人生100年時代といわれる今、すでに資産形成を行っている方や資産形成を考えている方は多いと思います。資産形成といえば「投資」が最初に頭に浮かぶと思いますが、実は投資のような「プラスの運用」だけではなく、「マイナス運用」と呼ばれる節税なども非常に重要です。今回は資産形成コンサルタントの筆者が、医師の皆様に知っていただきたい資産形成のポイントを解説します。
富裕層とアッパーミドル層の違い
勤務医の多くはアッパーミドル層
まずは富裕層の定義から確認していきましょう。医師ではない方からは、医師は富裕層と思われがちですが、金融業界では年間所得が3,000~4,000万円ぐらいであれば富裕層とは呼びません。富裕層かどうかは純金融資産保有額で判断します。一般的には収入だけでなく金融資産を5,000万円以上保有している方を富裕層と定義し、金融資産の保有額が3,000万円~5,000万円である方はアッパーミドル層と呼ばれます。
キャッシュフローの改善が富裕層への第一歩
富裕層と呼ばれるまで資産を増やすと、銀行が資産形成のために定期的に行うべきことの提案をしてくれますし、時にはプライベートバンカーがつくこともあります。そのため、富裕層の方たちは十分に資産形成対策ができていますが、アッパーミドル層はそうした対策ができていない方が多いのが現状です。アッパーミドル層のなかでも特に勤務医やエリートサラリーマンのような方々は、収入は高いものの税率が高いため、可処分所得が少なくなりがちです。そのため、キャッシュフローそのものを改善することを意識しなければ、富裕層にレベルアップすることができないのが現状といえます。
富裕層は必ずやっている!
着実な資産形成のための3つのポイント
それでは本題です。「今はアッパーミドル層だけど、いずれは富裕層を目指したい」と考えている方が行うべき資産形成の方法について解説していきます。
①プラスの運用だけでなく「マイナスの運用」を意識する
「富裕層を目指してどんどん資産を蓄えたい」と考えている方の多くは、保有資産の利回りを上げていく「プラスの運用」ばかりを重視しがちです。「プラスの運用」とは、保有している不動産や投資信託の利回りを増やすものを指します。世の中にはいろいろな金融商品がありますが、利回り10%の商品は探そうと思ってもかなり希少です。希少どころか、「利回り10%を超える!」と謳っている商品の多くは詐欺だったり、かなりハイリスクなものだったりするものです。金融のプロから言わせれば、提示する利回りというのはいくらでも操作できてしまいます。そのため、利回りのような「プラス」の側面だけに目を向けるのではなく、リスクにも注意をする必要があります。
富裕層の資産家たちの多くは「マイナス運用」を重視しています。「マイナス運用」で代表的なものは税金対策です。所得税の最大税率が45%ですから、住民税も合わせて税率が55%を超えている医師の方も多いと思います。わかりやすく税率50%と置き換えて説明しましょう。半分近くも持っていかれている税率を20%まで下げることができたら、単純に50%-20%=30%の利回りと考えることができます。つまり税率を下げることは、30%の利回りで稼いでいるのと同じなのです。税金は国に納めるものですから、「国が保証する30%の利回りの運用商品」と言ってもいいかもしれません。このように、「プラス運用」だけではなく「マイナス運用」にも目を向けることでキャッシュフローをよくすることができ、効率的に資産形成ができます。
②「規模の運用」を活用する
2つめは、富裕層の多くが行っている「規模の運用」です。具体的には、「100万円を運用して得られる1%のリターンと、100億円を運用して得られる1%のリターンはどちらが効率的か」とイメージしてもらえば、わかりやすいかもしれません。当然、100億円を運用した方が同じ利率でもリターンは大きく、資産家ほど「規模の運用」によってより資産が増えやすいということはイメージできると思います。
このように、キャッシュが多ければ多いほど資産運用の効率は上がりますが、医師の皆さんはキャッシュに加えて「信用」を使って融資を受けることが可能です。医師であるという社会的信用を使わないのはもったいない! 信用を担保に銀行などから融資を受け、そのお金で「規模の運用」をすることも考えてみてはいかがでしょうか。
③リスクコントロールを徹底する
前述のように、金融商品の利率はいわば見せかけのものであり、いくらでも調整して良く見せることが可能です。たとえいっときは良いリターンが得られても、のちに債務不履行(デフォルト)を起こしたり、倒産してしまったり、最悪のケースでは詐欺だった……ということもありえます。せっかく資産形成をしようと多額のお金を預けたのに、そのお金がすべてマイナスになってしまうことも珍しい話ではないのです。
営業マンは投資商品を売るためにいい話しかしてこないことが多いですから、投資商品を検討する際には必ずリスクについても十分に聞き、ときには他の手段を使って“裏を取る”ということも行いましょう。自分一人で判断することは難しいので、同じように投資をしている人について聞いてみるのも良いかもしれません。さらに過去の実績等をみて、本当に嘘偽りがないか、配当は継続して出ているのか、入出金がきちんとなされているかなどを確認することも大切です。素人が財務内容を検証することは難しいこともありますので、金融のプロに問題ないか確認したり、どのようなリスクが考えられるかを聞いたりできればさらに安心です。
ひとつ裏ワザ的なものを紹介しましょう。判断に迷う金融商品があった際は、その投資を銀行の融資にかけて判断してもらう方法もあります。銀行では融資を行う際にその投資や事業に対して厳しい審査を行います。銀行が審査をした上で投資に対する融資をしてくれたのであれば安心できるという、いわば「銀行を賢く利用する」ワザです。
まとめ
ここまでお伝えしたように、医師が押さえるべき資産形成のポイントは3つです。1つ目は「プラス運用」だけでなく「マイナス運用」にも注目すること。2つ目は「規模の運用」を行うこと。そして3つ目はリスクコントロールをしっかり行うことです。この3つができていれば効率的な資産形成ができるはずです。