高所得者の愛車といえばメルセデス・ベンツやBMW、レクサスなどの高級ブランド車を想起する人も多いのではないでしょうか。しかし実際は収入が平均より多くても国内メーカー車を選んでいる人も相当数います。本記事では「高所得者のうちどれくらいの割合が国内メーカー車を選んでいるのか」「隠れお金持ちが国内メーカー車を選ぶ理由は何か」について考察します。
医師の愛車ランキング1位はトヨタ、3位ベンツの4倍の割合
勤務医を含む医師が乗っているのが高級ブランド車とは限りません。2017年3月に日経メディカルOnline医師会員3,930人に行ったアンケートによると、「いま乗っている車のメーカー」の質問に対する回答で上位5社のうち4社を国内メーカーが占めています。
医師が現在乗っている車のメーカーと割合は?
メーカー | 割合 |
---|---|
1位:トヨタ | 28.2% |
2位:ホンダ | 7.9% |
3位:メルセデス・ベンツ | 7.3% |
4位:日産 | 7.1% |
5位:スバル | 5.6% |
6位:BMW | 5.4% |
7位:レクサス | 5.1% |
8位:マツダ | 4.7% |
9位:フォルクスワーゲン | 3.0% |
10位:アウディ | 2.7% |
出所:日経メディカル 医師3,930人に聞く 愛車のどこがお気に入り?
上位5位以内に入った高級ブランドは、メルセデス・ベンツのみです。しかし1位のトヨタを選択した割合の28.2%に対して、メルセデス・ベンツを選択した割合はその4分の1程度の7.3%しかありません。なおメルセデス・ベンツと並んで高級ブランド車として人気のあるBMWは、6位(5.4%)にとどまっています。
上記のデータは2017年のものですが、その後トヨタがブランド価値や販売台数を落としていないことを考慮すると、現在でも「医師の愛車ランキング1位はトヨタ」というポジションは変わらないことが予測できるでしょう。
年収1,000万円以上で高級ブランド車に乗っているのは
高所得でも高級ブランド車を選ばない人が相当数いることは、医師だけの特徴ではありません。2018年12月にエム・アール・アイリサーチアソシエイツ株式会社が公表した一般の人約3万人(うち、車の所有者1万9,925人)を対象にした調査によれば、年収1,000万円以上で高級ブランド車(メルセデス・ベンツ、BMW、レクサス、アウディ)に乗っているのは約4割でした。
また同調査からは、トヨタのユーザーの約3割を年収800万円以上が占めていることも確認できます。まず年収関係なく保有している車のブランド1位はトヨタです。車を所有している1万9,925人のうち29.8%がトヨタの名を挙げており年収別で見てみると年収800万円以上が30.9%を占めています。
トヨタ車ユーザーの年収はどれくらい?
年収 | 割合 |
---|---|
200万円未満 | 8.5% |
200万~400万円未満 | 15.3% |
400万~600万円未満 | 21.6% |
600万~800万円未満 | 18.3% |
800万~1,000万円未満 | 12.2% |
1,000万円超 | 18.7% |
出所:エム・アール・アイリサーチアソシエイツ「3万人データから解く新たな消費者像(2018年)」
トヨタ車の中でも医師に選ばれているのはプリウス?
上記2つのデータから「高所得者でもトヨタをメインに国内メーカーの車を選んでいる人」がかなりの数いることが分かります。さらにトヨタユーザーの高所得者が選んでいる車種は、プリウスが多いと推測できるでしょう。例えば前出の医師の愛車調査では、トヨタ車オーナーに限ると「今乗っている車の最も誇りたいポイント」として「燃費の良さ」を挙げている人が目立ちます。
これは「燃費がいいハイブリッド車を好んで乗っている人が多い」と推測できるでしょう。念のため、他のデータで確認しても医師が好んでいるのはプリウスの可能性が高いです。まずトヨタ車の主な車種には、以下のようなものがあります。(小型車除く)
■ ミニバン:アルファード、ヴェルファイア、グランエースなど
■ セダン:プリウス、クラウンなど
■ SUV:RAV4、ランドクルーザーなど
このうちすべての国内自動車メーカーの車種を対象にした販売台数で2017~2019年トップ10に入っている車種はプリウスのみです。
2017年:1位(16万912台)
2018年:3位(11万5,462台)
2019年:1位(12万5,587台)
出所:日本自動車販売協会連合会「乗用車ブランド通称名別順位」
参考までにかつて高級国産車の代名詞だったクラウンの2019年の順位は26位(3万6,125台)です。クラウンの新車販売台数は、ピークとなる1990年の20万台超と比べると5分の1以下まで減少しています。もちろんクラウンを愛用している高所得者もいるでしょうが、その数は売れ筋のプリウスに比べると限定的といえるのではないでしょうか。
隠れお金持ちがプリウスを選ぶ5つの理由は?
ここまでの内容で「高所得者の相当数が国内メーカーの車を選んでいる」「トヨタが人気でプリウスが選ばれている可能性が高い」といったことを確認できました。では、なぜ彼らは高所得なのにもかかわらず大衆車を選択するのでしょうか。隠れお金持ちがプリウスを選ぶのには、主に以下の5つの理由が考えられます。
理由1.お金持ちほど固定費嫌い
「お金持ちほど定期的にかかる固定費を気にする」という意見も聞かれます。こういった堅実タイプのお金持ちにとって燃費のよいプリウスは理想の車といえるでしょう。ちなみに「高収入になるほど固定費に敏感な傾向があること」を示すデータもあります。2017年に通信系企業インターファームが実施した調査では「年収が上がるほど格安スマホの利用率が上がる」という結果も出ているのです。
実際にプリウスと高級ブランド車では、どれくらい燃費が違うのでしょうか。例えば1リットルあたりの燃費で比べると以下のようになります。
・ プリウスPHV:30.2キロメートル(WLTCモード)
・ ベンツのSクラス(S 400 d 4MATIC)14.3キロメートル(JC08モード)
※2021年4月2日時点の最新車種の燃費
つまり2倍の燃費の差があるということです。さらにガソリンのタイプで比べてもプリウスはレギュラーガソリン、高級ブランド車の大半は割高なハイオクという違いもあります。「燃費×ガソリン価格」でさらに固定費の差が広がってしまうでしょう。
理由2.周囲の嫉妬を避けるため
高級ブランド車は、高収入やステータスの象徴です。しかしその裏返しとしてご近所など周囲から嫉妬を買いかねません。住んでいるエリアが高級住宅街であればご近所の目を気にする必要はありませんが、一般の住宅地であれば高級車は目立ちます。この嫉妬を避けるため、高級ブランド車に乗る余裕はあるけれどあえてプリウスなどの大衆車を選択している方もいるでしょう。
理由3. 高級ブランド車と使い分けている
高級ブランド車と大衆車の両方を所持して使い分けている高所得者もいるでしょう。例えば妻や子どもは、高級ブランド車に乗っているけれど本人はプリウスに乗っているパターンです。他にも通勤時に国内メーカーの大衆車を利用し、休日のドライブでは高級ブランド車を利用するライフスタイルも考えられます。
理由4.高級車に飽きた
富裕層の中には「ぜいたくなモノやコトに飽きてしまった」という人もいます。車でいえばかつては高級外車やスポーツカーを乗り回してきたけれど飽きてしまい、「最終的には国内メーカーの車に落ち着いた」というようなパターンです。
理由5.高所得者ほどお金がかかる
高所得者ほど出費が多い傾向のため、車までお金が回らないケースもあるでしょう。出費の原因は、子どもの教育費やマイホームローン、ワンランク上の生活などです。
高所得者に選ばれる最新の国内メーカー車はアルファード?
最後に補足ですが直近のデータを見ると高所得者に選ばれる国内メーカーの車からプリウスが陥落し、アルファードとハリアーが支持されている可能性もあります。2019年通期と2021年3月の国内ブランドの新車販売台数ランキングを比較すると大きく順位が変動しています。
車種 | 2019年順位 | 2020年順位 | 2021年順位 |
---|---|---|---|
プリウス | 1位 | 12位 | 13位 |
アルファード | 13位 | 5位 | 3位 |
ハリアー | 25位 | 13位 | 7位 |
出所:日本自動車販売協会連合会「乗用車ブランド通称名別順位」
※2019年、2020年は通期、2021年は3月時点の順位
特にアルファードは、国内メーカー車の中では高価格帯(メーカー希望小売価格・約352万~775万円)で高級感のある内装と広い車内スペースでファミリー層の高所得者・富裕層に支持を得ている印象です。今後、EV(電気自動車)の普及に伴いさらに高所得者に選ばれる国内メーカー車に順位変動が起こる可能性があります。