いきなりですが、このようなニュースを最近見ました。
円の実力50年ぶり低さ 実質実効値、円安進み購買力低下
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB208IY0Q2A120C2000000
円の実効為替レートが、なんと1972年と同じ水準にまで低下したというニュースでした。
1972年といえば、2022年である現在から丁度50年前に当たるわけです。実効為替レートではあるものの、50年前の水準にまで戻ってしまったのは、なんだか凄そうですよね。
簡単に言えばこれは「対外購買力」を示しており、もっと簡単に言えば「海外製品を買うときの日本円の価値」みたいなものです。
実効為替レートが低い、という事は、海外製品を買う時の日本円の価値が低い、という事を表しており、最終的にどうなるかというと、消費者目線では概ね
・海外からの輸入品が高く感じる
・海外旅行など、海外に出かけた際のサービスや物価が高く感じる
の2つがある、という事になります。
確かに、最近は輸入品を中心として日本でも「値上げ」が続いておりますよね。
ガソリンとかかなり高いですし、海外製のあらゆる消費財も値上がりしております。
コロナのせいで海外旅行は中々行けませんが、おそらくこの水準で海外旅行に行こうとすると、それもかなり割高に感じるはずです。言ってしまえば、海外のホテルや観光地からして「日本人」は、もはや1972年の頃のお金しか持っていない、というわけです。
いわゆる「日本人はお金を持っている」という、現地の人の幻想が壊れてしまっている、という事になります。
一体、これは何が起こっているのでしょうか?
また、勤務医の生活にはどう影響があるのでしょうか?
今、日本で円安と海外インフレが起こっている
今現在、日本で輸入品を中心として物価が上昇しているのは、理由が2つ主にあります。
1つは、単純に為替の問題です。円安になっています。
円安になっている理由は簡単で、金利が低いからです。金利がほぼゼロの日本円を持っているよりも、利上げをして金利が上がったドルを持っていた方が、利息がつきますから、世界中の人はドルを欲しがります。
結果、日本円を売ってドルを買う人が増え、円安に流れます。
2つめは、海外でインフレが止まらないからです。
アメリカ、ヨーロッパともにインフレが起こっています。お金の価値が下がり、物の値段が上がる減少ですね。消費者物価指数が上がっており、インフレを鎮火させるため、それを受けてFRBとECBが金利を上昇させました。
これは、1つめと実はリンクしています。
因果関係の順番としては、2つめのインフレが先にあって、それによってFRBやECBが金利を上げる機運が高まって、市場がそれを鋭敏に察知して少し円安、ドルやユーロ高になりました。
そして実際、FRBが金利を上げた事でそれが現実になったので、さらにドル高ユーロ高が進行しています。
それにより円安がさらに進んだ側面もあるので、1つめの為替の方へと影響が流れていっているわけですね。
さて、これらは実は、勤務医にとっては宜しく無い事です。インフレも、円安もどちらともよろしく無いです。
一体なぜなのでしょうか?
勤務医が円安に弱い理由
勤務医は円安に弱い。
なぜならば、勤務医の給料は(将来にわたって)全部、日本円だからです。
日本で勤務医として働いている限り、基本的には給料を日本円でもらいます。ドルとかユーロでもらうというお医者さんも、ゼロではないのかもしれませんが、僕は聞いた事がありません。
例えばこれから、さらに円安が進行するとすれば、将来的にもらうはずのお給料である日本円の価値も、下がります。
仮に月100万円もらっていたとして、1ドル100円であれば、事実上は月1万ドルもらっている事と同じです。しかしながら、月100万円もらい続けるとして、1ドル200円になってしまったならば、ドルベースでは給料は半額、5000ドル分しかもらえていないのと同じです。
勤務医に限らず、円ベースで給料をもらう日本人のほとんどは、円安に弱いと言えます。
しかしながら、中でも特に勤務医は円安に弱いと言えます。
なぜか、医療単独で外貨を獲得するのが難しいからです。
例えば、勤務医の対局に位置しているのは、観光業です。観光業は、今や日本の外、外国人をターゲットにしている事が多く、彼らは観光業界に外貨を落としていきます。つまり、その国の通貨を日本円に両替して、日本円を落としていきます。これは事実上、その国の通貨を落としているのと同じになります。
一方で、日本の医療機関のメイン顧客はほとんどが日本人で、少ない外国人も、基本は日本でビジネスをしている、日本円しか持っていない人か、日本円で給料をもらっているサラリーマンなので、ほぼ日本人と同じです。
日本の医療機関は、外貨を獲得する事ができないわけです。
そういった意味では、観光業はまだ円安に強いと言えますが、日本の勤務医は円安になってしまうと、何もアクションを起こさなければ、損失を一方的に受け入れるしかありません。
いかがでしたでしょうか?
次は、勤務医がインフレに弱い理由とその対策について、お話します。
▼著者
大石龍之介
株式会社ブルーストレージ代表取締役。医師としてクリニックに勤務しながら、不動産投資家としても活動している。