ではないからですよね。すべての不動産会社がドクターに対して優しいわけではなくて、カモにしている不動産会社もあるにはあります。私も、悪質なところをさんざん見ています。
秋葉 電話営業の先入観というのもありますよね。電話営業が広がっているマーケットなので、不動産投資=迷惑電話みたいなイメージができてしまっていて、”不動産投資”と聞くと拒否反応がでる先生もいらっしゃいます。でもそれはあくまでも営業手法の問題であって、”不動産投資”が悪いわけではないんですね。
笠浪 税理士の立場上、「どこの不動産業者がいいですか」と相談を受けることもあります。その時に、やはりお客さんの評判がよくて実績を出しているかどうかが見極めるポイントになるとお答えしています。評判が悪いところはネットに書かれたりしているので分かりますよ。
秋葉 あとは、医療系の媒体にどれだけ露出しているかでも判断できるんじゃないでしょうか。各媒体、掲載審査をしていますから。
――実際、不動産投資をされる医師の方は増えているんですか?
笠浪 そうですね。確定申告を依頼される方の中で、不動産投資をされている方の割合は増えてきているという実態があります。増税の流れで税金対策を意識されて、銀行もまだ金利が低いので借りやすいというのが理由にあると思います。合わせて税制上の不動産所得というのは優遇されている部分もありますので、他にはないような優遇政策の恩恵を受けられるのかなと思います。
秋葉 前述した通り、ドクターの方は本当にお忙しいですからね。”株のように日々値動きをするものは、気になって本業に集中できないよ”とおっしゃられる医師の方もいらっしゃいました。その点、1日で価格が半分になることがなく価格変動が起きづらいということでも、不動産は有効なんじゃないかなと思います。
笠浪 不動産投資は、物件さえ間違えずにいい場所を選べば、借りたい方が常にいらっしゃって賃料も下がらないことが多い。そういう点から見ると、忙しい中で手取りを増やしたいという方にとってはいちばん手を出しやすいでしょうね。事例もかなりありますし、情報も入りやすい分野なので適してるのかなと思います。
まずは確定申告の仕組みを理解することが大事
笠浪 これは収入やご家族、不動産の物件などによるので人それぞれなんです。
秋葉 当社セミナーに参加していただければ、比較的ご年収やご年齢、ご家族状況が近い方の事例をお見せすることはできますよ。
笠浪 そういう意味でも、ドクターマーケットをきちんとやっているところは情報豊富で安心だと思いますね。
――セミナーでは、どのようなお話をされるんでしょうか。
秋葉 いきなり不動産の話というよりは、給与所得の仕組みとか、ほとんどの方が確定申告されているので、確定申告の仕組みなどをご説明しています。税計算の仕組みを知っていただくと、おのずとやれることは限られている。という本質をしっかりと理解していただけるんです。不動産投資は“投資”ですから当然リスクを伴います。メリットばかりではありません。デメリットとデメリットに対する対応策のご説明もしっかりとさせていただき、良い時と悪い時の両方をイメージしていただきます。いきなり物件を薦めるようなことはまずないですね。
笠浪 税制上の仕組みを知っていただくのはとても勉強になると思います。確定申告を見よう見まねでやってらっしゃるドクターも多いですから。それだけなら税理士のほうがプロですが、不動産のメリット・デメリットも知るにはドクターの事例を多く持っている不動産のプロに聞くほうが分かりやすいと思います。
秋葉 当社のセミナーに参加いただくことで、自分の将来を改めて考えるきっかけにしていただければと考えています。もちろん当社は不動産会社なので不動産売買をしていただきたいんですけど(笑)、将来に対する備えは不動産がすべてではないとも思っています。個人個人にあった方法を見つけて何か自分からアクションを起こすきっかけにしていただければ嬉しいですね。